帝王

覇王丸は帝王なので、母の腹を切開して生まれました。
普通に逆子で居続けたので予定帝王切開。母親の骨盤でタップダンスしていた。


当初スケジュール立てられやすいかと無痛分娩希望していたが、結果的に予定帝王切開が1番スケジュール立てやすかった。
私の親族は手術するのも送り出すのも慣れてる。どれくらい慣れているかというと、全員手術痕を持っている。すごいね。
なので手術をそこまで不安がっていなかったが、パートナーは私より不安でガタついていた。

そんなこんなを記録として残す。


そもそも妊婦期間が言うほど辛くなかった。
頻尿とか骨盤が痛いとかがほぼなかった。というか、妊婦の不調が全然なかったのだ。
唯一でたのは渋谷のオフィスに出社していた時だけ。全てが混ざった匂いと高層階の揺れが気持ち悪すぎて、家に帰ると何も食えんくらいの酔いでやられた。
本当に香料が混ざりまくる密室はやべぇ。以前から嫌いな匂いだったので妊婦の五感で不快感が増した。やはり職場は不健康。
毎月母健連絡カードに2,000円払って在宅にしていた。

悪阻はそれ以外はなんともなかった。電車もバスも飛行機も船も全く問題なかった。実は妊婦になる前になんやかんやで父の散骨を計画していたのだ。覇王丸は粉々の祖父に会っている。安定期に湾の雨風で揺れる船をめっちゃ楽しんだ。ロールケーキは海に浮かびます。散骨の話はこれくらいにして。

妊婦時、逆子も苦ではなかった。
ぐりんぐりん動き回っていたので逆子から戻ったり真横になったりを繰り返していた覇王丸。臨月に近づいた27週目に正式に逆子と診断された。
その時のエコーにしっかりと目線を合わせて笑っていた覇王丸。手術当日に逆子から戻って家に帰される未来を笑っていると思っていたが、最良の判断に笑っていたのかもしれない。
少しハラハラしていた事は、逆子診断されたあとも左右に何度も動きまくっていたので、へその緒巻きついてないかな〜くらいだった。
覇王丸は、緒さばきが上手かった。


結論から言うと、予定帝王切開だったからパートナーも実母も生まれたての覇王丸に直接会うことが出来た。
総合病院ゆえかコロナなど感染症対策や連れ去り、無断撮影など数々の犯罪防止の為に、限られた時間のみ父親だけが立ち会い対面(抱っこが出来るらしい)できる形式だった。出産後は赤子は病棟から一切出られない。
昭和平成のガラス越しにズラッと並んだ赤子をみる絵図はない。
多様性云々と言われているが、子の安全を考えると最良だなと思う。ただひとり親の方も実母は対面出来ない部分は改善してほしいものだ。

覇王丸に直接会うには、帝王切開の手術室から病棟に移動する瞬間に出入口で張り込むしかなかった。自然分娩だと手術室に行く必要もないので、実母は絶対対面できなかったのだ。
そしてパートナーも夕方から夜に仕事があり、立ち会い対面できる時間には出かけなくてはならなかった。が、病棟出入口に張り込むことで対面は出来たのだ。よくやった覇王丸。

手術自体は6〜8人くらいで行われた。
病棟から手術室までは何故か車椅子。楽しかった。
手術室につくと挨拶と最終説明。担当と補佐(かつ上司?)が入れ代わり立ち代わり。挨拶があってもマスク越しの顔と名前は一致することもなく記憶にも残りにくいが、ふわっと雰囲気は皆ベテランでした。
あと女医、看護婦は案外メイクゴリゴリなのね。夕方でも崩れていないの凄い。バチバチまつ毛でマスク越しでもメイク装備が強いのが分かった。助産師は赤ちゃん対応だからか分かんないけどゴリゴリの人は少なかったな。

