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パパチョコ・バレンタイン

物心つきはじめた幼少期の頃。
何かにつけて容赦なく叱る母親よりも、内緒でお菓子を買ってくれてトコトン遊びに付き合ってくれる父親の方が私は大好きだった。

保育園に通うようになってから「パパみたいにやさしい」という理由で好きになった男の子にチョコレートを買い父親の送迎で自宅まで手渡しに行ったのが人生初バレンタイン。
ちなみにその初恋男子、そこから十数年後に見事な美人さんに進化を遂げお姉様系のお店で働くようになったっていうサプライズつき。これは今回の話とは全く関係ないサイドストーリー。
今思えば、たぶん彼は全然パパとは似てなかったし私の観察力のなさは現在に至るまでまるで変わっていないかも。

で、お話を再び元に戻しますが。
何とバレンタイン送迎は小学校高学年まで続いた。
そして気が利かぬ娘の私は父親にチョコを買ってあげるなんてことは考えもせず、何なら会社で彼がもらってきた戦利品の義理チョコを競い合うようにして食べていた。
中学校からは私立の女子校に入りチョコを渡したい男子もいなくなり、だんだん父親と距離を置くようにもなり自然と幕を下ろした物語。

成人して社会人になり遅ればせながら父親にチョコを買うようになったものの、自ら買ってきたチョコ+彼が頂いてくる義理チョコをテレビを観ながら競い合うように食べる恒例行事は変わらず続いた(何なら学生の頃すらやっていた)
平等に半分ずつだからね!って言ってるのに油断してると半分以上持っていかれ、本気で怒っても悪びれず笑ってる父親が腹立たしかった。

その後ほどなくして、父親は肺がんで入院して最後の年は奮発して買ったゴディバのチョコを病院に持って行ったのに、笑顔を浮かべながらもひとつしか食べてくれなくて無性に悲しかったのが彼との最後のバレンタイン。
そんなこと、職場の最寄の駅ビルの中にあるゴディバのお店の前を通るとたまに思い出す。

今は実家の母親に毎年チョコを届けに行く。そしてテレビを観ながら一緒に食べる。でも競い合いはしない。何なら譲ってもくれる。
それが少し物足りない。

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