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Wilfred Owen, Mental cases 私訳

ウィルフレッド・オーウェン 「精神の事象」

① Who are these? Why sit they here in twilight? ② Wherefore rock they, purgatorial shadows, ③ Drooping tongues from jaws that slob their relish, ④ Baring teeth that leer like skulls’ teeth wicked? ⑤ Stroke on stroke of pain, ――but what slow panic, ⑥ Gouged these chasms round their fretted sockets? ⑦ Ever from their hair and through their hands’ palms ⑧ Misery swelters. Surely we have perished ⑨ Sleeping, and walk hell; but who these hellish?
① あれは何? 黄昏の中に坐している彼らはいったい? ②③④ 後味を食らおうかともする舌が顎からだらりと垂れており、骸骨の悪意ある歯のようにいやらしい歯を剥き出した煉獄の影は、どうしてあのように揺り動いているのか ⑤⑥ 苦痛のひと打ちの上にまたもや重なる打撃、しかし、どのような恐怖が腐食した頭蓋骨の周りの裂け目を抉ったのだろうか ⑦ 髪の毛や掌から悲嘆さがにじみ出る 確かにわたしたちは消滅してしまった ⑨ まどろみながら地獄を歩み しかし、こんな地獄絵図に描かれているのは誰だ 


⑩ ――These are men whose minds the Dead have ravished. ⑪ Memory fingers in their hair of murders, ⑫ Multitudinous murders they once witnessed. ⑬ Wading sloughs of flesh these helpless wander, ⑭ Treading blood from lungs that had loved laughter ⑮ Always they must see these things and hear them, ⑯ Batter of guns and shatter of flying muscles, ⑰ Carnage incomparable, and human squander ⑱ Rucked too thick for these men’s extrication.
⑩ 死者からこころを奪われた男たち ⑪ 殺人者の髪の毛を手にした記憶の指 ⑫ 多くの殺人者たちはかつては目撃者だった ⑬ 死体のぬかるみを骨を折りながら進む この希望のない彷徨 ⑭ かつては笑うことを愛した肺からほとばしる血の海を踏みつける ⑮⑯ 銃の乱射や粉砕された筋肉の乱舞を毎回彼らは見たり、聞いたりしなければならない ⑰ 無比の殺戮とあまたの人間の喪失の山  ⑱ もつれを解くにはあまりに厚い堆積

 ⑲ Therefore still their eyeballs shrink tormented ⑳ Back into their brains, because on their sense 21 Sunlight seems a blood-smear; night comes blood-black; 22 Dawn breaks open like a wound that bleeds afresh. 23 ――Thus their heads wear this hilarious, hideous, 24 Awful falseness of set-smiling corpses. 25 ――Thus their hands are plucking at each other; 26 Picking at the rope-knouts of their scourging; 27 Snatching after us who smote them, brother, 28 Pawing us who dealt them war and madness.
⑲⑳ それゆえに、いまでもなお、苦痛で縮こまった彼らの眼球は脳髄の中に窄まり 21,22 眼球には血が滴っているので、太陽の光は、赤い血の滲みのようで、夜は、黒い血の世界が訪れ 夜明けになると、新たな出血の傷口の裂け目のような幕が再び開く  23, 24 それゆえに、彼らの表情は、陽気でおぞましく、死者の硬直した笑いという悲惨な誤りを示している 25 こうして、彼らの手は、互いをぐいと引き 26 彼らがむちを打っているむち打ちの縄を掴み取り 27,28 彼らの名を汚すわたしたちを追ってさっと引っ掴んで、兄弟よ、戦争と狂気へと追いやったわたしたちを手荒く扱っている

「意識の事象を数えるために、それを空間の中で記号によって表象しなければならぬとすれば、この記号による表象が内的知覚の正常な諸条件を変えることが起こりそうではないか。……表象感覚は、それ自体として見れば、純粋の質である。けれども延長(広がり)を通して見られると、この質はある意味での量となる。すなわち強さと呼ばれる。こうして、心的状態のそれぞれの区別ある多数性を形成するために、われわれがそれらを空間内に投影することが、それらの心的状態そのものに影響を及ぼし、反省的意識の中でそれらに新しい形を付与せずにはすまぬのであるが、そのような形は直接的な知覚によっては与えられなかったものなのだ」ベルクソン『時間と自由』(94-5) 


「意識の事象を数えるために、それを空間の中で記号によって表象しなければならぬとすれば、この記号による内的知覚の正常な諸条件を変えることが起こりそうではないか。少しばかり前に、ある種の心的状態の強さについて述べたことを想起しよう。表象感覚は、それ自体として見れば、純粋の質である。けれども延長[広がり]を通して見られると、この質はある意味での量となる。すなわち強さと呼ばれる」ベルクソン『時間と自由』(95) 


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