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大五郎、セラピードッグへの道【4】

【前回までのあらすじ】セラピードッグになるべくトレーニングを開始した大五郎(ヨークシャーテリア、雄、1歳)宿題に出たコマンドは難なくこなし、夫からの説教も大人しく受けるものの相変わらず、他の犬に興奮することを止めないので、あれやこれやと作を考える私なのであった。

申し込んだトレーニングは週に一回、60分(宿題付き)それが6週にわたる。3週目に私がコロナにかかってしまい、1クラス行けなかったが、送られてくる宿題こなしつつ、4回のトレーニングに通った。週が進むにつれ、他のお犬たちは目に見えてお利巧になっている。大五郎を除いて。めっちゃなんかすごいトリックとか披露しちゃってるお犬たちもいた。

流石に最初のレッスンの時のように衆人環視の中、教室のど真ん中でウンコをしでかすといったことは無かったが、基本、目隠しのカバーが準備され、レッスン開始前の10分前からここに待機する。

他の犬や飼い主さんたちに吠えないように、との策なのであるが、これがまったく全然、役立たない。アホ五郎さんは、飽きもせず、疲れもせず、この柵の中からうぉん、うぉんとヨークシャーテリアの子犬とは思えぬ野太い声で吠え続ける。目の前にステーキ(レベル5のスペシャルなおやつ)を出しても見向きもせずうぉん、うぉん。

こちら4週目の写真。

少しばかり落ち着いている時は、宿題として出されたコマンドや、クラスでやっているコマンドをきちんとできるのであるが、うろちょろして、隙あらば、この青いカバーの間から外界を覗き、また興奮してうぉん、うぉん。吠え方がでかいため、トレーナーの声すら遮る勢い。しかも、やめようとしない。何をどう考えても他所の犬と飼い主さんたちの邪魔をしていて最悪だった。

幼い頃、行かされていた音楽教室でろくろく練習もせず、設置されているエレクトーンのボタンを押しまくりやたらとクラス進行を阻害していた私であったので、この年になってようやく、母に毎週、赤っ恥をかかせていた事を思い出し、すまんな、かぁちゃんと今更ながらに思った。きっとあの時の母は、大五郎をなんとかしたいと無言のまま、だが内心、ワタワタという今の私の様な気持ちだったに違いない。

更に進んだトレーニングでは、障害物の置かれたところを歩いたりするものだったのだが「あ、大五郎はここ(目隠し柵内)で、お座り、マテのトレーニングをして」などと言われる始末。なんせ、この目隠し柵から出るとまた大騒ぎなのである。

それでもちゃんとやるならいいのだが。あふ~んと、のんきに大アクビをして、居眠りを始める始末。おそらく、トレーニングに使う用のレベル5のおやつ。ステーキや鶏肉をむしゃむしゃ食べるため、満腹になるからであろう。

吠えるのに飽きたら寝るアホ五郎

貴様の昼寝のためにトレーニング費用を出しているのではない!毎回、毎回、赤っ恥をかきながらやってるんやぞ!ちゃんとしろ!!と、私は毎週、毎週、プンスコしながら汗だくでこのトレーニングに通った。

最初のNoteで書いたが、セラピードッグになるためには3つの資格を取らねばならず、大五郎の学校は、4段階のクラスがある。☆の数は難易度を占める。

☆Apprentice Dawgs ー 基本クラス【今、ココ】
☆☆Master Dawgs - 基本クラス2
☆☆☆Dawg Manners -基本クラス3
☆☆☆☆Therapy Dawg Prepーセラピードッグ予習クラス。

まだ第一歩だというのにこの有様。しかも、セラピードッグ・クラスは、Advancedクラスであるので、クラスに入る試験(!!!)もある。遠い昔の受験生活を思い出し、眩暈を覚える私なのだが、

◆ Walk on a loose leash:綱を引っ張らずに歩くことができる
◆ Come when called:Comeのコマンドで飼い主のところに来る
◆ One-minute sit-stay (dog must remain in a sit the entire time):1分間、座っていられる(少しでも動いちゃだめ)
◆ One-minute down-stay (dog must remain in a down position the entire time) 1分間、フセのポーズで待っていられる(少しでも動いちゃだめ)
◆ Sit politely for petting なでなでされても、お行儀よく受け止める
◆ Your dog will also be walked on-leash by another friendly dog to check for any dog-to-dog reactivity:他の犬(綱付き)と並んで歩くことができる。

