冰気錬成が双剣に与える効果量の計算
※Ver16時点の文章です
冰気錬成はダメージに大きな倍率がかかる非常に派手なスキルである。これを読んでいるプレイヤーたちも様々な武器の攻撃に冰気錬成を乗せた大ダメージを見せつけるような動画サムネイルを見たことがあるかもしれない。
しかし、それが全体の何%火力増に相当するか考察するような内容は少なくとも筆者の観測範囲ではほとんど見受けられない。これを示すことができればスキルバランスの最適化に貢献できると考えられる。
本研究では双剣の冰気錬成運用モデルを作成、他の恒常的に効果が発動しているスキル同様に扱うために全体としてどの程度火力に貢献しているか計算し、それをもとに冰気錬成の採用基準について考察する。
本文章は以下の要素で構成される
1.冰気錬成の仕組み、計算上の問題点
冰気錬成は図1のようなゲージが出現し(Lv3)ゲージ残量に応じて物理、属性のダメージ倍率が図示したように増加する。攻撃を当てるとゲージは減少するが、1発あたりの減少量は武器によって異なる。
一撃の重い武器なら攻撃時のゲージ量にあたりを付けて比較的シンプルに計算ができる。一方双剣の場合は連撃中にゲージが高速で減少し倍率が変化するためシミュレータのみで現実的なダメージを見積もることは困難である。
2.双剣における運用モデルの設定
双剣において冰気錬成のゲージがどのように変遷するかについて、よほど特殊なケースを除き[最大→枯れても攻撃し続ける→攻撃できないまたは被弾タイミングでフルチャージ]というサイクルであることがほとんどであると考えられる。よって適切なタイミングに絞って冰気チャージを行えばダメージは図2のようになる。
通常のスキル群であればダメージに状況による変動はないためダメージシミュレータの値をそのまま比較に利用することができる。冰気錬成をはじめとした状況によって攻撃性能を変化させるスキルの場合はダメージの平均を算出する必要があり、図形的には図2の冰気錬成による突出部分を均すことに相当する。例を図3に示す。この処理を行った後のダメージと冰気錬成の効果がない部分のダメージを比較することで冰気錬成が実効的に何%火力を増加させているか導くことができる。本研究では討伐に何手必要かを計算し仮想敵の耐久力と組み合わせることで平均化を行った。
3.理論式導出
計測
前項を踏まえて理論式を導出する。まずは図2における冰気錬成による突出部分がどのくらいのダメージなのか見積もる。細かい仕様を知っていればダメージシミュレータでちまちま積算して導出することもできるが今回は実機を使用し計測を行った。
具体的な方法として修練所の蛙の頭に特定のループコンボを冰気ゲージが枯れるまで継続しそのダメージから冰気錬成なしの場合の同コンボのダメージを引いて求めた。計測条件を図4、結果を表1に示す[1]。突進連斬コンボのみ腹を攻撃している。
コンボ換算係数
表1に示したコンボ換算係数は冰気錬成で増加したダメージが対象のループコンボ何回分に相当するか示したものである。冰気錬成の仕様上これは相手の肉質によらず一定になる。1コンボダメージをd、コンボ換算係数をcとすると冰気錬成による増加ダメージはcdで表せる。例えばこれを利用して突進連斬コンボを頭に当てた場合を考えると、シミュレータで計算したコンボダメージは1344であったため冰気錬成による増加ダメージは1344×0.59=792となる。(実際はcには切り捨てた端数があるため厳密には少し結果がずれる)ダメージの単価が高い空舞コンボが最もダメージ増加が大きいことはプレイヤーの認識と一致するところだろう。
ダメージ増加量誤差を最小にするため、モデル式へはダメージ増加量が中央値をとる螺旋斬+鬼人逆手斬りのパターンを使用する。次項に示す結果も考えると全体でその誤差も0.1%前後になるケースが多いためパターンを一本化する影響はほとんどない。
火力増加量理論値
モンスターの耐久をH、螺旋斬+鬼人逆手斬りのターゲット部位へのダメージをd、コンボ換算係数をc(今回は0.39)、冰気フルチャージ回数をfとすると冰気錬成による火力増加割合Xは
$${X=cdf/(H-cdf)}$$ -①
以下導出プロセス
指定コンボ何回で討伐に至るかを考える。コンボ回数をNとすると
$${N=H/d}$$ -②
冰気錬成がある場合をN'とすると、冰気錬成によって増加したダメージ以外の残りの部分をコンボダメージで稼げばいいので
$${N'=(H-cdf)/d}$$ -③
1コンボの平均ダメージは耐久/コンボ回数で、冰気錬成の有無でその比Yを求めると
$${Y=(H/N')/(H/N)=H/(H-cdf)}$$ -④
Yは比であるため何割増か求めるには1を引けばよい
