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自分にかけた紐を、ほどく

こんにちは。
音海奏乃です。

今回は、決めつけの話。
自分で、自分を苦しめていた、決めつけ。
絡めていた紐を、解いたお話です。
※雨さん・空さんという不思議な存在がいます

何度も問いかけること

「それ、アクセサリーじゃなくて、よくない?」

アクセサリー作家として、続けるかどうか。
分岐点に立つたびに、自分と見つめあって。
いつしか、その言葉を繰り返すようになります。

そのたびに、もっともらしい理由は見つかります。
それでも、やっぱり何度も、自分に聞いてしまう。

「それ、アクセサリーじゃなくても、いいよね?」

この、質問を、延々と……。
なぜ、こうなってしまうのか。
それは、テーマが見つかったから。

私には、伝えたいテーマがあります。
【自分を楽しむことが、人生を楽しむことにつながる】
ざっくり文字にすると、こんな感じ。

小説のほうが、伝えられるじゃないか。
アクセサリーじゃ、伝えにくいんじゃないか。
伝わるんだろうか。
ミスマッチなんだろうか。

そう思うようになってから、あの質問が繰り返されて。
その度に、見ないふりをしてきました。

背を向けて、目を伏せて、罪悪感を覚えて。
「そんなことの繰り返しで、いいはずがないだろう?」
聞こえた雨さんの声にさえ、耳をふさいで。
「…………」
いつしか、一人で、立ち尽くしていました。

彼らにも同じことを言えるのか

自分に絡みついた、紐。
そこから、逃れたい。
そこから、逃れられない。

何ができるのか。
何もできないのか。

「大丈夫、アンタなら、わかるよ」
聞こえなくなった雨さんの声。
代わりに届く、空さんの声。

「やっぱり……」

わからない。逃げたい。やめたい。
迷いを綴った紙は、ただむなしくて。
ペンを置こうとしたその時でした。
ふと、あることを思い出したのです。

「小説は、そう思わなくなったよね……」

私は、小説を書きます。
表現したいことがあるから、書いている。
ただ、それだけ。

小説は、言葉でできている。
よく考えたら、歌詞も言葉でできている。
じゃあ、歌で伝えればいいのでは……。

いや、伝えるための手段なら、絵もあるじゃないか。
彫刻だって、ダンスだっていい。
なのに、どうして小説なんだろう。

小説を書いて、描いた世界を表現する。
それが、嬉しいから。楽しいから。
だから、書いている。
心から、楽しめるのが、小説だから。

「あぁ、そうか」

例えば、シンガーの人。
「歌なんて歌いたくないのに」
そういう人は、見たことがありません。
「歌で表現するのが、一番楽しいんだ」
そういう人のほうが、多い気がします。

絵も、彫刻も、ダンスも。
「それで表現したい」
「それで表現するのが一番うれしい」
二つの思いが、重なったとき。
それが一番、心が喜んでいる。
だから、できる。
だから、続けられる。

例えばそんなシンガーに、あの言葉を伝えたとして。
「それって、歌じゃなくてもよくない?」
「まぁ、そうかもしれないけど、これが一番、楽しいから」
そう、返ってくるような気がしたのです。

「それって、小説じゃなくてもよくない?」
もし、そう聞かれたら。
「そうかもしれない、でもね」
「私には物語を書くことを、楽しむ心があるから」
そう、答えたい。
絵や歌を、否定したり、諦めたりしているわけじゃない。
その選択肢も、選べるんだから。
だけど、物語を書くことを、楽しいと思う心がある。
その心が求める喜びを、大切にしたい。

そうして、思ったのです。
ハンドメイド作家としても、そう答えたい、と。

紐をほどいた先で

「そうありたい」
求めていたことに気付いた、その時。
ふわ、と体が軽くなった感じがしました。

自分に絡みついた紐。
なかなかほどけなかった、紐。
それが、なくなった。
そう、感じたのです。

「……気づいたかい」
戻ってきた、落ち着いた声に、やっと、と返事。
「自分の心に、自分で紐をかけていたことを」
もう、これで迷わない、そう、思えました。

ここまで来るのに、時間がかかりました。
ここまで来るのに、心も痛めました。

だけど、それもまた、価値になる。
だから、それはまた、魅力になる。
だって、それがもう、経験だから。

「それ、アクセサリーじゃなくて、よくない?」

もう、こんな質問は、自分にしません。
「私にとっては、アクセサリーが、表現の手段だったんだよ」
そう、答えられるように、なったから。

悩んでいた自分への答え。
それが、同じように悩む人の、ヒントになる。
そんな日が、くるかもしれないから。

これからも、進んでいきます。

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カナ・ノワール堂
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