うつくしき日本語は大層ムズカシイ
「あのさぁ、ちょっとさぁ、かきがたべたいです!」と、夫アルゴに唐突に日本語で言われたのだけど、それは牡蠣なのか、柿なのか。そもそもどこで「かき」なる言葉を学んだのか。私は九州人であるので、発音が微妙。かき↑なのか、かき↓なのか、と自分でも一瞬、考え込んだ。と、いうわけで夫アルゴと日本語の勉強について。
ちょっと前にアリエルさんの「日本語を娘さんに教えるのが難しい!」という記事を拝見したのだけど。
一字、一句、同意したよね……アリエルさん曰く「娘たち(日本語20%)と私の夫(日本語0%)」のムスメちゃんとのメール(Text。携帯メール)でのやり取り。我が家はLineを使用しているけれど。うちはどうだろ。夫(日本語65%)リンゴ🐶(日本語1%)くらいであろうか。ちなみにラインでのやり取りは、英語と日本語が半々くらい。簡単な漢字なら読めるけれど、大体、ひらがなで打っている。
一緒になって21年である。夫アルゴは少しの間、学校で、あとはほぼほぼ独学にて日本語を勉強している。いわゆる「ガイジン日本語」というのが彼的には許せないらしく、特に発音には注意して勉強しているようである。
賢き我が家の愛犬、リンゴ🐶氏は、さんぽ、ごはん、だめ、よし、ねんね(寝る)、ハンサムちゃん、などと言った日本語を理解しているようである。特に「さんぽ」という言葉が大好きである。夫アルゴは、以前のNOTEにも書いているが、そもそも「言葉・言語」が大好きなので語学学習が趣味で、現在、5か国語を操る。
夫アルゴはひらがな、カタカナ、ある程度の漢字を書けるし、日本人とある程度の会話をすることもできる。ので、結構、イケる方では?と私は思うのだが、本人がInsecure(不安に思う、自信がない)なのである。ここ数年は日本語を使う相手が私しかいないというのが一因。
これは、単に私以外の日本人と話す時に緊張する、というのと。彼の中で私の日本語が怪しいことを察しているのであろう。なんか、すまんな。
彼には大きなトラウマが存在する。大学在学時に彼は英語と日本語をDouble Major(専攻を二つ持つこと)だったのであるが、日本語の先生がとにかく、彼を徹底的に差別したのである。日本人教授はまず「私はアメリカが嫌いです」と初日のクラスで言ったそうだ。うへぁ。
なら帰国しなさいよwwwてか、じゃぁなんでアメリカ人と結婚したのかwww何でアメリカの大学で働いてんのwという話になるが、この人がなかなかにアレな人物で平たく言うと、ブラック・ヒスパニックの生徒を差別する傾向にあったのである(因みにこの件は結構な問題となったのだけどそれはまた別のお話)。
これは夫アルゴが専攻を諦めた事件の話。ある日のクラスで「これはなんですか?」「セーターです」というやり取りを練習した時。先生は1人、1人に「これはなんですか?」と尋ねる、それに生徒が答えるという形式。で、順番を待つ夫アルゴ。「セーターです」簡単じゃん!で、他の生徒と同じように「セーターです」と答えたら、「ちがう!!!!トレーナー。これはトレーナーです!!」と怒鳴られたのだという。おかげで夫アルゴは「トレーナー」と「セーター」という言葉にトラウマを抱く。
なんじゃそらwwwww意味がわからんwwwwwと、私なら盛大に草を生やしてしまうところだが、夫アルゴにはまず、衆人環視の元で意味もなく怒鳴られたという屈辱と、なぜ自分だけが?という大きな疑問。そして、何より、教える側の理不尽さに違和感と怒りを感じたのだという。そらそうよな。
それ以外にも、ただクラスに座っていただけなのにセキュリティーを呼ばれたり、宿題を「彼女(当時は結婚してなかったゆえ)に手伝ってもらったんでしょ」と採点もせずに突き返されたり。ちなみに、夫アルゴと私の名誉のためにいうが、私は彼の日本語の宿題を代わりにやったりしたことはないし、そもそも私は夫アルゴに日本語を教えると苛々してしまうので、教えたことすらないのである。
そう。駄目人間の私。私に英語(話す、聞く)を徹底的に教えてくれたのは夫アルゴであったというのになんたる恩知らず。いやでもねぇ、実際、難しいのよ。アリエルさんも記事に書かれていたが、日本語って難しいのよな。以下の点は、アリエルさんの挙げられていた教えるのが難しいポイントであるのだが。
① 格助詞: が、は、を、も。 特に「が(強調)」の説明。
② 擬態語と擬音語の説明。
③ モノの数の単位及び数え方。
ここに尊敬語、丁寧語、謙遜語。その上、先にも書いたが私自身の発音に地方訛りがある。そして、常々Noteにも書いているが私はやたら擬態語と擬音語を使う。正しい日本語というのはとにもかくにも、難しいのだ。
ある日の会話である。
「あ~、このカーペット、モフモフでいいわぁ(うっとり)」と店先で言った私に。
