加点効率がいいトリックってそんなにない~その3~
前回、前々回の続きになります。
前々回
前回
もしまだ読んでない方は先に前回までの記事を読むことをお勧めします。
今回はピックアップした最後の選手、ナンバ選手を見ていきます。
※僕自身は1度もシャドージャッジの経験が無いので、一個人の見解になります。実際の採点と異なる可能性は大いにあります。
今回の着眼点(おさらい)
今回フィーチャーする選手は
EJ優勝:コバヤシ トウヤ選手(前々回の記事)
SJ優勝:マエダ ヤスタカ選手(前回の記事)
WJ優勝:ナンバ ツカサ選手
以上の3名です。
3名それぞれの決勝の演技を次の着眼点で見ていきます。
選んでいるトリックの系統
エレメント(トリックの要素)数
クリッカー平均点とエレメント数の比較
加点されている・加点されてそうなトリック
選んでいるトリックの系統は、シンプルにどんなトリックをやっているのか見ていきます。
ここで言うエレメント数は、加点されているかどうかは一旦考えずに、ストリングやヨーヨーを操作しているものを全部エレメントとして数えます。ただし、トラピーズ等明らかにかぶっているものは数えません。
最終的にトリックの系統やエレメント数と公開されているクリッカー平均点を比較して、加点されてそうなトリック、されてなさそうなトリックを整理して、JYYFの大会だとどういう考え方で評価しているかを考察します。
スコアシートはそのまま掲載出来ないので、出典のリンクとクリッカー平均点を記載していきます。
最後のナンバ選手を見ていきます。
WJ優勝:ナンバツカサ選手
独自路線のトリックをバンバン決めるナンバ選手
トリックの系統として前回までの2選手とは打って変わって、レール系、縦コン、ホリゾンタルが一切無く、味変くらいの変則ホップがあって、他は殆どスラックをメインに据えています。
成功してるエレメントは175くらいと数えました。
正直スラックの部分はどこを切れ目とするか難しかったので、ブレがあると思ってます。
ヨーヨーを持っている時間は3~4秒しかないので、絶えずヨーヨーを動かし続けてますね。
そんなナンバ選手のクリッカー平均点は126.5点でした。
コバヤシ選手と同じくらいの点数ですがミス数が10程度多いので、ミスの減点とミスしなかったときにやっていたであろうトリックを考えれば、ナンバ選手がトップの加点がされてると言えます。
レールコンボ、縦コン、ホリゾンタル、ラセレーション系がほぼないスラック主体の構成で今年トップの加点ですから、スラック系が評価されにくいなんてことはないでしょう。
今回のナンバ選手の動画ではクリッカーの音が聞こえる箇所はありますが、肝心のスラック系だったり独自のエレメント部分が殆ど聞こえないので、前回までとは異なる視点で見ていきます。
1度大きいグリトラを作って解いた後のコンボ
右手側で小さいグリトラを作るトリックに注目します。
小さいグリトラを作った時は勿論クリッカーの音がするので加点されてますが、グリトラを回転させて解いてトラピーズにするところ。
どう考えてもプラスチックウィップとかよりは難しいと思うんですが、クリッカーの音がしません。
ホップ系を見た時もそうだったんですが、どうやらマウントを解除する動作というのは、評価されていないようです。
また、スラック系のトリックが決まった後、クリッカーの音がまばらに聞こえてきます。
一方で、後半のラセレーションからトラピーズになるトリックだったり、ミスの時はまとまって聞こえてきます。
つまりは、スラック系のトリックが評価されないということは無いけど、点数やどのタイミングで加点するかがジャッジ間でまちまちだと言えるでしょう。
裏を返せば、明確な基準がないことで幅広いトリックが加点対象に出来るとも言えますが、やはり初見のトリックに関してジャッジは都度悩みながらクリッカーを押しているんでしょう。
まとめ
少し長くなりますが、まとめまで書ききってしまいます。
3回に分けて1Aの選手3名の演技を題材にして、トップ選手がどんなトリックを選択しているか、それがJYYFの大会ルールでどう評価されているかを考察していきました。
今回の考察を通して僕が結論としてあげたいのは次の3つ
やるだけで効率が良いトリックなんてない。
一般的に難易度が高いと言われるトリックは加点される。
ジャッジ間の差や評価基準のブレはまだ大きい
1つ目
ホリゾンタルだから加点されるとか、スラック系だから加点されにくいとかそんなことはないんです。強いてレールコンボ等の利点を挙げるなら、スピードを出しやすいので詰め込み易いという点です。
その利点を享受するにはそれなりのスピードとバリエーションが必要になります。
スピードを出す、それすなわちスピードに合った楽曲を選択する必要も出てくるので、それ以外のコンボのスピードコントロールや楽曲選択も難しくなります。
楽曲についてはこの記事で何となく書いています。
2つ目
難しかったらそれ相応の加点がされます。
これはナンバ選手が評価されているので紛れもない事実です。
ただし、綺麗に実施するのが難しいトリックという訳ではない点に注意が必要です。
例えば、僕がナンバ選手がやっているコンボを大会でいくら汚くやっても、ミスがなければ同じだけ加点されます。
トリックの淀みなさはクリッカーに影響しないので、綺麗にやるのが難しい、スピード出すのが難しいようなトリックは高い加点をクリッカーで得られません。
ここが演技の見た目と加点が乖離している印象が生まれる原因でしょう。
3つ目
現在のJYYFの公式ジャッジは殆ど10年以上ジャッジを続けている人ばかりですが、大会の場で評価しきれていない部分は実際あるでしょう。
現在公式ジャッジには、2Aだとタカミユウキ選手、4Aだとイワクラレイ氏とトップ選手が在籍しているので、これらの部門に関しては充分ノウハウがあると思います。
1Aではテラダマサヒロ選手が在籍されていますが、プレイスタイル的にカバーしきれていない部分はあるのかもしれません。それに、必ずテラダ選手がジャッジに居るとは限らないので、1Aでも評価のブレは出そうです。
また、昨年から今年にかけて公式ジャッジから、1Aだとトクブチアキトシ選手、オオツカユウスケ氏、3Aだとヒガシタイイチロウ氏、タチバナヤスキ氏らを始めとして多くのジャッジの登録が無くなりました。
トップ選手が減ってしまった部門のジャッジングについては、評価のブレが大きくなっている可能性があります。
もう一回続きます。
今回で”加点効率”というテーマの考察は一旦終わりです。
ただ、この話題について個人的な想いがあるので、それについてもう1つの記事として書いていきます。
なんならこれまでの3回を読まなくてもいいので、次の記事だけでも読んで欲しいです。
競技シーンに出ている人からしたら当たり前かもしれない内容ですが、ちゃんと発信されてるのを見たことがないものです。
次回→加点効率との向き合い方
よろしくお願いします。