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いちばんうまくできるのは、倒れたままでいることです byカフカ


「絶望名言」という本を読んだ。

飛鳥新社



著者の頭木弘樹さんは若い頃に突然難病にかかり、治る見込みも見えず、無能感を味わい、人生が終わったかのように感じて過ごした寝たきりの日々を過ごされた。そんなとき心の支えとなったのは、希望あふれる名言ではなく絶望の名言だったということで絶望名言を紹介していて、NHKのラジオ深夜便で人気番組だったそう。

この中に私にとって衝撃的な名言があった。
『変身』で有名な作家、フランツ・カフカの言葉だ。

将来にむかって歩くことは、ぼくにはできません。

将来にむかってつまずくこと、これはできます。

いちばんうまくできるのは、倒れたままでいることです。

(カフカの絶望名言・フェリーツェへの手紙)

!!! 

いちばんうまくできることが、倒れたままでいることってどーなのよ??

七転び八起きということばがあるように、私の中では倒れたら立ち上がるのは当然だと思ってきた。じゃないとこの先を生きていけないのではないかと。倒れても立ち上がることを繰り返すことで、人は強くなるのだと成功者の言葉として教わってきたこともある。

でもカフカは、
立ち上がるなんてそんなすごいことできる人がいるんですか?その人は天才ですか?? ボクは無理ですので。。といった感じだ。

これを読んだとき、これだけ堂々としたボクだめ宣言ができるってすごいなと思ったし、正直それができるって羨ましいなとも思った。

私は、つまずくことも恥ずかしいし、立ち上がれないと弱い人間だと思われてしまうから、ついつい強がってつまずいても何もなかったかのように振る舞ってしまう。
そしてそれがときに自分へのプレッシャーとなって苦しめられる。



この夏、パリオリンピックで歓喜と絶望の相対する姿を目の当たりにした。

目標に届かなかった選手の試合直後のインタビューで、切り替えて次にむけて前向きなコメントをする選手は多い中、競泳の池江璃花子選手が準決勝敗退となったときのコメントが印象的だった。
(↓正確ではないけれど、こんな感じのことだったと思う)

「これまでの努力は何だったんだろうと思うし、頑張ってきた意味はあったのかと思っちゃう。」
「自分なりに一生懸命やってきたつもりだったけど何も変わってなかった。本当にいつまで苦しまなければいけないんだろう。」

池江選手の素直な感情がそのまま表れているコメントで、これも絶望名言だと思った。
一生懸命やってきたからこそ、今までやってきた自分を信じられなくなって、どうすればいいのかわからないという感じだろう。

こういう絶望名言はしっかりことばとして発しておくことが大事だなと思う。ついついネガティブ感情を押し殺して前向き発言をしようとしがちだけれど、それだと本当の自分の感情が置いてきぼりになってしまう。

また、ポジティブが善でネガティブが悪と捉えられがちだけどそれは違う。全ては陰陽で表裏一体だからポジティブもネガティブあってのものだし、ネガティブもポジティブあってのもの。
ポジティブな自分もいいけれど、ネガティブな感情を感じきることで、ポジテイブな自分が出てくることもあるからどちらも大事。

そしてどちらのことばも自分の支えとなり、また誰かの心の支えにもなり得る。

強がらなくていい。ありのままの自分でいよう。

カフカのことばが私を緩め、そう思わせてくれた。


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