$${Y-1=cdf/(H-cdf)=X}$$ -⑤
理論式①を使用していくつかのパターンでXを計算し図5に示した。各数値は振れ幅はあるがおおよそ以下の相手に相当するため参考にしてほしい。またf=10まで計算したが、表1よりチャージから次のチャージまで3手は空く前提があるためN'<3fとなる計算値は省いた。
ダメージ(弱点部位、狂化奮闘)
2000 メル・ゼナ(通常時)
2500 オオナズチ
3000 ラージャン
耐久(振れ幅が大きいため注意)
60000 一部の烈禍個体
90000 討究Lv300
120000 特別討究
150000 特別討究(高耐久)
式の通りではあるが相手の体力が低く、こちらが一度に与えるダメージが大きいほどXが増加することがわかる。また、何度も納刀することは立ち回りの不安定化につながる。以上のことから双剣にとっては短期決戦向きなスキルであるということが示唆される。
次項の比較用に図5をまとめて図6に示しておく。H/dを計算したうえで欲しい強化量を選択すれば必要な冰気チャージ数がわかるようになっている。
4.他スキルとの比較考察
冰気錬成は装飾品に存在しないいわゆるユニークスキルである。狂化奮闘、龍気変換ともにある程度スキルは決まっているため、今回の比較対象は自由枠である血氣覚醒と粉塵纏にする。状況によって性能を変化させるスキルであるため平均化を行う。ただし冰気錬成と異なりプレイヤーの技量によりスキル性能が変化することは留意しておくべきである。技量の数値化は研究の主題ではないため議論しない。今回は筆者のTA動画をサンプルとした。詰めを行っているため技量は通常より高めになっている。
仮に戦闘時間は4分、耐久は90000と設定した。一般的に長期化するほど冰気錬成が相対不利になる。
粉塵纏
動画[2]よりLv1で赤粉塵発動にかかった時間は23秒~32秒であったため、代表として30秒で計算する。狂竜症の発症有無で差があるが、ダメージは約500とする。必要手数の比より青粉塵発動周期は表2のように見積もることができる。またダメージグラフの概形は図2と同じようになるため冰気錬成の理論式①のcdfを爆発ダメージ×発動回数に置き換えて計算できる。また発動回数は戦闘時間/発動間隔を少数点以下切り捨てで求められる。以上の条件で計算結果を図7に示す。
粉塵纏はその特性から武器の与ダメージが低く耐久比で討伐に時間がかかるような相手ほど相対効果が増すため、冰気錬成と真逆の傾向を持っていることが予想できる。また、冰気錬成とのパワー比較はcdfと粉塵纏の爆発ダメージ×発動回数の値を比べるだけで可能である。比較結果を図7に示す。
縦軸の数値は判断に使用しないため気にしなくてよい。
横軸が重要で、1であれば3分間で3回冰気をチャージし、使用したことになる。この際開幕のフルチャージ状態も1回に数える。
基準線の凡例に併記した数値は螺旋斬+鬼人逆手斬りのダメージである。基準線より下は冰気錬成が有利な領域、上は粉塵纏が有利な領域になる。例えば粉塵纏Lv3のとき、3000基準線とは横軸0.75付近で交差する。螺旋+逆手のダメージが3000かつ4分で3回以上のペースで冰気錬成を使用できるような戦い方の場合、粉塵纏ではなく冰気錬成Lv3を使用するべきと判断できる。
血氣覚醒
血氣Lv2を併用している前提で考える。1段階目発動までに10秒、2段階目が15秒かかると仮定する[3]。部位破壊まで15秒、120秒かかった場合の火力増加率を計算する。加算スキルであり武器性能によって強化量(%)の変化があるはずであるため、仮想敵はメル・ゼナ、ラージャン、オオナズチとし、動画[3]の構成を使用し、各々第一弱点の属性に武器を合わせた(刻銀の滅刃、ウェントゥス=ダオラ、ジオメトル=Yを使用、ジオメトル=Yは斬れ味を紫にしている)。攻撃部位は頭とした。ただし戦闘終了時どの状態で終わるかという点を考慮していない。結果を図9に示す。
破壊まで15秒は開幕の動きで部位破壊、120秒は戦闘中盤における耐久条件クリアによる部位破壊(エスピナス頭、オオナズチ頭等)をそれぞれ想定している。終盤にしか部位破壊できないテオ・テスカトルなどが相手の場合さらに相対効果量が減少する。
冰気錬成との比較については粉塵纏のように単純な式の比較というわけにはいかないため、図5または図6と図9を直接見比べるのがよい。その際図9の120秒で部位破壊する部分は[戦闘時間の半分]に置き換えて考える。例えばラージャン(耐久90000、開幕で部位破壊すると仮定)を相手にする場合、血氣覚醒の強化量は6.3%、H/dは約30である。図6のH/d=30部分の6%線をの少し上と考えると血氣覚醒を上回るのに5(4.5を切り上げ)回は氷気チャージを行う必要があるとわかる。あとは開幕含め5回分機会損失無しで氷気チャージができるか自身のプレイスタイルと相談するとよい。