手術で一番緊張したのは神経ブロックでの麻酔だ。漫画で読んだことがあっても痛ぇもんは痛え。
表面をちょっと麻酔。その後、打つ場所を爪でマークされ、針が刺さった瞬間動いてしまったので骨に当たった感覚がしっかりあった。びっくりだよね。そして冷たい瓶を当てられて麻酔が効いているかの確認。
だが、最初っから麻酔部分に当てられてよくわからん。
それまで黙って見ていた麻酔科の他の先生(上司?)が「こうやるんだよ」とやり直ししてくれた。麻酔がない腕に当ててから麻酔部で確認。とはいえ瓶は既にぬるかった笑。
その人はその後も何かと喋って説明やらやらをしてくれた。

先生「今なんか違和感あったりする?」
俺「いえ?」
先生「今ね、凄いことになっているよぉ。お腹の中身が見えちゃっているよぉ」
俺「まじっすか」

切開しますの一言、聞き逃したんだろうけどすげーノータイムで手術そのものは始まっていた。準備や麻酔から流れるように始まるもんなのね。

簡易的な塀を立てられるので直接は見えないが、ホワイトボードに微妙に反射しており、割と作業が見えた。作業進捗を色んな先生看護婦助産師が教えてくれたので面白かった。
コメント全部安心できる内容だったので、以降は安心して手術内容を観察していた。
ずっと触られている、押されている感、あれは足が痺れて感覚なくなった時にむにむに押す感覚に近かった。
時々臓器の圧迫感や全力引っ張りなど痛いというか苦しいのがあった。多分、麻酔が効いていない上半身の方の感覚だろう。

そろそろ赤子でますってタイミングで誰かのスマホからヤギ?羊?の声の着信音。ちょっと笑えるが、産声の邪魔である。が、みんな手術に取りかかっているし何なら1番忙しいところ。誰もすぐに止めにいけないのだ。
鳴り止んだ瞬間に赤子の産声、咳込みからの爆音鳴き。
そこは母を真似る必要はないのよ。というか割と産声は咳するものなのかね?
その後も手術室でギャン泣き。助産師が赤子のケアをしている間、母体もバタバタ。拭き終わった赤子と数秒の対面タッチ。その時は覇王丸黙ってたな……なぜ?
可愛い、顎ちっちゃ、気持ち手でかい?とか思いながらも流れるように病棟へ先に行く覇王丸。

時計をみてみたら、準備から30分未満。
赤子が出るのは早い。
その後の処置が時間かかるのね。そりゃいたるところを縫うので時間かかる。吸引やら止血やらで腹が忙しいことになっているのはわかった。
止血パット的なものがドカドカ胸に置かれて重かった。吸引されている血もドンドン溜まる。
人間、案外血抜かれても元気でいられるのな。

大体1時間後に終了。
術後経過をみるために手術室からでて、救急外来で30分ほど待機と言われた。
左右で救急対応されているのを観察。ひっきりなしに人が動き、大声指示が飛び交い、電子音が鳴り響いていた。
俺、ここにいて良いのですか?と不安になりながらも、ドラマみてぇと放置を楽しんでいた。
結局1時間近く放置され、救急対応も少し落ち着いた頃に産科から迎えが来た。
ベッドのままエレベーターに乗るのオモロい。

病棟の入口で実母がお疲れと声をかけてくれた。パートナーは無事実子に会い号泣でボロボロになりながら仕事に行ったと伝えられた。
病室に戻り、胎盤としっかり洗われた覇王丸とゆっくり対面し、手術終了。
胎盤は小さいが分厚いタイプらしい。業務用で見かけるまるまる豚レバーくらいかな。へその緒は乾燥する前は白っぽい貝柱でした。

その後の夜は横向いて寝ろと言われ筋肉痛になったり、針刺すのに2時間かかった点滴が上手く落ちなかったり、正直手術より大変だったが自然分娩からの緊急帝王切開の現場を見聞きして、予定帝王切開は楽なのかもなぁ……と思った。
一番心配していた料金も一時金で全て賄えた。なんなら余ったので少し返ってくる。



以上が出産徒然。
みんなこういうの母子手帳書いているの……?
でも文字量と自分の字の汚さを考えたらここが妥当だろう。
覇王丸も読んでね。