①自己分析 ― 就活は自己分析に始まり自己分析に終わる
どこの就活セミナーやサイトでも触れられる「自己分析」についてのお話です。
自己分析とは?
そもそも就活で言う「自己分析」とは何なのでしょうか。
「はじめに」にて就活の目的を「自分の価値観に合った企業を見つけ、そこに入社すること」と定義しました。
ここでいう「自分の価値観」を定義するのが自己分析の目的です。
私は自己分析を「ネタ出し」と捉えています。就活セミナーや就活サイトでは「自分自身の棚卸し」と表現されることもあります。
ESや面接では、自分のことについて初対面の人事担当者や面接官に「自分はどんな価値観をもった人間か」を限られた文字数や時間で、かつエピソードを交えてわかりやすく話さなければなりません。内容や結論だけでなく、それを根拠を交えて伝えなければならないのです。
そのため選考の場で話す内容を自分の過去から取り出しておき、整理しておく必要があります。この「話す内容を予め考え、他人にもわかりやすいように肉付けする作業」が自己分析です。
また自己分析は過去の自分を整理するだけではなく、将来の自分についても考える必要があります。
すなわち「どんな社会人になりたいか」または「どんな社会人生活を送りたいか」を定めることです。
最初はざっくりと方向性を見出すくらいで構いません。
しかしこれがある程度定まっていないとどこにエントリーしたらいいかすら見当もつかなくなりますし、逆に言えばこれさえ決まってしまえば、どんな企業にエントリーし、どんな研究をすればよいのか自ずと定まってきます。
業界や企業のことを調べだす前にまず自己分析をする理由はここにあります。自分の価値観と会社の価値観が合わない企業を受けてしまっては良い結果が出るはずがありません。仮に入社したとしても価値観が違う人間や組織と共同作業をするので非常に苦労すると思われます。そういった時間の浪費やミスマッチを避けるためにも、自分の価値観を定義し、自分の価値観に合う企業を探し、それを根拠を持って相手に伝えられるようにするのが先決です。
自己分析の方法
自己分析の方法・手段についてはいろいろとありますが、私は自己分析について解説している本を1冊読んで一通りやってみることをおすすめします。
私が実際に使った坪田まり子さんの本を紹介します。
この本に限らず、就活に必要な本は大学キャリアセンターに一通り用意されていることが多いので、探してみてください。
どの本、どの手段を使うにせよ、自分の価値観を根拠を持って定義するために注目すべきポイントは、「考え方や行動が変わったタイミング」です。
自分のこれまでの人生の中で
「それ以前は~だったが、〇〇という体験によって・・・と考えるようにになった」
というポイントを探してください。
そこにあなたの根拠ある(=人に話して納得してもらえる)価値観があります。
「~と考えている」という価値観だけであれば、それを口に出したり書くことで伝わります。
しかし企業側は学生の言ったことすべてを信じてはくれません。
自分の回答を企業に信じてもらうためには「○○という体験」という根拠が必要なのです。
また根拠を持って回答することで、仕事の上でほかの社員や取引先を納得させる能力をもっていることもアピールできます。
過去から現在、現在から将来
自分の「考え方や行動が変わったタイミング」がいまいちわからないひとは、次の方法を試してみてください。(私が読んだ本に書いてある方法を経験則を踏まえてアレンジしています)
白紙の紙やノート(できるだけ見開きで大きいもの)を用意し、縦に線を引き、紙面を6つのブロックに分けてください。
【参考】就活ではこの後も自分の考えをまとめたり、説明会や選考でメモをしたりする場面が多々あるので、「就活ノート」を用意することを強くおすすめします。サイズはメモパッドのような小さいものではなく、B5〜A4の普通のノートが良いでしょう。
左から2番目のブロックの一番上に「過去」、
4番目のブロックにも同様に「現在」、
一番右のブロックに「将来」と書き込みます。
ここでいう
「過去」は大学に入ってから就活に着手するまで(大学1~2年)
「現在」は就活に着手してからから就活終了まで(大学3~4年)
「将来」は就活を終え社会人になったあと
をそれぞれ指します。
ただしこれはあくまで例ですので、ご自身の都合のいいように解釈していただいて結構です。大学時代にとらわれず、それより前のことを「過去」に書いてもかまいません。
それぞれのブロックに自分のことについて書いていきます。
「過去」には現在はあてはまらない状態の過去を書いてください。(過去と現在が同じものは意味があまりないので)
「将来」にはなりたい人間像・社会人像を書いてみてください。漠然としたイメージでもかまいませんし、「年収1000万円」「部長」「子供を2人持つ」のように具体的な数字や状態を出してもかまいません。
「現在」には「過去」「将来」に対応する現在の姿を書いてください。
なかなか思いつかない場合は一番左に「サークル」「ゼミ」「バイト」「趣味」などジャンルの名前を書き出してみると思い出しやすくなると思います。
同じジャンルに複数の項目があってもかまいません。
ある程度書き込めたら、「過去」と「現在」の間のブロックにその間に起きた変化を書き込みます。
変化の内容や、変わった理由などもかけるだけ書いてください。
これにより、「過去」では~だったが、○○という変化を経て「現在」の状態になったというプロセスを可視化することができます。
この「変化」があったことこそが、いわゆる学生時代一番力を入れたこと(以下ガクチカ)や自己PRの種になります。
「現在から将来」には、「現在」の状態から「将来」の状態になるにはどうすればよいかを自分なりに考えて(あるいは調べて)書いてみてください。
これにより、「将来何をすべきか」すなわち「どのような会社に入るべきか」を可視化することができます。
その「現在から将来」のブロックに書いたことを実現できる会社があれば、そこが志望動機のはっきりした志望企業になります。
自己分析は終わらない
自己分析はやればやるほど正確さを増します。また就活中にもいろいろな心境の変化が起き、分析した「自己」そのものが変わってしまうこともあります。
時間の区切られたES執筆や面接と違い、生きている限り自己分析は終わりません。
しかし自己分析を延々とやって選考を受けなければ就活は前に進みません。
そのため私は、「ガクチカ」や「自己PR」の種が見つかり、「どのような企業に入りたいか」の方針が定まった時点でいったん自己分析を終了し、次の「②ES執筆」のステップに進むべきだと考えています。
もし「自分のなりたい将来像がまったくもって見つからない」という方は、「ガクチカ」と「自己PR」の種が見つかった時点で「ES執筆」のステップに進み、オファーサイトでオファーをもらった企業を片っ端から受ける中で自分の将来像を見定めていく、という方法もよいかと思います。
ただし最後まで自分の将来像とその実現のために必要なことが見つからないと志望動機を聞かれたときに苦しくなるので、仮でもよいので早めに自分の将来像を見定めることをおすすめします。
いずれにしろ、あまり自己分析のブラッシュアップのみにこだわらないでください。そして就活を進める中で自己分析に戻りたくなったらいつでも戻って来てやり直してください。
自己分析は就活のホームです。
そして内定をもらい就活を終わらせる段階に来たら、自己分析をもう一度(特に将来について)やってみてください。(参考:⑩内定~就活終了)
就活中いろいろな情報や考えを見聞きして流されたり、選考で自分の本当の価値観(例:とにかく給料がほしい、とにかく楽な仕事に就きたい など)を隠して臨んだりした結果、自分の本当の価値観を見失う可能性があります。自分の入ろうとしている企業はちゃんと自分の本当の価値観に合っているのか、自分自身をだましていないか、見直してください。
次回はES(エントリーシート)について解説していきたいと思います。