桃源郷

桃源郷と聞いて思いつくのはなんだろう。
自分の理想の世界ってなんだろう。
好きなことだけをしている世界なのか。
食べ物に飽きない世界か。
自分が創造者である世界か。

 僕は、人間が生きることのできる桃源郷はまさに今の世の中であると考える。様々な種類の問題が山積し、正解も不正解も悪も正義もなく、個人の適当で根拠の無い主観が入り乱れ、対立、諦め、我儘の溢れた世界。

これが、桃源郷だと思う。

犯罪も戦争も自殺など、法律や倫理的に絶対悪のように取り扱われていることも含めて、ユートピアを構成する一員として存在価値があり、無くなってはならない重要なピースだ。

もしも、冒頭のような世界があるとしたら、人間はみな種としての死を選ぶだろう。
思考力の非常に高い人間の集団は存在しない。そんな人間は孤立化してしまう。
思い通りの世界とは完全に人それぞれが孤立化している、と同時に完全に統合している。

完全な孤立化は、実質的に完全な統合と言える。
完全な孤立は、刺激がゼロになることを意味して、波が一切立たない秩序と安寧と虚無が広がり、意識は統一されたかのように冷静で冷酷な世界になる。

生きるとは人から愛され愛することであり、心を通わすことではじめて起こりうる体験である。

愛されるということは嫌われる過程もまた必要であり、人は愚かでないといけない。

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