手持ち香水へのラブレター

幼い頃から良い香りのものが好きだった。
ずっと香り付きのねり消しをクンクン嗅いでいたし、金木犀の存在を知る前から、秋になると発生するこの甘い香りはどこから来るんだろう…とそこらじゅう嗅ぎ回った。結果小さくてオレンジの花を発見し、家に何粒か持って帰ったがほぼ無臭なうえにすぐ萎れてしまったのでがっかりしたのを覚えている。
鼻炎持ちにも関わらず嗅いでばかりの子供だった。(文章にすると少し不気味)

さて香水。可愛いプラスチックのボトルに入った、ロールオンタイプで青いキラキラつきの子供用のコロンみたいなものをおねだりして買ってもらったのが私と香水類の出会いだと思う。

どうしても紹介したくて必死で探したのに出てこなかった。名前知ってるよって人はそっと教えてください。


ずっと欲しかったそれは手首に塗るとちょっぴり青いラメがついて、シャボンの(今思うと)ちょっぴりチープでパウダリーな香りがした。
いつもこっそり学童に持っていって、時々取り出してはちょっぴり手首に塗ってみるのが好きだった。
母はかなり鼻が利くタチだ。香りに敏感な彼女が香水をつけているのをほとんど見たことがないので、今考えると幼い頃からの香りものへの執着は不思議。

今大人になった私ももれなく香りものが好きだ。香水はお守りのような役割を果たす時がある。なしで出かけるとすっぴんで外出するような心細さがある。
会社にお気に入りの香水をつけて行き、嫌なことがあったら自分の手首をスンスン嗅いで心を落ち着けるのだ。子供の頃からやっていることは同じ。三つ子の魂百まで、ずっとなにか嗅いでいる人生なんだろうな。(一度付き合いで行ったキャバクラの女の子の香水を当てて、「警察犬みたいやな」と言われたことがある。警察犬みたいな女、が褒め言葉かはわからない)

今の私は14本の香水と共に暮らしている。

錚々たるメンツ!
家に置く香水は15本までと決めており、1本の余裕を残している。

もっと多かった時ももっと少なかった時もある。でも私は15本以上の香水を愛しきれない。これくらいが過不足ないベストな量です。
よって買い足すたびに使わなくなったものを人にあげたり、メルカリで売ったりしてきたのでこれは精鋭と言える。
手が伸びる頻度は違えど皆使用場面が明確で思い入れのある香水ばかりだ。
今回はこの中でも特に気に入っているものを3本紹介したい。

Tocca  Stella

瓶のビジュアルは二の次だと思っているけれど、可愛いとやはり嬉しい


最初はやはりこれ!初めて自分のお金で買った香水。
初っ端からファッションブランドが出している香水である。toccaはフェミニンでキュートな花柄の洋服を多く出しているイメージで、ここの服はまだ買ったことがない。
公式ページには以下のように書いてある。

瞬く間に広がるブラッドオレンジに潜むスパイシーなリリーが、フリージアとオーキッド、ムスクを誘う戯れの恋の香り。美しく気まぐれなイタリア娘のように、フレッシュでありながらセンシュアルな印象を与えます。

https://tocca-japan.com/products/pmtwsm0011-101

詩的で大袈裟だな…と思いながらも柑橘系のものが欲しかったので、一応試しに手首につけてみたときの感動は忘れられない。

パッと弾けるフレッシュなオレンジに、華やかでビターなオレンジピールの香り!
普通の柑橘系の香水と違って皮の香りを感じるのが嬉しい。
そして彼女(彼女?でも女の子の名前がついてるからつい) が本当にすごいのはミドルからラストにかけてガラッと印象が変わるところだ。
ミドルは引用の通りにしっとりした花の香りになって、ラストは肌馴染みがよくてほどよくセクシーなムスクに落ち着く。
日中出かける前につければ、フレッシュで明るいオレンジの香りで家を出て、陽が沈むとともに大人っぽいムスクの香りに変化するというワケ!素敵でしょう!

