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糺の森のフィッシュ&チップスに『失われた時を求めて』

とある週末、
糺の森近くのスコティッシュパブ「アンティシェンエ」で

常温ギネスと一緒に
フィッシュ&チップスを食べていた。

「アンティシェンエ」のフィッシュ&チップス。大っきな白身魚とホクホクのポテトが最で高。
フィッシュ&チップスにはたっぷりのモルトビネガー! この魚フライは衣も美味しいのです。

そのとき突然、一冊の本を思い出した。
『アイルランドB&B紀行』という本である。

その本は、90年代頃のアイルランドのB&B事情と
10人のおかみさんたちへのインタビュー集で、

そのなかで、
「アイルランド北部最高の料理人」と称されていた
ノーラ・ブラウンさんのB&Bが気になって、

行ってみたい!
直接話をしてみたい!
美味しいごはんも食べてみたい‼

その気持ちだけで
翌月には北アイルランドに飛んでいた。

北アイルランドで出迎えてくれたノーラは、
アイルランド人特有のユーモアと人懐こさで、

「来て早々申し訳ないんだけど、
私、日本語の本が読めなくて困っているの。
この本の内容、英語で教えてもらえるかしら?」

差し出されたのは『アイルランドB&B紀行』。
ポカンとしている私に、

「昨日までJunko(著者さん)がいてくれたのだけど、
忙しくてこの本に何て書いてあるかまで
詳しく聞けなかったのよ」と言う。

拙い英語で内容を説明すると、お礼にと
アルスタースタイルのパンのレシピを教えてくれた。

アイルランドのマダムたちは、
本当に世話好きで、話好きで、話が上手くて、

アイルランドに滞在していた3週間、
ノーラのゲストハウス以外にも

いくつものB&Bに泊まって、
とにかくマダムたちとたくさん話をした。

波乱万丈な彼女らの人生に、
笑ったり怒ったり、
面白がったりしんみりしたりしながら、

美味しいアイルランド料理を
ギネスでいただく。

最終日もダブリンのパブで
ギネスとシェパーズパイで呑んだくれ、

そんな濃い3週間を
実は30年近く忘れていた。

ノーラをはじめ、アイルランドのマダムたちとの時間が、
その後の私のモントリオール行きに
背中を押してくれたことは間違いなく、

海外での生活や今の二拠点生活で、
困ったときには
とにかく行動してみようと、

思うようになったのは、
明らかにあのアイルランド旅行が原点
なのかも知れない。

フィッシュ&チップスとギネスで
私のマドレーヌ現象が起きた。
という話でした。

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