⑤企業研究・業界研究 ― ネットで調べてリアルで聞こう
今回は企業研究・業界研究についてお話しします。
企業研究・業界研究は自己分析と同じくほとんどの人が就活を始めるまでやったことがないため、どうやってすればよいのかわかりにくい分野です。
しかし正しく結果の出る方法は存在します。
この記事では自分の行きたい企業に入れる企業研究・業界研究をお伝えします。
企業研究・業界研究の目的
そもそも企業研究・業界研究はなんのためにするのでしょうか。これについて私は「入りたい企業を見つけて選考を受け内定を得るため」と考えています。
まず自分の入りたい企業像を明確にし(これはできれば自己分析の段階で決まっていると良いです)、それに合った企業をこちらから探したり、オファーサイトを通じて出会います。
出会った企業が入りたい企業だと思えたらその企業にエントリーし、選考を受けられるようになったら企業に入るために必要な情報や知識を仕入れた上で選考に臨みます。
選考を通過し内定を得たら、本当にその企業に行きたいのかあらゆる面から再検討し、十分し調べ考え尽くした上で企業に返答を出します。
このように企業研究は自己分析と同じく選考を受ける前から受けたあとまでずっと続けるものです。そして局面ごとにやるべき企業研究・業界研究が異なってくることに気をつけなければなりません。
企業研究・業界研究の方法
初めて企業を自分から探すとき、まず「自分の行きたい業界」から探しがちですが、このような業界から探す方法はおすすめしません。業界研究は企業研究より難しいからです。
企業についてのまとまった情報や知識は企業HPや口コミサイトなどで簡単に手に入れることができますが、業界について基礎的なところから細かく解説している文献はなかなか見つけることができません。
業界研究は、その業界について知識や情報を得るというよりもその業界に属している複数の企業に共通している部分や傾向を抽出した結果生まれる「業界に関する知識」を得るものと考えられます。したがって、気に入った企業をまず見つけてから、その企業が属する業界について調べるという手順を取るのがよりよいと思われます。
またその企業のインターンや説明会などで業界全体の動向について説明がある場合もあるので、そういった場も活用すると良いと思います。
初めて企業研究をする際は、まず行きたい企業像・条件をある程度定め、それに合った条件でナビサイトで検索をかけたりキャリアセンター担当者や就活を終えた先輩など、企業をよく知っている人に聞いてみましょう。
ある程度候補となる企業が出そろったら、いよいよ一社ずつの研究、いわゆる企業研究をしていきます。
企業研究の手法自体は自己分析と似ています。
自己分析で自分の過去、現在、未来について考えたりノートに書き出し、「過去から現在」と「現在から未来」に注目して自己分析を固めたと思います。それと同様に会社の情報を過去、現在、未来に分け、「過去から現在」「現在から未来」の変化をあぶり出します。
「過去から現在」は今までに行ってきた会社の事業や扱っている商品、売上高や利益などの決算もここに入ります。「現在から将来」はこれから会社が行おうとしている事業計画やビジョン、職種別の仕事内容などが当てはまります。
このように自己分析と同じかたちで企業研究を行うことで、見るべきポイントとその扱い方がわかりやすくなりますし、何より自分自身の「現在から将来」と企業の「現在から将来」を照らし合わせることで自分の価値観や将来像にマッチした企業を見つけることができます。
説明会前に下調べ
企業説明会(合同説明会の企業ブース)への参加することで、その企業を知るために必要な最低限の情報を確実に得られます。しかしそこで得られる情報はほとんどが自分で調べれば得られる情報なので、情報を得るためだけに会社説明会に行くのは時間効率が悪く、おすすめしません。
企業説明会で本当にやるべきことは、事前に調べて得た情報の照らし合わせと疑問点の解消です。説明会本番への具体的な望み方は次回の記事で解説し、この記事では説明会の前に調べておくべきことについて述べます。
就活で企業を研究するうえで最低限チェックしなければならない項目は、「ビジョン」と「求める人材像(人物像)」です。
「ビジョン」は会社が目指す方向や何を大事にしていくのかを示しています。このビジョンは会社の経営計画や日々の業務にも影響してくるので、ESや面接の場でもこのビジョンを理解しているか、ビジョンを実現するために動いてくれるかなどがしばしば問われます。
またビジョンを逆手に取ると、何を切り捨てるのかを読み取ることができます。例えば「日本一の○○会社になる」というビジョンを掲げている会社は、その○○会社になるまでは他の事業に転向することは考えにくいですし、「日本一」を掲げている以上相当の労力をかける覚悟があるとみられるので、ワークライフバランスは悪い(ワーク偏重になる)と考えられます。
