令和の今、私が観たい古畑任三郎を考えてみた②
2nd season
調子に乗ってるからか、どんどん一話あたりのプロットが長文になっている。
とりあえず、一話から十話まで。
堺雅人「インサイダー殺人事件」経済産業省官僚
中小の半導体メーカーが日系大手電機メーカー傘下に置かれることをM&Aが実施される前に入手した堺は、妻の証券口座を利用して購入し、値上がりした後で市場で売り抜けて約800万円の利益を得たが、インサイダー疑惑を上官(北大路欣也)に問われ殺害する。
金融商品取引法をはじめとした経済専門用語を捲し立て、古畑を煙に撒こうとするシーンは圧巻。古畑に全て暴かれた後に発した「もう…おしまいです…」という台詞は某赤坂系テレビドラマを彷彿とさせる。
吉高由里子「殺しのアセスメント」介護士
表向きは仕事に直向きで心優しい訪問介護士だが、実際は認知症患者など正確な判断ができない状況にある利用者を丸め込み、遺産を吉高が単独相続できるよう遺言作成に介入する悪女。ついにある一人の高額納税者(柄本明)の娘(鈴木砂羽)に実態を掴まれ罵られたところを逆上し殺害。
「ねぇねぇ、銀行に行く?」と甘い声で利用者に囁く吉高の悪女っぷりが本作の見どころであり、古畑もその魅力に翻弄されていく。
十分な物的および状況証拠がなく、捜査が難航するかと思われたが、認知症のため証言能力がないと思われた被害者の父(柄本)が、正確には脳血管性認知症という証言能力があるまだら症状の認知症であると見抜き、柄本の証言により逮捕となった。
天海祐希 「殺しのエチュード」指揮者
カラヤン、そしてクライバーと世界最高峰の指揮者に幼少期から師事を受け、17歳でジュリアード音楽院に飛び級入学、現在はベルリン・フィルハーモニー管弦楽団で指揮をふるう世界最高峰の指揮者。
故郷である日本での来日公演期間中、天海がその権力を誇示してパワハラを行ってきた楽団員が告訴準備をしていることを知り殺害。古畑はピアニストの井口薫(木の実ナナ)と指揮者の黒井川尚(市村正親)から薦められクラシック鑑賞に来たところ事件に立ち会うこととなる。世界的マエストロとしての存在感、オーケストラによる迫力満点な演奏と、宝塚トップスターとしてならした天海だからこそ実現可能な非常にスケールの大きな一作となった。
アカデミー賞作品賞を受賞した「TAR」ケイトブランシェットと度々比較されることとなるが、性別を超越した格好良さが話題を呼び、犯人役にも関わらず日本中で熱狂的なファンを獲得し、放送後には二次創作小説が大量に出回ることとなる。
大久保佳代子「魔性の女にご用心」作家・脚本家・コラムニスト
38歳で執筆した処女作「魔性でごめんね」、第2作「性欲の街」が立て続けにベストセラーとなり、たちまち独身女性の代弁者として地位を確立。
執筆業だけではなく、テレビ番組のコメンテーターやラジオ・Podcastパーソナリティとしても活躍の幅を広げているが、大久保が結婚を迫っていた不倫相手(大森南朋)から一方的に別れを告げられたため殺害。
大久保のPodcast録音現場に現れしつこく事情聴取をする古畑に対し、恋愛指南を絡めた返答を繰り広げるシーンは、現実でもTogetterにまとめられ恋愛に悩める女性のバイブルとして崇められることとなる。
ラストシーンの「聞き分けがいい女で終わりたくなかっただけなんだよね、足掻いても、もがいても、幸せになりたかった。ただそれだけ。」という背中越しで語るシーンは、女優・大久保の新境地となった。
窪塚洋介「KINGによる殺人」オンラインサロン主催
「絶対儲かる」「夢の実現」「遊ぶように働く」といったワードを使い、投資・暗号資産・副業・FIRE・メタバースなど様々なノウハウを月額の会員制サロンにて“コミュニティ”へ伝授するオンラインサロン主催者。通称KING。
会員を「クルー」「仲間」と呼び、10代後半から20代の若者を中心に支持を集めるが、その内実は人生経験が乏しい若者を搾取するマルチ商法の主犯。
マルチ商法被害による借金苦で自殺した元会員の兄がYouTubeを使って世間にサロンの内実を暴露しようとしたところを殺害。
「みんなで鳥になって羽ばたこうぜ!We can FLY!」とクルーを煽動する窪塚の姿は、マルチの恐ろしさを現代の若者に示すとともに、00年代の彼に影響を受けてきたアラフォー世代の琴線を揺さぶる。
竹野内豊「汚れたチェイサー」バーテンダー
