石碑を巡って
2020年は鴨ノスのツアーを実施していません。「それならば」と自分1人でぷらぷらと街歩きをしたり,札幌市周辺の石碑を巡ったりしております。
さっぽろ文庫45『札幌の碑』などを参考に歩くと,《馬頭観音》あるいは《馬頭観世音》という碑が多いことに気がつきました。これは,馬に感謝し馬の霊を慰めようという碑です。《馬魂碑》《馬頭大神》も同じ趣旨の石碑です。
札幌市中央区 新善光寺の「馬頭観世音菩薩」
『札幌の碑』にはこのような馬(や牛)に関する碑が50紹介されています。また,石狩町郷土研究会『石狩の碑』には22の碑が紹介されています。
石碑の説明を読んで,昔の北海道の光景を想像してみたり...
100年前の北海道を振り返りますと,馬はさまざまな働きをしていたことが想像できます。農家では今のトラクターのように力仕事をしていました。人が移動するときや農作物を運ぶときは馬車を利用していました。今の自動車やトラックに相当します。
たくさんの丸太を積んで,険しい山道を歩く馬(北海道大学北方資料データベースより)
土木工事の現場では今の重機のように力仕事をしました。
札幌のような都市でも荷物の運搬は馬車が中心でした。また,いまの市電の原型は馬車鉄道というもので,レールの上の客車を馬が引いていました。
戦争でも多くの馬が利用されていました。
「馬市場」 今なら「中古車販売会」か...(同データベースより)
とにかく,馬がいなければ人や物が運べないし,馬がいなければ力仕事ができない時代でした。農家が馬を家族同然に大切にしたというのもうなずけます。だから,馬が死んだときは感謝の気持ちを表したのだと思います。
この馬頭観世音には,「第一朝日号」と愛馬の名前が書いてあります
「あなたは開拓に貢献しました」と表彰された馬はいませんが,今も残るたくさんの馬頭観音が家族とともに汗水たらして働いた馬たちの労をねぎらっています。
文と写真 take