
キャプテン・アメリカBNWについて
「キャプテン・アメリカ」のシリーズはMCUで最も好きなシリーズであり、好みを抜きにしてもMCUの主軸となるストーリーが展開されるシリーズだ。
最速でMCUに追いつきたいのであれば、「キャプテン・アメリカ」シリーズと「アベンジャーズ」を観ればポイントを抑えることが出来るので初心者には「キャプテン・アメリカ」をお勧めしている。
そして2作目に当たる「ウィンター・ソルジャー」は現在に至ってなお、MCU最上の傑作だと断言できる−−ジャンルが多岐に渡るので最高傑作とはあえて言わないが個人的にはそう考える−−。
「ウィンター・ソルジャー」が画期的に面白かったのは、それまでのMCUでの活躍の裏側にある、所謂“コラテラルダメージ”物としての側面がその後の「シビル・ウォー」、「インフィニティ・ウォー」への布施になっているし、何よりもアクションシーンが発明に満ちていた。
巨大な空間をダイナミックに使ったアクションシーンは映画館で頭を左右に振ってしまうほどスクリーンを所狭しと駆け回り、ハイスピードなアクションと人の域を超えないギリギリの辺りで超人的な動きをしてみせる様はそれまでのMCUのアクション、ひいてはハリウッド映画をアップデートしてみせる物だった。
こうした完成度の高さは、それまでアイアンマン頼りだったMCUが多様なキャラクターに開かれた瞬間であったし、何より監督のルッソ兄弟はその後のアベンジャーズの舵取りを任される運びになる。
シリーズの立て役者のルッソ兄弟は一旦は卒業したが、停滞しているシリーズの復活のために「アベンジャーズ」に帰って来るようだ。
それほどまでにMCUは現在追い込まれた状況が続いている。
昨年に至っては”外様”のデッドプール3のみが公開されていて2年間のブランクがある。
よって本作「ブレイブ・ニュー・ワールド」はMCUの若干の仕切り直しが行われている作品になっている。
”マルチバース・サーガ”に於いてとっ散らかった設定を一旦は整理してみせる。
そんな仕切り直しの担い手としてキャプテン・アメリカに白羽の矢が立ったのは、まあ必然とも言えるだろう。
それにより、これまでのシリーズのようなポリティカルサスペンスの要素はかなり薄く、シリーズの接ぎ木にのみ終始した貧乏臭い映画になってしまった。
最大のサプライズは本作が「インクレディブル・ハルク」の続編となっていることであろう。
17年ぶりの続編である。
日本では「アイアンマン」より先に公開されているので、日本人にとってはMCU第一作目は「インクレディブル・ハルク」なのだ。
一旦過去の遺産を清算しようと試みた結果が「インクレディブル・ハルク」を下敷きに伏線を回収することなのだろう。
「エターナルズ」のとっ散らかった結末の整理と、散々布石のみが置かれているX-メンの言及だ。
ひとまずはこれで「エターナルズ」の件と、ミュータントの本格的な布石としたのだろう。
アボミネーションは「ドクター・ストレンジ」、「シー・ハルク」で出したし、あとは”アイツ”だけだな…とりあえず回収しとこう…という下卑た打算がうかがえる。
やることやってクリアとしたいところだが、肝心の映画としてはあまりにも貧困な作品で正直見るに耐えないシーンが多い。
まずアクションシーンは本当にひどい。
印象的な”動き”は何一つない。
アクション以外のドラマ部分に関しては演出を放棄したとしか思えないほどに何も起こらない。
アップの切り返しのみの退屈な画面が続くだけでひたすらに眠くなる。
また脚本も杜撰で、レッドハルクがサプライズとして機能していないし、ヴィジュアルに新鮮さもない。
レッドハルクが出るまでが長いので待ちの時間が退屈に感じるのだ。
あとは国内の政治状況に配慮した右にも左にも角が立たない脚本はなんの刺激もない。
これなら「ファルコン&ウィンター・ソルジャー」の方がよっぽど気が利いてただろう。
特にひどいのは途中サムが車で襲撃されるシーンだ。
なんの予兆も溜めもなく襲撃されるシーンにて、この映画には何も起こらないことを確信した。
最後に言っておきたいのは、ディズニーが多様性への配慮をやめることを宣言したことだ。
政権が変わったのでやめますって、その程度の志でやっていたのか?
本気で世界を良くしようと考えたわけじゃなくて、その程度だったのか?
失望を禁じ得ない。
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