見出し画像

仮想通貨のエアドロは危険?

― エアドロップの仕組みと、実はちょっとだけこわい話 ―

夕方のリビングは、少し早めに仕事を終えた妻が、スマホを片手にうつむき加減でX(旧Twitter)を眺めていた。
小学六年生の息子・蓮(れん)は例によってYouTubeでゲーム実況を見ていたが、妻が突然「ねえ、これすごいわよ」と声をあげたので、僕も思わず手を止める。

「また仮想通貨の新しい“あれ”を見つけたの?」と、なんとなく察する。
妻は頷いて、「エアドロップっていうのが話題になってるの。『ただで暗号資産を配ってる』なんて、ほんとにあるの?」と半信半疑だ。

実は僕は、ここ数年で仮想通貨やNFT関連の情報をちょっとだけ収集していて、エアドロップについても馴染みがある。とはいえ、実体験は少なく、いくつか拾った程度。なので妻がこうして興味を示してくれるのは少し意外だ。

「ただより高いものはない、って言うけど、ほんとに無償で配るのかしら。しかも……ほら、この投稿によると、去年のHyperliquidっていうプロジェクトのエアドロは、1アドレスあたり平均100万円ももらえたらしいわよ!」
妻の目はキラリと輝く。蓮までもが「うわ、100万円! そんなのぼくにも配ってくれないかな!」と身を乗り出す。

どうやら妻は「Xで見つけたアカウントが、Hyperliquidの配布実績を例に『こんなに得することもある』と宣伝していたらしい」。蓮は純粋に「100万円もらえたらゲームもおやつも買い放題!」と瞳を輝かせているけれど、妻はそれほど単純ではないらしく、「でもやっぱり怪しいのよね?」と僕の顔をのぞき込む。

「エアドロップは、ICOやIEO前の宣伝や、ブロックチェーンのキャンペーンで“暗号資産を無料配布”する仕組みだよ」と、僕はとりあえず説明を始めた。
「へえ、よく分からないけど本当にタダなの? それで儲けられるならみんなやるだろうに…」と妻はまだ疑わしげだ。
蓮は蓮で「タダでもらえるなら、やるしかないじゃん!」と大興奮。実際、Hyperliquidの例みたいに爆発的に伸びるトークンも一部にはあるから、夢がないわけじゃない。

それでも、僕は軽く苦笑いしながら、蓮と妻の両方をチラリと見た。
「ねえ、エアドロップってそもそもなんで無償で配るか知ってる? メリットや注意点もあるんだ。全部聞いたら“そんなに甘くないかも”って思うかもしれないけど……興味ある?」

妻はスマホを置き、ちょっと正座をするような姿勢になった。「いいわよ、怪しむだけじゃ前に進まないし、Hyperliquidみたいな事例も本当にあるなら、話をちゃんと聞かないとね」と本腰を入れている。
こうして、僕ら家族のささやかなエアドロップ講義が始まった。


まず、妻の最大の疑問は「どうして仮想通貨やトークンをタダで配るの?」という点だ。僕は蓮にも分かるように、なるべく噛み砕いて説明することにする。

「エアドロップって言うのは、新しい暗号資産やプロジェクトがユーザーを増やすために一種のサンプル配布をするんだよ。たとえば会社が新商品を無料で試供品として配るような感覚。配る側はそのトークンを知ってもらいたいし、使ってもらいたい。だから一部を無償配布するんだ」

「まあ、**ICO(新規コインの販売)やIEO(取引所を介した販売)**をやる前に宣伝したり、既存ブロックチェーンがキャンペーンで配ったり、あるいはハードフォークで新しいコインが生まれたときに既存ホルダーに配る場合もあるわけね」と付け加えると、妻はメモを取るようにうなずいている。
蓮は「なんか、お菓子の試食コーナーみたいだね」と、的を射たコメントをする。そう、まさにそんな感じだ。

Hyperliquidみたいに、1アドレスで平均100万円ってのはさすがに破格だけど、そういう大当たり案件が稀にあるから、みんなエアドロに目がないんだろうね」と僕が言うと、妻は目を丸くする。「ほんとにそんなのあるんだ…」


