英語圏のドラムンベースについて、ゆるく語る・ゆるく紹介する
2020年初頭あたりから2021年にかけて、コロナ禍に入って人々がゆるやかに家に篭るようになった時期、ぼくはいくつかのきっかけによりイギリスや英語圏のシーンで流行ってるDrum'n'Bassというジャンルに興味をもつようになった。
きっかけはいくつかあったけれど、まず第一に当時からサークルで関わりがあったtellurさんからHospital Recordsの話を聞いたこと、第二にunder_freaksというアニリミ・ベース系イベントのtwitch配信を見ていたら、rejectionさんがFox Stevenson - Bruises を流していて、これがかなり自分に刺さったこと、第三に当時やってたオンライン英会話の講師に大麻やってそうなイギリス人がいて、「Jump Upって知ってるか?」と教えてもらったこと。
UK Drum'n'Bass シーンは、ぼくの思っていたよりもけっこう規模感が大きくて、日本のFuture系のシーンとかよりも全然おおきい規模感だけど、EDMほどメジャーではなくといった感じで、大きめのパーティも開かれてる。僕の思った以上の発見があり、結構掘ってて楽しいシーンだった。
日本でもドラムンベース自体は受容されているけど、明らかに英語圏で親しまれているドラムンベースのかなり一部しかリファレンスになっていない。これには音ゲーのシーンにおけるArtcoreが日本でめっちゃウケているから、とか、EDMが激流行りしていた時代のドラムンベースまでしか受容されていないから、とか(PendulumとかMetrikとか1991とかSub Focusの系譜?)、そもそも近年のUK Drum'n'Bassが全然日本のトラックメイカー界隈に認知されていなくて、情報自体が最近のDubstepに出てくる展開の一部でとか、かなり間接的な形でしか知られていないから、といった理由があるように思える。
近年のDrum'n'Bassは明らかにハイファイ化が進んでいて、ミックス感もちゃんと進化してる。でも同時に、Jungleからの伝統を受け継いでいる音楽なので、サンプリングとしてのAmenbreak、thinkbreakのモチーフはもちろんたくさん使われている。サンプリングミュージックとなると、ハイファイ感が薄れがちだけど、近年のプラグインの進化とか音楽制作環境の進化も影響して、UK Drum'n'Bassはかなり独自の道を行っているように思える。ぼくは1,2年聴いてるだけにすぎないけれど、Jungleっぽいモチーフが強く押し出されたUK Drum'n'Bassのミックス感がかなり好きで、沢山のそういったタイプの音楽を聞くようになった。
UK Drum'n'Bassと言っても、サブジャンルのLiquidFunkやNeuroFunkとかまでを含めるとキリがないことは間違いないんだけれど、ぼくがここで語りたいと思っているのは、UK Drum'n'Bassの中でも人気の高い主要レーベル、ジャンル名で言ったらUK Drum'n'Bassとか Modern Drum'n'Bassと言われるような(ゆるやかにJump Upやベースミュージックとつながっている)ジャンルのことだ。ベースミュージックサイドにいるNoisiaとメジャー音楽サイドにいるNetskyなどのトラックメイカーの両面によって切り開かれたUKにある複数のゆるやかな音楽シーンをぼくは語りたい。
この文章をよんでもらうことで、読者が現代のUKドラムンベースシーンに足を踏み入れるキッカケになれば嬉しい。自分もまだまだ聴きはじめの人間で情報にミスがあるかもしれないけれど、その際はぜひ有識者の方から訂正をもらいたい。というのも、この文章を通じて、ドラムンベースが好きな人たちと繋がりたい!ひとり孤独にディグるだけじゃないところに行きたい!っていう気持ちがある。
