重心意識のウソ
高岡英夫氏は「究極の身体」などの著書で体の重心意識を重視しています。
「一流のアスリートは重心をミリ単位かもっと精密に重心をコントロールしている」というようなことを書いていたと思います。
立つときの重心の位置については「内踝の直下ウナに重心が来るように立つと脱力する」と述べています。
ウナを刺激すると姿勢が安定する効果があるため、本当のように聞こえます。
実際にウナに重心が来るように姿勢を調整してみると足の内側、踵側に重心が偏るために緊張が生じます。
立つときの本質は「骨で立つ」ということで、地面に触れていない「ウナ」に重心を意識させるというのはおかしいと言わざるを得ません。
ウナを刺激したら姿勢が安定する、というのは実は踵骨の前部を刺激していると考えられます。
踵側に重心があると踵骨の真ん中で地面に触れますが、前側に重心を移していくと踵骨の前側で地面に触れることになります。
ここを刺激すると骨を意識しやすくなり、骨で立つことができるようになります。
重心を意識したから姿勢が安定したのではなくて、骨を意識化するポイントを刺激していたのです。
正しい重心の位置を意識できればよいのかというと、残念ながら重心意識自体が緊張を生じさせ、身体を高岡氏の言う「スティフ(硬い)」状態にしてしまいます。
根づきができた方は分かると思いますが、脱力しているときは体重が足裏全体に分散していて重心の意識がありません。
動いている時もこの状態を続けているだけで重心を意識しているわけではないのです。
身体感覚を基準に検証すると有名な人が言っているからといって正しいとは限らないことが分かります。
根づきができていないと理解しにくいと思いますので、ぜひ根づきを体感していただきたいと思います。