「むむむ、モフモフとは。Fraffy(ふわふわ)ということであるか?君はよくまめちょ(我が家の雌犬。まめ)にもモフモフぅぅと言っているが、同じことであるか?このカーペットの手触りとまめちょの手触りは違うようだが?そもそも、このモフモフという言葉を君以外の人が使っているのを聞いたことがないのだが、正しい日本語であるのか?あれ、そういえば、俺は普通にまめのことを「まめちょ」と呼んでいるが、そもそも、まめちょ、の「ちょ」は何なのか。何故、リンゴは「りんちょ」ではないのか?俺は君の真似をしているだけなのだが……ちょ、とは(真顔)そして、君はこのカーペット、いいね、というが、このカーペット「が」いいのか。このカーペット「は」いいのか。どちらが正しいのか?」
ひと言のモフモフ、からのコレである(ゲンナリ)あとどうでもいいけど、夫アルゴがまめを「まめちょ」と呼ぶと何故かとても可愛らしい響きがするのである。
「そんなもん!モフモフはモフモフなんじゃ!まめちょはまめちょなんじゃ!あと、この場合は、が、でも、は、でも同じことじゃ!」と半ギレで答える駄目妻である。
でもだってそうじゃん!モフモフはモフモフなんである。まめちょの「ちょ」に意味などはない。あとすまんな!て、に、を、は、が、を省略してな!でもそんなもんなのである。
アリエルさんも書いてらしたけど、日本語って感覚的なものという要素が強い気がする。成長する過程で、なんとなく学んだものだから、がっちり言語学習をする人に理詰めで問われると、ムギギギギ、にならざるを得ない。特に学生時代、勉強の嫌いだった私は、日本語文法なぞ非常に怪しい。
日本語を学習する外国人はよくアニメや映画などを観て学習する、なんていう。人によってはオンラインゲームで学んだという人もいる。友人に、ものすごく流暢な関西弁を話す韓国人や、スペイン語と中国語、日本語がペラペラというスパニッシュの子もいる(もちろん、漏れなく件の日本語教師には差別された)みな、アニメ、ゲームで学んだと言っていた。それはそれですごい。
ので、アニメとか映画見て、夫アルゴにも学んで欲しいわけなのだが、常に上記のような疑問をぶつけられたり、「何で髪の毛がピンクであるのだ。こんな学生いないだろ」とか「日本のアニメには白人しかいないな。WhiteWash極まれり(憤怒)」「NARUTOはだってばよ、というがだってばよ、とは?」などと、いちいち面倒なのである。更に我々が見るアニメや映画は偏っている。ゆえに、北野武映画などで観る「くおらぁぁぁ」「やんのかぁぁぁ?あぁん?」みたいなヤクザ台詞ばかりがとても上達している。ひどい!
ちなみにWhiteWashというのは、元来の意味は「~のうわべを飾る、~をごまかす、歪曲する」という意味なのだが、ここでは、「白人化する、白人に媚びる、白人を喜ばせる」といった人種差別にもつながる意味合いが強い。
ほれ!こうして英語にだって、本来の意味とスラング的な意味とあるやんけ!と自分の駄目ぶりを棚に上げるが、そもそも、英語が母語である人にとって、日本語というのは最も学ぶハードルが高いのだという。もともと書く文字が3種類ある時点でそら難しいが、一番、言われる点は、文法。
本能的に間違っている。そんなもんを、私のごときが修正、指導できるわけないじゃん。
そして、己の言語を学習するパートナーがいる、というのは、ある意味、常に鏡と向き合っているようなものなのである。
別言語を学ぶにはその言葉を話す彼氏・彼女を作るのが一番、手っ取り早いとよく言われるし、確かにそういう一面もあるのだけど。夫アルゴが日本語で「も~いやぁぁよぉ。しつこい~~」「ばかじゃないの?」「ムカつく」「だまれ」などと言われると非常にムカっとくる。
「そんなのは相手に失礼な言葉である」と言ってみるのだが「これは君がいつも言っている言葉である」と言われると、ムギギギギとしかならず、いかん、いかん、良き日本語をつかわねば、と思うのだけど。でも、やっぱり口にしてしまう。逆に私が英語を学んだ時などは、汚い英語を使う私の英語を聞いて、夫アルゴも義母も「ふふ、流石ね」とニヤニヤしていたから、パートナーがいるから言語上達、については、人それぞれ、というしかない。
逆に「昔の日本人はさぁ、I love Youっていうのが恥ずかしくって、月が綺麗ですねって言ったんだって」などと教えると、やたらと「月がキレイなぁ」「月がきれいですねぇ」などと言うのは、「まめちょ」の響きと同じくらいに愛おしくも思える。
日本語というのは大層、美しく。以前、俳人・種田山頭火の記事を書いた折にも触れたが、繊細で素敵な言葉が沢山存在する。ゆえに、とりあえず、大量にある日本語学習書籍を使用し、私自身、夫アルゴと共に己の日本語学習をやり直さねばなどと思う今日この頃。
因みに冒頭の「かき」であるが、夫アルゴが欲したのは「柿」であり。わざわざ、アジアンマーケットまで行き、割高な価格で柿を購入したものの「……オモシロイ味……」とだけ言って、一口だけ食べていた。ちなみに夫アルゴが「オモシロイ味」という時は「好きではない」「いっちゃなんだがまずい」という時である。「牡蠣」については、オイスターであると告げると、「うえっ」(日本語)とだけ言っていた(牡蠣は嫌い)。
終