「メリットとしては、やっぱり**“無料で暗号資産がもらえる”** ことが大きいよね。お金を出さなくても、そのプロジェクトに参加できる。もし将来性があってトークンが上場し、値上がりすれば大きく儲かるかもしれない」

「Hyperliquidがまさにそうだったのかしらね? 1アドレス平均100万円って、夢みたい」

妻は少し憧れの眼差しでつぶやく。蓮も「やりたい!」と声を上げるが、当然リスクもある。


「ただ、詐欺まがいのプロジェクトも少なくない。特にSNSでやけに煽るアカウントとか、リンク先が怪しいサイトとかね。無料につられてウォレットの秘密鍵を入力しろって言われたり、個人情報を求められたりすると危険。もしウォレットやパスワードを抜かれたら最悪だよ」

「怖いわね……しかも日本語じゃない案件だと余計判断が難しいし」と妻が緊張感をにじませる。
僕は彼女を見やり、「そう、だから闇雲に飛びついちゃだめ。必ず公式サイトとか大手の情報源で安全性を確認する必要がある。夢を見すぎない方がいいかもね」と念を押す。

「なるほど…ただでさえ仮想通貨は難しいのに、エアドロップはさらにややこしいわけだ」と妻はうなずく。蓮は「なんかゲームのガチャみたいに当たり外れがあるんだね」と微妙に納得している。


ここまで話を聞いて、妻は少し悩ましげな表情で僕を見つめる。「結局、楽して稼げそうだけど、リスクもあるんだよね? どうすればいいんだろう?」

蓮は「ただでもらって、大当たりすればお金持ちじゃん!」と無邪気な興奮を見せるが、妻は「でも詐欺かもしれないし…」とブレーキをかける。その狭間で、僕が一つの結論を出す。

慎重に調べて大丈夫そうなら、参加してもいいと思うよ。 ただ、闇雲にSNSのリンクを踏むのは危険だから、『信頼している人からの情報だったり公式サイトや公認情報をしっかり確認する』のが必須だね。長期保有してみてもいいし、すぐ売るのも自由だけど、“無償配布”だからといって何も考えずに飛びつくと損をするかも。」

妻は大きく息をついて、「…たしかに、先にあなたから話を聞いてなかったら、軽率に手を出してたかもね」と苦笑いする。
蓮は「じゃあ、どうするの? やってみる?」とワクワクした声。妻は「うーん、とりあえず興味はあるけど、ちょっと敷居が高いな。会員登録とか英語サイトとかあるでしょ?」とまだ尻込みしている。

「まぁ、**“ただより高いものはない”って言葉があるように、“エアドロップなら何でも得”**ってわけでもない。でも一方で、1アドレスで100万円クラスの大化け事例もあるから、無視しきれないのも事実だよね。やっぱり要は情報収集とリスク管理だよ」

僕がそうまとめると、妻はスマホを少し握りしめ、「よし、気になる案件があったら、ちゃんとあなたに聞いてからにするわ」と言ってくれる。どうやら完全には諦めていないらしい。
蓮は「パパ、もし成功したらゲームもおやつも買ってね!」とハシャいでいるが、僕は苦笑い。

「まぁね、でも可能性はゼロじゃないってことでしょ? …ちょっとだけ夢を見てもいいかな」と妻が微笑む。
その静かな笑みに、「エアドロップにはメリットも夢もある。でも怪しさもある」と二人が同時に感じ取っているようで、蓮は「怪しそうだけど夢があるって、変なの」と不思議そうにこぼす。

こうして、僕ら一家のエアドロップ談義は、結局のところ「安全第一で、情報収集してから検討する」という結論で一応の幕を下ろした。無料で仮想通貨がもらえるなんて、ある意味壮大な宝くじのようなもの。運が良ければ当たり案件の配布に巡り合えるかもしれないし、逆に詐欺の標的になって失うものもあるかもしれない。僕のSNSでリスクの低そうなエアドロップは紹介していきます。

いいなと思ったら応援しよう!