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ちいかわについて
※2022年9月5日にインスタに掲載した記事の転載
『なんか小さくてかわいいやつ』になってくらしたいとは、ストレス無く生きたいという願望の換言だが突きつけるテーマは、 『この世界は生きるに値するか』で、ある。
小さくてかわいいやつらは幾度となくその身体を変容させられる、もしくは自ら願って形を変えていく。
身体とは可能性を狭める牢獄だ。 小さい事、弱い事、顔のつくりによって本人の意思とは関係なく人生の可能性を失っていく。
人が人である為に構成される様々な要素、人とは違う顔、異なる言語、意識できない声、過去の記憶、そして未来の可能性(草薙素子)。
形作られた身体が人生を制約し続ける。 将来には無限の可能性などない。 同じ事が引き伸ばされて続いていくだけだ。
与えられた身体から出来る労働をやり続ける。
ちいかわ達は無力なので草むしりや、レモンにシールを貼る内職や、討伐では明らかに下級のモンスター相手にボロボロになるしか人生の可能性は限られていない。 一方で恵まれた身体を持つ人は金の稼げる討伐で大金を報酬で貰っている。
では身体を入れ替える連作、入れ替わりスロット編ではどうだったのか? 既に生まれた身体によって形成された精神よって入れ変わっても何も変わりはしないとモモンガに喝破された。
モモンガは可愛くなりたくバケモノから小さくてかわいい存在に変わったキャラだ。
そしてモモンガは終わりなき日常こそが最高だと幸せを享受する。
また同じように小さくてかわいい存在からバケモノに変化した『あの子』は他者への暴力の行使が幸せと定義付ける。
モモンガが終わりなき可愛らしい日常を送る一方で日常に閉じ込められループしたちいかわは可能性を奪われた事で失意の底に落ち鬱病になるが、ループから脱したちいかわを待ち受けるのは雨である。
台詞に頼らない作風である為、ループ脱出を天候でしめす見事な演出だ。
決して晴れやかでないちいかわの日常、過酷な現実、不安定な未来。
それらを象徴する雨を傘をさして一歩、また一歩と歩いていく。 そこには応援してくれる友達が居るから。
ストレス無く暮らしたいが現実はストレスまみれだ。
『この世界は生きるに値するか』
値するだろう、ちいかわにとっては。
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