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甘くない生活

協力隊募集要項には「農ある暮らしをしたい人」とあり、豊かな山の資源を活かして自活する方法として、農家民泊・農作物の加工や販売などを考えていた私。しかし、待っていたのは派遣社員・農業Ver.のような生活だった。毎日、畑と自宅の往復で終わってしまう毎日……。近所のおじいちゃんやおばあちゃんとの交流風景は夢の世界の話なのだろうか?

自家用の移動手段(車)がない、地元の人を紹介してくれたり、繋いでくれるような存在がいない、平地がほぼ皆無・道路が狭すぎて公用車の運転が怖すぎる(この時、まさかのペーパードライバー)等、早速訪れる試練の数々。今までの人生で何回か死んでいたはずなのだが、生命力は強いようで、逆境には強いタイプの自分でもなかなかに手ごわい環境である。

何より心が折れたのが、さっそく買い物難民になってしまったこと。週に1度、貴重な休日を半分以上費やして、1時間に1本来るか来ないかのローカル電車でスーパーに赴き、まとめ買いした1週間分の食料品を背負い、とぼとぼと山道を歩いて帰路につくのがルーティンと化す。「これは、結構とんでもないところに来てしまったかもしれない……」

日本各地を住み込みで放浪しまくってきた自分でも、少しづつ弱気になっていくのがわかる。「都会生活なんてもう絶対にまっぴら!ど田舎・超山奥暮らし最高!自給生活の実現!」と息巻いていたちょっと前の自分が、少しづつ勢いを失っていくようだった。秘境暮らしの現実は、そう甘くなかった。春なのに、心は落ち込むばかり。景色が美しいだけでは救われない。

この頃は、ただひたすら満開の桜に癒されていたなあ。

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