5.結論
注意したいのは各々のスキルがフルスペックを発揮するには様々な条件があることである。冰気錬成は一切攻撃の余地がないときのみチャージを行うこと、粉塵纏は赤粉塵中に一度も被弾しないこと、血氣覚醒は部位破壊箇所と攻撃したい箇所が一致していることが条件でありこれらから離れるほどスキル性能は落ちる。
以上を踏まえて冰気錬成がどのような条件下で採用余地があるか考えると、標準的な領域であるH/d=30~40の相手なら最低でも3回は冰気錬成の効果を利用したいところである。これ以下だと粉塵纏を超えられるケースが低耐久の相手あたりに限られてくる。一方で1つでも冰気チャージ以外やることがないような行動を持っている相手であれば3回は達成できることがそこそこ多いと考えられる。血氣覚醒が有効で部位破壊の早い相手には冰気錬成では勝ち目が薄い。数値上は5、6回冰気チャージができれば上回るケースも出てくるが、その回数を損失無しで行うことは困難である。そもそも双剣は納刀時が最も危険であるためチャージ回数の増加は立ち回りの歪みだけでなく被弾リスクも増加させる要因となることは覚えておくべきである。
また本研究の条件は粉塵纏と血氣覚醒に関しては少し厳しめにつけてあり、プレイスキルによって計算結果以上の効果を発揮する可能性があるが、冰気錬成は今回の計算結果が限界値である。比較をして冰気錬成と対象スキルが互角だった場合、モンスターに慣れていれば冰気錬成を選ぶ余地はない。逆に不慣れな相手には粉塵纏と血氣覚醒は実効的な効果量が減少するうえ、被弾も嵩むことが考えられるため相対的に冰気錬成を選ぶことは打開には有効である。
余談:機会損失がある場合の強化量
前項では冰気錬成は一切攻撃の余地がないときのみチャージをするということを前提としたが、ある程度は攻撃機会を損失しながらチャージしても冰気錬成なしの場合と比べて火力はプラス方向を維持するはずである。ではそのある程度とはどの程度なのか?理論式のcdと各技のダメージで比べた結果、これは物理と属性肉質の比率にもよるが現環境であればおおよそ突進連斬1回分が最も近い。これ以上攻撃できる場合は冰気錬成を発動させていても納刀するべきではない。チャージ1回あたりで攻撃できたはずのダメージ量の平均をd'とすると火力増加量X'は
$${X'=(cd-d')f/[H-(cd-d')f]}$$ -⑥
である。損失込みで考えるならこの式で比較を行うべきである。d'が突進連斬のダメージを超えるとX'は負の値をとり冰気錬成によって立ち回りが歪みかえって弱体化したということになる。また、cdと突進連斬のダメージが近いので、誤差増加を気にしなければ式①などのcdを突進連斬のダメージと入れ替えることで計算プロセスの簡略化が可能である。
あとがき
ここまで読んでくれた方、お疲れ様です。
はじめは3章まで調べて満足していたのですが、ここで終わるとなんか論文っぽさがないなぁと思いスキル比較も入れました。なので最後はわりとガバです。それでもスキルの実効的な強さを考えることができたのはひとつ収穫だなと思います。なんでおまけのつもりの4章が一番重いのよ!!!
冰気錬成のパワー見積もりにおいてやはり適切なモデル設定が難しい武器種が結構多いのではと思っています。チャージに至るパターンは何か、攻撃毎の単価の差をどのように表現するか、などです。双剣はそのあたり比較的シンプルに解決できたので良かったです。あと個人的には冰気倍率を維持したまま戦う大剣あたりのモデルも見てみたいですね。武器に精通してる方じゃないとまともにモデル設定できないと思うので私には無理です。誰かやってくれないかな〜
こんなところですかね。おわります。ばいばい
参考
[1]MHRiseSBダメージシミュレーター
https://kuroyonhon.com/mhrisesb/d/dame.php
[2]【MHRS PC】傀異討究:バルファルク(赫耀) Lv300 双剣 ソロ 03'02''36/Anomaly Investigation: Crimson Glow Valstrax DB Solo
https://youtu.be/3viMFJHocHY
[3]【MHRS PC】烈禍襲来:キュララララララ! 原初を刻むメル・ゼナ なしなし 双剣 ソロ 03'07''66/Hazard: Primordial Pest Dual Blades Solo
https://youtu.be/QGtr-4WWHAo
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