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Green Card 狂想曲(3)

グリーンカード、在米永住権を獲得した時の話。(その1(その2)

グリーンカード取得のため、3ヵ月もの長い時間をかけて、必要書類などを集めた私であったが、大きな問題があった。それは、◇刑事告発、逮捕、または有罪判決の認定された警察および裁判所の記録(該当する場合)なる部分である。

弁護士さんとの打ち合わせにて
「すまんが、この部分。私も彼も逮捕されたことがあって、彼に至っては少年院のような場所にいたこともある。ただし、まず前者。私も彼も無罪放免にはなったが、地域でボランティアをするのが条件で、そうした。で、後者は、未成年だったこともあり、犯罪歴としての記録は残らないし、残っていないのであるがどうしたものであろうか。無罪、犯罪歴が残っていないとは言え、逮捕された事実はあるわけだから、ここはYESにチェックせねばならぬよな?」

そう告げると、弁護士さんは「ふぁっ?!あなた、留学生だったんでしょ?なんで?!えーえー」と最初は驚愕した。

そらそうだ、普通に留学生生活していたらそんな事態には滅多に陥らないはずだ。そこで、事のいきさつを説明。私に人種差別用語を投げつけ、無礼な態度を取った男にアルゴがキレた(詳細はこちら)ためであると説明すると、弁護士さんは、「ぬぬ!それは!!!それは当たり前だ!彼が正しい。というか、よくやった。俺がその時、君たちに知り合っていたら、相手のヤツを告訴してやったのに」と憤っていた。

弁護士さんは、ここいらではかなり有名な弁護士事務所の人。ものっすごいお洒落なビルの50階だかにドドーンとオフィスを構える大手事務所所属である。さぞかし恰好つけのツンケンした偉そうな弁護士せんせぇなのだろうと私たちは偏見バリバリで会ったが、彼はとても軽いノリのおっちゃんだった。愉快なおっちゃん、といった感じ。複雑なビザの手続きなどに詳しい人だったのだが。同時に、彼はミュージシャンでもあり、音楽をやっており、ポエトリーリーディングなどの詩作をやっているアルゴとも意気投合していた。そしてこの音楽、ポエトリー繋がりが、グリーンカードの面接にて盛大なる効果を発揮するのであるが、それはまた後程。

弁護士「とは言え、だ。君の逮捕からの、コミュニティーサービスでの証明書類。そして彼の分もその件に関しては裁判所の書類が必要になるね」とのことで、またも苦労してそれらの書類を入手した。大体にして、私は当時、普通に働いており、8時から4時営業の役所、裁判所に行くということ自体が大変だったのである。

こうしてやっと、私の書類は提出されたわけである。提出は弁護士さんのオフィスにお任せした。そして、指紋の採集や写真撮影なぞも諸々終了した。これは、書類の提出後、別に手紙が届き、指定された日時に国土安全保障省のオフィスへと向かい、そこで行われる。BIOMETRICS APPOINTMENTと呼ばれ、指紋と写真を撮られる。かつては指の1本、1本にインクをつけて指紋を取られていたらしいが、今やすべてパソコンと機械で行われる。

これでいよいよ、最後の難関。面接を迎える!というわけである。面接は申請人(アルゴ)と相手(私)。弁護士を雇っている人は、弁護士も同席で、国土安全保障省のオフィスへと行き、事務官の方に3者面談のような体で面接するというものなのだが。であるのだが……

何故かある日、「特別面接を行うからあなた一人でこい」というような招集手紙が届いた。弁護士さんに「なんだろ、これ。どうしよ(焦)何か書類に不備があったとか、はたまた例の犯罪履歴でハネられるのだろうか」と慌てる私に、彼は「う~ん、今までにないケースだね。でもオフィシャルのお手紙だから、とにかく行ってきて、何かあれば俺の名刺を出して、俺に連絡するように言って」と言う。むぅん。

正直、緊張マックス。生きた心地もしなかった。なんせ、このグリーンカードの手続きでハネられたら、すでに就労ビザをマックスで使っている私は帰国するしかないのである。新婚だというのに!(…当時、自分でもすっかり忘れていたが、今、書いていて思い出した。そう!この時、我々は新婚だったのである。ひゃあ。)しかも、こんなにもくっそ面倒臭い様々な難関をクリアしたといのに!……ちなみにどんなに手間暇かかって提出した書類でも、ビザが下りない人だってかなりの数がいるとのこと。

ドキドキしながら指定の場所へと向かい、面接。もちろん、Homeland security office。日本語にすると国土安全保障省のオフィスであるので、警戒がものすごい。セキュリティーの他に拳銃ぶら下げた警察官もいる。部屋に通された段階で私は吐き気を催すほどに緊張していたのだが、相当、顔色も悪かったらしく女性職員は「大丈夫?お水飲む?」と心配してくれたほどである。

で、なぜ呼ばれたか、なんで事前面接なのか、との答えに私は安堵と怒り、その両方の感情が同時に爆発し、腰を抜かした。アルゴに対して、いくつかの接見禁止令が出されており、国土安全保障省の人たちは、ドメスティックバイオレンス(家庭内暴力)のケースを疑っていたのである。

ファック、ファック、ふぁぁぁぁぁぁぁぁっく!