なんとこのクラスにいた他のお犬さまたちは、最終レッスン日、基本クラス1だってのに、みんなこれをクリアしていたのである。みんな!!……大五郎を除いて……

えぇ、なにここにいる犬たちはみんなエリートなわけ?てか特別優秀な犬たちがたまたま集まったの?いや、違う。だって最初のレッスンではみんな、あんまりちゃんとできてなかった。大五郎は家での練習や宿題は完璧にできるので、上記の条件もパスできる……家では。とはいえ、家の中だけでちゃんとできてもしょうがない。

同時に、犬が悪いのではない。トレーニングできない人間がアホなのであるというようなことをネットで読んで落ち込んだりもした。

なんせ60分のクラスの間、アホ五郎さんは、落ち着きなくウロウロし、吠え続け、少しだけ静かになったら寝る、気が向いた時だけ、コマンド練習をする。そしてまた昼寝。というのが一連の流れになってしまっていた(恥)

褒められることといえば、「あら、今日もかわいいお洋服」くらいのものである。セラピードッグ……本当になれるのか?と私は頭を抱える。

しかも大五郎はまだ子犬であるためか、単にアホ五郎さんであるためか、「Good Boy」「Good Job」などとほめられると、褒められたことがうれしすぎて、盛大に興奮してしまう。うれションをしでかすくらいに。単純なのである。

そして迎えた最終トレーニングの日。これまでの総まとめと次のステップが発表される。正直、他所の犬たちの邪魔をし、まとめのお披露目的なトレーニング(みんなの前で、障害物をよけながら歩いたり、それまで習ったコマンドをすべて行う)もお披露目すらできなかったので、クラスの始まる前から私は頭痛を覚えた。

ちなみに大五郎は、トレーナーさんたちが目隠し柵の近くまで寄ってきて、その柵内でできることのみをトレーナーさんだけに披露するという。言われたことはすべて出来ただけでもヨシとするしかない

そして、じゃじゃん。どこかドヤ顔風に見える大五郎さん。卒業証書をメダルをもらった。

正直なところ、この証書とメダルをもらう事すら躊躇ってしまうほどに、大五郎は一貫して悪五郎であったのであるが、いただけるものはいただいておこう。

ちなみに、他所のお犬様たちは、みんなの前でお立ち台的なものに上り、そのうえで飼い主さんとにっこり笑い、メダルと証書と共に記念写真を撮るという華々しいフィナーレがあったのだが、大五郎はもちろん、個別写真。

もう、確実なる問題児扱いであり、このコースでは私は常に大汗をかき、大層な苦行であった。そして、その問題児に勧められた次のコース。

……Reactive Rover……とは?

目標・セラピードッグの太字が心の痛い。よくよくこの画像、および、コース修了書を見ていただきたい。横に階段が書いてあり、コース名な記されている。そして、前述したセラピードッグになるためのトレーニングコース。
☆Apprentice Dawgs ー 基本クラス
☆☆Master Dawgs - 基本クラス2
☆☆☆Dawg Manners -基本クラス3
☆☆☆☆Therapy Dawg Prepーセラピードッグ予習クラス。

ないじゃん。Reactive Roverなんてないじゃん! 

Reactive: 反応性  Rover: 放浪者、さまよう人…..とは?要は、他の犬や人などに吠えたり、う~う~言ったり、とにかく散歩にでると手に負えない犬たちへのクラス。そう、問題児クラスなのである。

普通に次のステップアップクラスには行けないどころか、特別クラスご招待となった大五郎。目標・セラピードッグの太字が心の突き刺さる。くっ。

Mandatory people-only orientation. For safety and liability reasons, no dogs on the first night of class 

Strictly limited to six dogs

手渡されたパンプレットには、めちゃくちゃでっかい、赤い字で「安全性と責任問題のために、飼い主限定、そして必修のオリエンテーションあり。6匹限定のクラス」と書いてある。えぇぇぇ……

最初のクラスの時、千里の道も一歩。つまりは3900Km(1里が約3.9Km)の道のりどころじゃねぇ!と思った。

けれど、3900Kmどころではない。ローマは一日にして成らず……こやつをセラピードッグにするためには、街、果ては、国、文化を作り上げるべく努力と時間が必要になるのではないか、と私は頭を抱えたのである。

To be continued.…

これまでの話や我が家のお犬の話のまとめ。


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