初心者で最初のフルートで悩むなら、とりあえず２０万円くらいのムラマツかサンキョウを買っとけ

初心者向けのフルート選びに関する結論を先に述べるなら、「ムラマツかサンキョウを選んでおけば大きな失敗はない」ということです。

【前提】

この意見には私の個人的な利益や利権はまったく関わっていませんし、プロとしての演奏経験を背景にしているわけでもありませんので、ひとりごとのようなものと思ってしまって構いません。

ただ、都内に住む方にとっては、楽器屋のリペアに限らず、メーカーに直接持ち込んでメンテナンスできる利点を考慮すると、これらのメーカーのフルートが無難だと思います。
私はサンキョウユーザーなので、何かトラブルがあったら、池袋のサンキョウのフルート工房に予約取って技術者とコミュニケーションとって修理をやってもらっています。

【注意】

この文章は利権が絡んでいない方向けです。誰かの先生に師事されている方は、その人の言う事を素直に従ってください。
余計なトラブルを招く可能性があります。
あと、１万円くらいで買える安いフルートはやめたほうがいいです。
あれはフルートの形をしたおもちゃで、ヤマハのリコーダーのほうがちゃんとした音が出るという本末転倒なものなので・・・。

【本題】

さて、これまで中古楽器を扱う仕事をしてきた経験があり、現在も中古フルートを多く触れる環境にいます。
そこで感じたのは、洋白に銀メッキがかかったフルートに関する寿命の問題です。
管体が銀で、キー部分が洋白のフルート
管体が丸ごと洋白のフルート
このふたつは、どうしても銀メッキが剥げてきて、緑青が生えてしまい、やがて使い物にならなくなるケースが多いです。
したがって、初心者向けフルートを選ぶ際は、頭部管以外の部分は使い捨てという考え方で選んでください。どんなに丁寧に手入れしていても、いずれは錆びてダメになる運命にあるようです。
一応の救済策として、サンキョウはメッキの再加工を含むオーバーホールを提供していますが、これにはかなりの費用がかかります。参考価格はHPに記載があるので見てもらったほうがいいと思います。
そのため、総銀クラスの中古フルートを再生する場合以外は、コストパフォーマンスが悪いと感じます。
さて、どのクラスのフルートを選ぶかですが、20万円前後で頭部管が銀製のモデルが妥当でしょう。頭部管に関しては、上位モデルと下位モデルの差異はなく、次の総銀にステップアップするときの犠牲として割り切って考えて問題ありません。
※洋白は錆びてだめになってしまうので・・・。
頭部管は残しておいて、総銀製のフルートを買ったときに擦り合せを行って、気分によって2つの頭部管が使えるようにするというのがいい選択だと思います。

なお、サンキョウの場合は、エチュードでも、頭部管は上位モデルと同じものが使われているようです。シルバー925の頭部管に差異はないとのことでした。
具体的な選択肢としては、ムラマツの「EXⅢ」とサンキョウの「エチュード」が挙げられます。
ムラマツのEXⅢは、「ムラマツらしい上品で深みのある音」が特徴です。値上げの影響で現在は30万円近くしますが、複数の個体を吹き比べて自分に合うものを選べるなら、購入する価値があります。
私も当初これを購入する予定でしたが、現在も続いている在庫不足の影響で、サンキョウを購入した経緯があります。
このときにムラマツを買っていたら、私も今はムラマツを使っていたと思います。
一方、サンキョウのエチュードは、「音量が出やすく」、初心者にも扱いやすいフルートです。
ただし、音を出せるかという点で、演奏者との相性が出やすいメーカーのようです。
頭部管の歌口のカットが近年のモデルだと広く取られていて、口の削り出しのところに斜めにスリットが入っているのが特徴です。これのおかげか、息が多く入り込むようで音量が出やすいのかなと思っています。

(Handmade DTやArtistとかの上位モデルは少しおとなしいですが、エチュードはとにかく音がデカい。頭部管を入れ替えて、ゴールドリップの頭部管にすると、これフルート？と思うほど・・・。
まわりは某メーカーで、ひとりサンキョウを使っていたらまぁ浮くわ浮くわで。フルートがひとりで他の楽器とセッションをすると、音量が多く取れることにメリットがありました。)
※おそらく歌口の広めに取られている構造の問題だと思いますが、合う合わないが激しく、合わない方だとうまく鳴らせないという話を聞いたことがあります。
私自身もサンキョウの頭部管を複数本の試奏したとき、相性が悪く音がうまく出ないものがありました。。試奏は必ず行ってください。
初心者向けとして他のメーカーのフルートを強く薦められた場合は、少し疑ってかかるべきかもしれません。実際、私が吹奏楽部にいた時代、特定メーカーのフルートを推す、囲い込み的なセールスを見かけたこともあり、その際にはあまり良くない評判も耳にしました。
一般論で、所有楽器を聞かれて、ムラマツかサンキョウなら「そうなんだ」で終わると思います。
EXⅢを買っている人がいれば、「いい選択肢をしたね」と声を掛けると思いますし、エチュードなら、「よくこれにたどり着いたねｗ」と反応すると思います。
多分、フルート吹きの方なら大抵の方は同意してもらえると思います。
個人的な思いとして、サンキョウ持っている人は多分ほかのメーカーのフルートは選択しないのかなーと思います。
Handmade DT/STクラスの中古があまり市場に出回らないという点から、本当にサンキョウが好きな人は手放さないで使っているんだなと思っています。
多分、サンキョウを最初に吹くと、他のメーカーが吹けなくなるんだと思います。
ラーメンとラーメン二郎は別の食べ物みたいな・・・。
ムラマツのSRもめったに見ないので、この２つのメーカーは本当に手放す人はいないのでしょう・・・。
初心者が失敗しない選択をしたいなら、ムラマツかサンキョウが無難です。この２本は試奏できるお店が多いので、購入前には必ず吹いてみて、相性をみてください。

【参考】現在所有している楽器
Etude P.A.
Artist
Handmade DT リングキー
SANKYO アルトフルート