恋の香りかどうかはわからないが、ステラは私が持つ中で一番香りの変遷がドラマチックな香水だ。でもムスクが比較的軽やか且つあまり遠くまで香らないので、トータルの印象はイヤミがなく健康的なのがよいところ。
これは一日中楽しみな予定がある日か、人と接近する機会がある日につけたい。
好きすぎてリピートした2本目もそろそろ終わりそう。廃盤にならないでください。


Fueguia  Biblioteca de babel

私のは2019年あたりのIII ーXVIのバージョン。
パッケージもこれでなく旧モデルのもの。


フエギアでの購買体験は他では味わえない雰囲気がある。あんな厳かな空間で「図書館」の名前がついた香水なんて、本好きからしたら買うなという方が難しい話だ。
珍しく名前に惹かれて手に取った香水だが、結果的に私にウッド調の香水への扉を開いた形になった。

ひと嗅ぎすると目の前にふるくて静かな図書館が広がった気がした。
シダーウッドと軽めのヒノキ(他のウッド系の渋い香りもするが、私には何なのかわからない)、完全に年季の入った本棚の香りだ。
ミドルは落ち着いてふわふわと心地よい木の香りに変わり、ラストは煙たい感じで少し甘いシナモンが強くなる。
図書館でシナモンの香りなんて嗅いだことがないのに、これがまさしく図書館の香りだ!!!と思うのはなぜなんだろう。これを嗅ぐと、身体が勝手に本棚にぎっしり詰まった古い本の匂いまで感じだして陶然とする。
これは美術館や博物館に行く時につけていることが多い。あと史実に基づいた映画を観に行くとき。もしくは茶やボルドーなどの渋めのトーンの服を着ているときにつけたい。
2019年版が一番シナモンが効いて良い香りなので復刻させてください。


LABORATORIO OLFATTIVO   Decou-Vert

大好き…薬瓶のようなそっけなさも愛おしい。
でもスプレーキャップが外れないのでアトマイザー に移しにくい。どうにかなりませんか?


おそらく季節問わず一番つけているのはこれ!
よく私と会っている人間なら、これを嗅いだら「かもちゃんの匂いがする!」と言うことだろう。

これが本当に好きな香り!すごいの!!
花の香りを模した香水はごまんとあるけれど、これは本当に花の茎や葉の、生命力を感じる青っぽい香りがする。
もちろん爽やかで綺麗なスズラン(自分ではスズランと分からなかったけれど、公式ページに書いてあった)の花弁の香りもして、春から初夏にかけての喜びを感じてうっとりしてしまう。
珍しくこれはトップノートが一番好き。
公式の写真もわかってるね!!白くて清潔感のある花に青々としたグリーン!この香水の持つ良さを十分に表している気がする。
ミドルからラストにかけて体温で少し甘さが出て、パウダリーなムスクと花粉の香りに着地する。

言うなれば植物としての花を丸ごと楽しめる香水だ。初夏の花壇にしゃがんだみたいでたのしい。つけるといつも新鮮な気分になる。
いつもいつもつけているけれど強いていうなら初夏、白いブラウスやパリッとしたスカートなど、清潔感があってフェミニンな服装に合わせたい。
これを読んで欲しくなったでしょう。日本ではNOSE SHOPに売っています。いろんな国のニッチブランドの香水が試せる、夢みたいな店。
本当に大好きなので本当に本当に廃盤にならないでください…


以上3本が私の愛してやまない香水。
もちろん他にもたくさんお気に入りはいる。
楽しい夏のお出かけにつけていくココナツのもの、秋じゅうつけている金木犀のもの、かわい子ぶりたいときにつける透明感のあるジャスミン…
でも無人島に3本だけ持っていけると言われたらこの3本になる。

こう見ると私はライトな植物か果物〜ムスクの香り変遷に弱い。
というかドラマチックな香りの変化に弱い。ドラマが好きなのは人生と一緒!
どれも本当に大好きなので、ずっと買い続けられるといい。マジで廃盤にしないでください!
今回はラブレター(オタク語り)なので特に面白い話はない。皆も好きなものの話をするときはこんなもんでいいんだよ!おしまい。

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