現代のDrum'n'Bassで知っておきたいレーベル
本当はたくさん紹介したいところなんだけれども、自分もレーベル単位で聞いているのはごくわずかで、トップと呼ばれるいくつかのレーベルの作品は必ず追っている、と言った感じ。今回紹介しないけれども、VISION recordings, neosignal recordings, RAM recordings, Shogun Audio等 自分が聞いている他のレーベルもあるんだけど、やっぱりメインシーンですごい人気のあるレーベルを2つ紹介しておきたい。
Hospital Records
1996年からはじまり、UKドラムンベースシーンを語る上では欠かせない存在となっているレーベルだ。というか、このレーベルに所属しているアーティストがみんなドラムンベース界でビッグネームとされている人ばかり。僕の好みが出ちゃうけれど、有名な人をピックアップしよう。
[以下、画像はレーベルbandcampより引用]
Netsky
言わずと知れたドラムンベースの代表格とも言える方。10年くらい前にEDM・トランスが盛んだったシーンで億再生されるようなヒット曲を作った。
少し前にアルバム「Second Nature」を出したんだけど、めちゃくちゃに良かった。近年のオールドスクールなドラムンベースをハイファイにしてやり直す流れの一つとも言えるアルバムだと思う。
Grafix
現代のドラムンベースシーンに、ひと昔前のトランスとかEDMっぽい質感を落とし込んだアーティストは結構いるけど、その中でも1番ぼくが好きなテイストはこのGrafixさん。ドラムンベースは、名前の通りドラムとベースの二つの文脈があるわけだけど、この人はどちらかといえばアシッドなベースミュージックの文脈が強い。ベースミュージックを聴きなれている人がドラムンベースという二者のミクスチャに触れるには良いトラックメイカーだと思う。
最近出したアルバム「Half Life」はドラムンベースの枠を超えた実験的な展開の曲もあり面白いので聴いてみてほしい。
Camo & Krooked
このコンビは今まさにドラムンベースシーンでめちゃめちゃに売れている人。僕も大好き。Hospital Recordsっぽいドラム重視なビートにキャッチーなメロディをつけるのがとてもうまい。実際、多くのドラムン界隈におけるアンセムを作っているんだけど、最近はドラムンベースの「ベース」側の制作に強いMefjus(メフィアス)というトラックメイカーを招待して(彼の曲もマジ最高)、「Camo&Krooked&Mefjus」というトリオで曲を作ってる例が多い。この3人が集まると本当に超カッコいい曲ばっかりできる。実際にアンセムになった曲をいくつか紹介!3曲ともめちゃめちゃ聴いてる!
Makoto
Hospital Recordsに所属している唯一の日本人、そして、UK Drum'n'Bassシーンにいる数少ない日本人トラックメイカーの一人(最近、Mountainという方も進出してたのでチェック!)。
ここまでで紹介したGrafixやCamo&Krookedとはうってかわってドラムンベースのなかでも「ドラム」側がメインのトラックメイカー。Jungleっぽいというか、アーメンブレイクっぽいグルーブ感のドラムに、とにかくエモくてジャズ感クラッシック感のあるメロディとコードが乗る。本当に大好きなトラックメイカーの一人。出る曲すべてがエモくて凄い。
最近出たアルバム超いいので必聴!