西麻布の隠れ家バーには、バーテンダーをする竹野内を目当てに、多くの女優・アイドル・グラビアアイドルが詰め掛ける。
あくまで仕事の一環として全ての客に対し快く振る舞う竹野内だが、ストーリーの冒頭で何かの口論の末、誤って女性客を殺してしまうシーンが映される。
竹野内の殺人の動機は最後まで明言されないという異色のストーリー構成だが、古畑の
「秘密は命と同等。あなたは命に匹敵するほどの重大で個人的な秘密を暴かれそうになったから殺害した。言わば心の殺人を、実際に殺人することで回避した。お気持ち察します。けれどやはり殺人はいけません。」
という言葉と、古畑・竹野内の眼の演技が、視聴者の心を揺さぶる。
赤い洗面器の男の話を竹野内が客に話すシーンが序盤にあるが、やはり途中で遮られてしまう。
マツコデラックス「殺人信仰」宗教家
日本国内で会員数20万人以上を誇る信仰宗教「創福学会」の創始者。人々を救済する救世主として自己の存在を位置づけ、巧みな話術と巧妙な手口で、多額の献金を信者から集めている。いっさい自身で動くことはしないため類稀なる巨漢。側近が裏切りの手筈を整えている事を察知し殺害する。今泉が宗教に取り込まれそうになったのを古畑と西園寺が食い止めたこともあり、古畑には終始威圧的なな対応。普段全く動かないマツコが殺人時には俊敏に巨体を動かし、「そんなに言うなら証拠はあるのよねぇ?古畑ちゃぁん?」と問い詰めるシーンは圧巻。
佐藤健 「チェックメイト」プロチェスプレイヤー
World Chess Championships の決勝ブロックに進出したアジア人では唯一のプロチェスプレイヤー。
日本におけるチェス市場の普及という業界の思惑に加え、華やかで洗練された容姿も相まり、業界内外での露出が急拡大している最中、タニマチから過去の女性トラブルをYouTubeで暴露とすると脅されたため殺害。
日本チェス協会の協賛のもと、一般では普段中々見ることの出来ない世界大会の会場を見ることができる意欲的な一作。大事な試合でキングの駒ではなく、ボーンの駒を動かしたことで、古畑に怪しまれることとなった。
佐藤が駒を動かしながら「チェックメイト」というシーンがかっこいいと幅広い世代の女性から評判となり、以降佐藤はファンサービスの一環として自身のYouTubeチャンネル等で度々同台詞を発することとなった。
前澤友作「殺人飛行」エンジェル投資家
学生時代から次々と事業を上場させた後に、40代からはエンジェル投資家として日本経済を支える有数の起業家・投資家として知られる。その莫大な資産を元手に民間人としては異例の宇宙旅行へ向かうとしスペースシャトルに乗り込む。前澤はこの飛行中の無酸素状態の中で同じく一般乗組員の米国人投資家を事故に見せかけ殺害する。
宇宙空間という特異な状況で起こった出来事を、古畑がどのように検証・立証するかに焦点が置かれた。
エピソード冒頭の古畑の台詞
「1969年7月20日、人類で初めて月面着陸に成功した人物、アームストロングはこう言いました。「That's one small step for a man, one giant leap for mankind.(これは一人の人間にとっては小さな一歩だが、人類にとっては偉大な飛躍である。)」 けれど月面での殺人は、飛躍しすぎです。」
松たか子「全ては夫人の手の内」 駐シンガポール日本国大使夫人
日本国大使としてシンガポール駐在する夫(上川隆也)に帯同して三年目、夫婦の仲はすっかり冷め切っていた。しかし単なる大使のお飾りとしてではなく、日本の地方都市の名産等を各国大使に精力的にプロモーションし人脈を構築するなど「大使夫人」というある種ひとつの職業としてプライドと自尊心を保っていた。
夫の不倫が発覚しても、理想の夫妻を表向きだけ演じきることができればそれでいいとこれまで割り切っていた松であったが、夫よりも20も若い不倫相手が身籠ったことで、離婚を打診されたため殺害。
今泉が懸賞で当てたペアチケットを使い古畑・今泉はシンガポールへ観光に訪れた事で捜査に協力することとなる。
マリーナ・ベイサンズのインフィニティプールで行われるクライマックスは圧巻。
次回は2nd seasonの最終話と、スペシャル版×二話をツラツラ書きます☆
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