「別れ」がこわかった

学生時代、「別れ」がこわかった。

毎年2月になると「ああ、もうすぐ卒業式か」と想像しては涙を浮かべたのは、さみしかったから。

人に慣れるまで時間のかかるわたしは、新しい環境が苦手だ。

せっかく慣れてきたのに、と、卒業間近になるとその仲間のことが恋しくなる。

毎日のように顔を合わせていた仲間と離れるのが寂しくて仕方なかったあの頃は、どうしようもなく憂鬱だった。

大学生の頃、バンドサークルに入っていた。

箱入り娘のように厳しく育てられたはずのわたしは、少しずつ部室でみんなと飲み明かしたり、授業をサボって部室でバンド練習に励んだりと、大学生活のほとんどを部室で過ごした。

同級生と話すのももちろん楽しかったけど、2つ上の先輩たちがとっても可愛がってくれて、ようやく居場所を見つけたような気持ちになっていた。

彼ら彼女たちが卒業するときがいちばんさみしくてどうしようもなかった。

当の本人たちはカラッとしていたけれど。


でも今、あのときの自分に言いたい。

繋がれる人とは離れても繋がっていられるし、あんなにもさみしがっていた仲間でも、会わなくなる時が来るんだということを。

20代の頃に一緒に働いていた仲間の1人が、友達と遊んだときの別れ際「またね」と離れるときに泣きそうになる、と言っていた。

あの頃のわたしは完全に同じ気持ちで、「わたしとおんなじように思っている人って他にもいるんだ」なんて思っていた。

けれども。

別れはさみしいけど、いくら連絡を取らなくなっていても、繋がっていられる人とは必ずどこかのタイミングでまた繋がるのだ。

そして、あの時と同じように笑い合ったり、心の支えになってくれることだってある。

だから、大丈夫。

ずっと仲良くいられると思ってた人と疎遠になったり、急に会えなくなることもあるけれど、それはそれ。

先のことはわからない。

けれど、会わなくなった人の分だけ新しい出会いもたくさんあるし、しばらく連絡を取っていなかった人に窮地を助けられることもある。

うん、前よりも「別れ」を笑って過ごせるようになった。

なんとなく、大丈夫だと気づけたから。





執筆者:チヒロ@かもめと街 Twitter

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