ここまで紹介したトラックメイカーの特色を見てもわかるけど、ドラムンベースはベースミュージックの方面に伸びる音楽もあれば、エモくてキャッチーな聴きやすい音楽にもなる。とにかく幅が他のジャンルと比べてもすごく広い。
ほかにもHospital RecordsにはDegsとかDanny ByrdとかUrbandownとかFred VとかFlava Dとか…とにかくめっちゃいいアーティストがいっぱいで全員紹介したいんだけど、キリがなくなってしまうのでここら辺で切り上げる。特にDegsとかMetrikは紹介してないけどめっちゃ有名だと思う。
次に、ぼくが紹介したいもう一つのレーベルをあげよう。
Critical Music
UKのベースミュージックサイドのドラムンベースを牽引しているレーベルの一つがCritical Musicであると思う。レーベルに所属してるアーティストだけでなく、新進気鋭のアーティストでいま注目株のIMANUやThe Caracal Project, Buunshinもここから楽曲を出している。彼らのうちIMANUとかはNoisiaの運営してるレーベル「Vision Recordings」に所属しているし、Noisiaのレーベルから立ち上がってる音楽シーンともゆるやかに繋がってるレーベルだと思う。
ぼくの好きな所属アーティストを紹介する前に、最近出たレーベルのアルバムについて触れておきたい。
レーベル20周年を記念して、レーベル所属のトラックメイカーや、レーベルにゆかりのあるトラックメイカーが参加したコンピレーションアルバム。どの曲もめちゃめちゃいい。ドラムンベースの枠を離れつつもドラムンベースを軸に活動をしている若手の楽曲から、ベースミュージック然としたドラムンベースまで、良曲が詰まっている。
ぼくの大好きなアーティストの一人であるBuunshinという人が、ついに最近にアルバムをリリースした。自分はどの曲もすごい聴き込んでしまってるからすんなり感想がでてこないんだけど、とにかくドラムンベースの新しい側面が切り出されてる。必聴!
Critical Musicの特徴としてぼくがやっぱりおもってしまうのは「ジャケットがめちゃくちゃカッコいい」ということ。最近出たEnei - No Manとかめちゃくちゃセンスを感じる。
では所属アーティストを紹介しよう
(以下画像はレーベルホームページより引用)
Enei
巨大なベースでフロアブチ上がること間違いなしな楽曲を作っているトラックメイカーで、Critical Musicの顔とも言えるトラックメイカーの1人。クラシックなベース基調のドラムンベースをどこか逸脱しているんだけど、それでもなおドラムンベースとして聴ける。とにかくフロアが盛り上がりそうな曲が多い。近年に出した Enei - Sinking VIPがとにかくバカ受けして、最近はSinkingっぽい楽曲をめっちゃリリースしてるのも良い。「ドラムンなのに4つ打ち!?!?」となって、バカでかいベースに君もどハマりしちゃおう👌
Mefjus
前述したCamo&Krookedとトリオを組んでいるドラムンベースのスペシャリスト。ドラムンライクなニューロベースが特徴的。たくさん彼の曲を聴いてるけど、どれもメロディがないのに盛り上がるサウンド感。ちなみにCamo&KrookedとMefjusは両者ともNoisiaに買われていて、Noisiaのレーベル VISION Recordingsにも所属している。Noisiaというニューロファンクの巨匠のもとこの3人の作ってる曲はやっぱりかっこいい!
Critical Musicからの楽曲ではないけど、彼のアルバムをいくつか紹介しよう。
他にも色々アーティストはいるんだけど、前述の2者ほど聴き込んでいる人がいないから、他のアーティストは軽く紹介するだけにとどめたい。
Halogenix
時にメロディアス、ジャングル色のつよいドラムンサウンドとCritical Musicらしいベースサウンドが良いミクスチャになってて好きな曲がけっこうある!
Particle
この人のジャングル+ドラムンの曲がめっちゃ好き。
ここでは大きく触れないが、BouやSerumなど、UK Drum'n'Bassにおける重要なアーティストはCritical Musicから多く曲を出していることは間違いない。ここらへんも聞いておくとベース重視なドラムンベースのシーンが理解できるんじゃないだろうか。
書き残していること
他にも色々なことを書きたかったんだけれど、もう少し聴き込んだらより理解度の高い状態で書ける気がする。ということで、ここらへんで語るのを一度止めようと思う。また知識が積まれていったら続編を書いておきたい。ぜひドラムンベース有識者の方からのコメントをお待ちしています!
とは言っても、UKFのこと、触れていないレーベルのこと、Monstercatから出てるドラムンベースのこと、KovenとかFox Stevensonとか、文中では意図的に無視されている1991とかMetrikのスネアがでかいタイプのドラムンベースの話をぼくはここで明らかに書き残してしまってる。そちらもまた結構大きなシーンであることは間違いない。そちらもおいおいゆるく語っていきたい。