政治家になる 私の兄 第2話「生首の貯金箱」
私の兄「神沢かずたか」が、4月16日告示の豊島区長選挙に挑戦する予定です。3人兄弟の末っ子の私と、長男の兄の思い出を語っていこうと思います。
プラスチックの生首
貯金箱をちゃんと溜めきり、銀行で紙幣に変えてもらった経験がある方はどれくらいいらっしゃるでしょうか。私は去年の年末、人生で初めて、満タンになった貯金箱を銀行に持っていきました。妙に青みがかかった、プラスチック製の生首貯金箱でした。首の下辺りまでの貯金箱で、つむじのあたりに硬貨を入れる穴があり、額のあたりに「政治家になる」とマジックで大書されていました。サイズもなかなかのもので、実際の人間と同じ程度、いやむしろ一回り大きいくらいの、しっかりした貯金箱でした。
我が家で政治家になるのが理想な人物など1人しかいないので、間違いなく兄が購入し、使っていたものでしょう。私の記憶にある限り、兄は3回くらいは貯金箱を小銭でいっぱいにしていたことがあるはずで、私も兄の貯金箱を紙幣に変える作業を手伝った事があります。貯金箱のメインイベントは間違いなく小銭を実際幾らなのか数えて紙幣に変えるところだと思うので、いい
とこ取りをしたと言えなくもないでしょう。
中学生の頃に抱いた夢
40過ぎになった今、中学生の頃に抱いた夢を果たすために挑戦を決めた事には単純に驚かされました。でも、同時に納得する気持ちも強かったです。月並みな言い方ですが、昔からやると決めたことはやる。というわかりやすいタイプでしたので。そしてどうもその気持ちは彼の知人友人同僚の方々から見てもそうであったらしく「いよいよか」というような感想を持たれたり、人によっては「地方自治体で挑戦するのは意外」などと、仰る方もいたようです。そういった方々も、最も身近な自治体。そしてその首長となって区民生活に貢献したいという彼の志については納得してくださったようで、今日も兄のために力を尽くして下さっています。
一方、そんな兄の内なる夢について知る由もなかった3年ほど前の私が、兄の夢描かれし生首貯金箱を使うようになった理由は単純にそれ以外の貯金箱がなかったからです。現金を使う機会が減った事で、逆に中途半端に出た小銭を消費できなくなったので、逆に出た小銭を全てその日のうちに貯金箱に入れて仕舞えば煩わしくなくなり、その上楽しみにもなる。それから3年間「政治家になる」などと大書してある貯金箱にせっせと小銭を貯めている私の姿はまるで自分の政治資金を貯めているようだったと思いますが、最終的に溜まった小銭は住民税と個人で入っている保険料をまとめて支払ってほぼ空になりました。ちなみにご存知の方も多いと思いますが、銀行に持っていって職員の方に数えていただくと料金が発生しますが、一回につき50枚までならATMを使うことで無料で両替などできますので、そちらがお勧めです。平日の昼間、なるべく人がいらっしゃらない時にひっそりと行う事が求められます。
生首の行方
私の部屋の窓枠の手前、最も日当たりの良い場所で、雨の日も風の日も、日の光を真っ向から受けたり受けなかったりしながら小銭を飲み込み続けていた生首。お向かいの家を無機質な瞳で見つめ続けていた生首。何かの拍子に紙幣で支払う機会が連続し、突然小銭が顎から口元くらいまで登ってきた時生首。逆にカード支払いが続き鼻先の辺りまで登ってきた後、うんともすんとも言わなくなった生首。片手で掴み上げられるくらい軽かったのに、いつの間にか両手で抱え上げても腰をイワしそうな重量になっていた生首。銀行に持って行く日、流石にこれを持って行くのは恥ずかしいと思い一旦中身を全て出し、初期状態に戻された生首。私が兄から豊島区町選挙の挑戦について語られ、手伝って欲しいと伝えられたのは恐らくそれから1ヶ月後くらいのことであったと思います。
そんな思い出のある生首の貯金箱、本来であればこのnoteに写真付きで貼り付けて然るべきなのですが、残念ながら写真はございません。私が捨てたからです。
貯金してる3年間、ずっと思っていたんだ。「この気持ち悪い生首、一回使ったら絶対捨ててやる」って……