と、公共の場所では決して口にしてはならない言葉が口をついてしまった。しかも大声で。しかも政府の建物の中で。最悪だ。

私の大声を聞きつけたセキュリティーと警察官がバタバタと私たちのいる部屋に来たが、女性職員が大丈夫ととりなしてくれた。私は慌てて、失礼を謝り、目を白黒させている職員に説明をした。まず、私からアルゴにとった接見禁止令などというものは存在しないので、ドメスティックバイオレンスではない。

一つ目の接見禁止については、彼の母親の死亡保険金を盗んだ義父と弟のせいである。義母の保険金の名義を書き換え、病床の義母を他の親族に会わせず、挙句、弟はネグレクトにて母を死に導いたため、私の夫に怒りはすさまじいもので、葬式の最中に警察を呼ばれた。その時に、弟がとったものがこの命令である。詳しくはこちらのNoteにある。

ちなみに浅はかな弟は、その後も夫を陥れようと別の画策を起こした。それは、死亡した義母あての政府からの生活援助の小切手を換金させようとした(死亡した人に送られた政府の小切手を換金することは犯罪)ことがあった。夫はもちろん、それを断ったが電話での会話の際、夫が弟を激しく罵ったため、馬鹿な弟は再度、別の接見禁止令を取ったのである。発行日は、2012年の8月と9月であるはずだ、と説明。

そして、2つ目の接見禁止令については、かつて夫が浮気していた相手との関係を清算したところ、捨てられた女が逆上。ストーカー行為を行い、家を突き止め、私に刃物で切り付けるという事件を起こしたため、接見禁止令を請求したのだが、その時、女側もなぜかアルゴに対して接見禁止令を請求している。刃物沙汰については、私も警察にレポートを出しており、それは〇月〇日のことで、相手の女は〇〇〇であるので必要とあらば、私の方の書類コピーを提出できる。ちなみに詳しくはこちらのNoteにある。

本当にクソみたいな弟の行動、および、迷惑極まりない馬鹿女の凶行であるので、と。そのような旨を一気に説明した。興奮のあまり、鼻血まで出てしまい、申し訳ないこと極まりなかったが、クソ弟と浮気馬鹿女のせいで、こんなことになったのだと思うと、怒りがこみ上げ、このクソ虫らの存在が心の底から憎らしくなった。

私が先ほど、Fワードなどを吐き散らかしてしまったのは、どちらのケースも私たちにとってはとてもトラウマな出来事であり、まさかそれらのことであなた方のお手を煩わすことになったのも申し訳ないし、何より、ここにきて今、こういう風に話すまで死ぬかと思うほどに緊張していたのだ。というようなことを伝えているうちに涙がボロボロ流れていた。

最悪の最悪である。

完全挙動不審でやってきて、叫び、罵り言葉を大声で吐き散らかし、鼻血を出し、怒涛の勢いで話し出した挙句、泣き出す始末。なんという面倒な女であろうか。女性職員は見た目、私と同じくらいの年齢に見えたし、目の前にいる謎の東洋人を文字通り、あわわわ、あわわわ、といった感じで対応してくれていたので、さらに申し訳ない気持ちが募った。

「い、いや!いいのよ……いいの。ドメスティックバイオレンスじゃなくて安心したし、こちらこそご足労かけて申し訳なかったわ。というか、普通は、こんな風に何件もの接見禁止令なんてないから。ドメスティックバイオレンスだけでなく、犯罪の関係も疑っていたの

お、おう。普通ならな……残念ながら普通でない状況に陥っていたのだよ、そら君らが犯罪かもって思うのは当然である。

ちなみに、この接見禁止令のせいで余分な時間と手間がかかったのはこの時だけではない。後の、グリーンカード延長(10年物)の手続きでも同じことがおこり、さらには、一緒に海外に行き、アメリカ国内に戻る時もまた必ずこのせいで足止めされる。普通に足止めならいいが、一度など日本からの帰り、8時間ほど足止めをくらい、本当に腹だたしいこと極まりなかった。

そんなこんなで約1か月後、ついに、夫婦二人と弁護士さん揃っての最終面接をしますよ、という通知がやってきた。とはいえ、この面接を迎えても落ちる人は落ちるのだ。

ちなみに、この最終面接をしてくれた人は、私が鼻血を吹いた時に親切にティッシュを差し出してくれた人で、最終面接で再会した時、「あ!あの!鼻血の人!!心配しないで、今回は君が不安がったりするようなことはしないし、度を越えて緊張する場合もないからね!(にっこり)」と言われ、一人、赤面した私であった。

次回がFinal -次回こそ、タトゥーを見せる羽目になり、そしてその結果、ビザがとれたというトンデモ最終面接のお話を書いておしまいにしようと思う。

続く



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