このように、ビジョンを把握することで会社のキャラクター性や自分に合っているかどうかがわかります。ビジョンを把握することが企業研究の第一歩です。
もう一つの「求める人材像」は、ほぼそのままの意味で「こういう人に入ってほしい」という意味合いです。身もふたもない言い方をすると「こういう人であれば合格できます」という意味です。
これは選考対策に大きく影響してきます。「ガクチカ」や「自己PR」でこの求める人材像と同じであることをアピールすれば少なくともESや一次面接は合格確実だといえるでしょう。逆に「求める人材像」に全く当てはまらない場合は選考を受けたところで受からない可能性が高いと思われますので、優先度を低くするなど対応をすべきでしょう。
その他個人的に気になるところがあればそれもチェックし、必要に応じて質問しましょう。
下調べ中にもし「この企業にはあまり入りたくないな」と思ったら、その企業の研究を中止し、説明会や選考を辞退してかまいません。どうせ入らない企業への選考対策は身が入りませんし、なにより時間や労力の無駄です。
内部情報で裏取り
先ほども述べたように、企業HPや説明会で得た情報はあくまで表向きの情報ですので、説明と実態が合っていない場合があります。そのため公式情報の真偽を確かめる必要があります(これを俗に「裏を取る」「裏取り」といいます。)
企業の公式情報を裏取りするために主に使うのが「企業口コミサイト」です。企業口コミサイトは元々転職者用に公開されていましたが、新卒就活においても有効に使うことができます。
代表的な企業口コミサイトを紹介します。
①Openwork(旧Vorkers)
Openworkは企業口コミサイトでは最大手で、2007年のオープン以来800万件以上の口コミ・評価を擁する企業口コミサイトの代表的存在です。
私が就活を終えた2019年4月末にVorkersからOpenworkと改名しました。(URLにvorkersとあるのはその名残です)
口コミの全文を読むためには月1000円の課金を要するプレミアム会員になる必要がありますが、学生の場合はOpenworkを経由して就活関連サービスに登録することで無料で一定期間プレミアム会員になることができます。(参照:③オファーサイトに登録しよう)
②カイシャの評判
カイシャの評判は転職サイトenが運営しています。「日本最大級」を謳っており、100万件以上の口コミデータを擁しています。「良い点」「悪い点」がはっきり分けられていて研究しやすいのが特徴です。
③就活会議
就活会議は前2サービスに比べると口コミ数は劣りますが、新卒就活に特化しているため企業内部の口コミだけでなく面接やES、インターンの口コミもあり、企業研究と同時に選考対策もすることができる点が特徴です。
会員登録時に大学から配布されたメールアドレスを要求されます。
私個人としてはOpenworkをメインに使い、Openworkで出てこなかった企業を他2サービスでカバーする方法をお勧めします。しかしこればかりは好みの問題なので、お好きなサービスを使ってください。
また所属している大学によっては、大学独自のシステムで「就職活動体験記」というものが用意されている場合があります。卒業生が過去に受験した企業の選考結果や内容、アドバイスを無料で閲覧できます。中には面接の質問内容が書かれていることもあるので、選考を受ける前に一度チェックしておくと対策が抜群に楽になると思います。
ただしあくまでも主観に基づく過去のデータでしかありません。現在の選考体制とは違う場合や、そもそも設問を年度や担当者間で統一していない場合もあり得るので過度に盲信せず、選考本番でデータと違う質問や形式が来ても動揺しないように注意しましょう。
シート・ノートに情報集約
企業研究・業界研究で集めたデータや情報はどこかにまとめておきましょう。自己分析で使ったノートとまとめてもよいのですが、個人的にはGoogleスプレッドシートで表を作ることをお勧めします。
デジタルの表にまとめることで、調べた情報をすぐに取り出すことができるだけでなく、他社との比較が簡単にできますし、更新も簡単かつきれいにできます。またGoogleスプレッドシートを使うことで、自分のPCだけでなくスマホや出先のPCなどでも同じ表を閲覧・編集できるのでふと見たい時にすぐ見れる点で優れています。
まとめるときに使う項目の例を以下に挙げておきます。
- 会社名(株式会社を含めた正式名称)
- 選考進捗(エントリー済、ES提出締切、結果待ちなど)
- 会社のビジョン
- 求める人材像
- 求める人材像を受けてアピールできる自分の強み、エピソード
- その他会社を選ぶうえで重視する点
- 説明会や面接逆質問で質問する疑問点
- 自力で調べる疑問点
動きがあり次第更新することで、今自分が何社受けているのかなどを一度に把握することができます。
就活が本格化する2月以降は状況が目まぐるしく動くため、このようなリアルタイムに更新できる一覧表は重宝します。