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トランヴェール 旅のまにまにを読んで
トランヴェール、という雑誌をご存じだろうか。
JR東日本の新幹線車内、背もたれのポケットに置いてある小冊子で、席を予約したひとであればだれでも自由に読むことができるし持ち帰ることができる。(持ち帰ったことはないけれど)
飛行機にもこういった小冊子は置いてあるけれど、私はリーフレットや冊子は一通り目を通すタイプだ。
こういった冊子には旅に関するコラムが掲載されていることが多い。
暇つぶしに移動中に読むにはうってつけだ。
例えば、JALの国内線だと浅田次郎さんが寄稿しているし、新幹線に置いてある「トランヴェール」であれば岩手出身の柚月裕子さんが連載中だ。
作家 柚月裕子さんの「旅のまにまに」
例えば今月はこんな内容だった。
違いの豊かさ、というタイトルで書かれた旅の話。
寒と暖、東と西、どちらかしか知らなければ半分の良さしかわからない。
ああ、旅というのは色んなものを知るために出るんだなあと、しみじみと実感した。
北国の空が水色ならば九州の空は紺色のように濃い。
北国の風がまだ頬が痛いくらい冷たいとき、九州の風はお日様のにおいを含んだように暖かかった。
山も違っていた。早春の北国の山は頂に雪が残り白いのに、九州の山は山肌の土色に樹木の緑が混じり、まったく違う様相だった
においも含めて、情景を思い浮かべてしまうような、素敵な文章だと思う。
あるときは、夏祭りと母の話だった。
(以下要約)
緊急事態宣言中、「やりたいことリスト」を作っていて、そのなかのひとつに「祭りに行く」というのがあった。
子どもの頃の夏祭り、母に誘われたが行かなかったという想い出にもならないような記憶。
その時の母の顔と母に確かめたいエピソード。
でもその母はもういない。
今年の夏、行こうと思っているところがあるひとはぜひ行ってほしい、後悔しないためにも。
うろ覚えだが、確か、そんな内容だった気がする。
私は新幹線の車内なのに思わず泣きそうになってしまっていた。
誰だって後悔したエピソードを一つくらい持っているだろう。
あのとき投げかけた、あの言葉。
あるいは、なぜあのとき、ああしなかったのか。
ふとした時に確かめたくなって、記憶を過去に遡ってはみるものの、ひとつ確実に分かっているのは、私はもうその過去に戻ることはできないし、その時の自分にも戻れないということだ。
ちょうどそのころ母と色々あり、胸が苦しくなったのを覚えている。
最後にこのnoteらしく、旅の言葉で締めくくりたいと思う。
どちらがいいということではなく、対となる違うものがあるから、人は豊かさを感じることができるのだ。
Yさんと話して、違いは間違いではなく心を豊かにするものだと感じた。
旅は違いを知ることができる、絶好の機会だ。
暖かくなるこの季節、思い切って遠出してみてはいかがでしょうか。
Have a nice trip!