空と君のあいだに
最初に書いておきたいのは、なんと先週は3人の方が有料記事を購入してくれて、2人の方がサポートしてくれたこと。本当にありがたいことで、とても感謝しております。このnoteを読む人に富豪が複数存在したということなんでしょうな…。とはいえ、現在、新型コロナウイルスだなんだで大変なご時世ですのでね、みなさま、是非ともご無理をなさらぬようお願いいたします。
さて。なんでこの画像にこんなタイトルなんだよ…ってのは、僕が一番思っていることなんですけど、それはそれとして。非常に残念ながらこの世の中は、正しさだけじゃ生きてけないというか。今回はちょっとした罪の告白をしようと思います。少しばかり非道徳的な話になるので、そういう文章が苦手な方は読まない方が良いざます。
「好きな食べ物はなんですか?」と聞かれたら、僕は「好きな食べ…」のあたりから食い気味に「ステーキ!」と答えるくらいにステーキを愛しているんですけど、実は幼い頃は「うなぎ」でした。離婚した父親が僕に会いたいがために「うなぎ、ご馳走してやるぞ?」なんて釣ろうとしていたほどであり、ちくしょう、大嫌いにもかかわらず、結局は父と一緒に食べに行ってしまっていた…と書けば、どれほど好きだったかが伝わるかと思います(とはいえ、借金まみれの父に振る舞われるうなぎは、なかなか切ない味でもあった)。
ただ、10代後半から体をバリバリ鍛えだした&自分の稼ぎで食べられるようになったあたりからは完全な肉食系男子にフォームチェンジして、好きな食べ物は「焼肉」に(その後「ステーキ」になる)。もともとは「草食系」な人間でしたが、この時期は性格も今では考えられないほどマッチョであり、焼肉を食べる時も相手と「雄度」を競う感じでしてね。「食べる速度×量=男らしさ」という間違った概念の元、急ぐ余りに肉を焼かないで食べた時期もあったほどなんですけど、この件についてはまたいつか書くことにしましょう(偉そうに)。
で、それ以降は「たまに高い店で食べる」ってな調子で自分の中のスペシャル感を高めていて。2005年に結婚してからは「土用の丑の日」近くになると奥さんが食卓に出してくれたりするのもうれしかったりしてね。そんな日々がずっと続けばいいと思っていたんですが、永遠はどこにもなくて。2014年、うなぎが絶滅危惧種に指定されちゃうワケですよ…。もうね、基本的に小心者の僕ですから、これはスゲー気まずい。うなぎ自体はいつだって美味しいけどさ、こんな状況下で食べたら、近所の人から「可愛い振りしてあの子、割とやるもんだね」なんて言われ続けそうで、生きるのが辛かった。
その旨を奥さんに伝えると、特に彼女はうなぎが好きというワケでもないので、我が家では食べないことになりまして(でも、嫌いでもないので、仕方なく僕に合わせてくれてたのです、今思えば)。それからは、ずーっとずーっと食べてなかった。「いつか絶滅危惧種じゃなくなるのかな…」なんて夢を抱いていたけど、2018年に出た鈴木智彦さんの名著「サカナとヤクザ 暴力団の巨大資金源「密漁ビジネス」を追う」を読んでみたら(※1) 、さらにブラックなうなぎ事情を知ってしまって。ハッキリ言って、違法薬物関係の犯罪を「犯罪組織の資金源になるから」という理由もあって嫌う僕的には、余計に食べられなくなってしまった…って、伝わりますかね。
大体、絶滅危惧種なのに、なぜ今もみんな平気で食べているのよ、おかしいじゃない。僕はもともと「スペシャルなムードでうなぎを食べたい派」というのもあって、「すき家」で安く売られてたりするのも本当に嫌だし。こんなことはあまり書きたくないけど、愛聴しているラジオ番組「アフター6ジャンクション」のショッピングコーナーでうなぎが扱われるのも嫌だったし、その時に「#utamaru」で否定的なツイートが流れるのを見るのも本当に嫌で嫌で、生きるのが辛かった(2回目)。だから、いつかアメブロの方で問題提起的な文章を書いてみようかな…。そんなふうに考えていた時期が俺にもありました。
2020年4月19日の話。奥さんが夕飯の準備をしていて、「今日は何かな〜」と台所をのぞいてみたら、なんとうなぎが用意されていたのです。僕は当然ながら「なぜ絶滅危惧種がここに!?」と驚いたワケですが、奥さん的にそんな反応は折り込み済みであり、「ママが食べたそうだから、スーパーで買ってきた」「にいにい(※2)は無理して食べなくていいよ」「でも、もし食べるならにいにいの分もあるよ」なんて言ってきたというね。
奥さんの母親(僕的には「お義母さん」)と一緒に暮らすようになったのは、2018年の5月ぐらいから(うろ覚え)。お義父さんがガンで亡くなってしまって、青森で独り暮らしをさせるのは心配ということで、同居することになりましてね。それ以来、特に揉めることもなく、それなりの距離感でそれなりに迷惑を掛け合うことなくそれなりに仲良く暮らしてきたつもりだったのです。
でも、そう言えば、同居し始めたばかりの頃。家族で回転寿司を食べに行った時、皿に載ったうなぎの寿司が流れてたから、僕ったら「絶滅危惧種なのにー」とか「こういうところで出すのはー」とか拙い自説を披露したことがあって。お義母さんは「あら、そうなのね」的にニコニコしてたし、我が家の食卓にうなぎが出ないのは当然のことだと勝手に思っていたんですが、しかし。奥さん曰く、「ママ、うなぎが好きなのに『○○さん、嫌いみたいだから…』ってガマンしてるんだよ」「でも、やっぱり食べたそうだから、買ってきたの」と言うからさ、ううむ、非常にショックを受けました。
正直、絶滅危惧種ゆえの気まずさは常にある。でも、愛する人の母親であり、もうすぐ70歳になろうという老人に「ずっと好きなものをガマンさせていた」という方がもっと気まずくて、もっともっと申し訳ない気持ちになってしまう。つーか、僕だって絶滅危惧種だなんだと偉そうなことを言う割には積極的な保護活動をしているワケでもないし、街では毎日のように売られまくっているのをスルーして過ごしているワケでさ。そんな自分を「良い子ぶってるだけなんじゃねーの?」と思わなくもないじゃないですか。
まぁ、「僕だけ食べない」って選択も「ナシ」ではないけど、それだとやっぱりお義母さんに気まずさを感じさせちゃうだろうし…。ううむ、わかった、食うよ、僕も食う。そんな気持ちで約6年振りに食べてみれば(トップ画像がそのうなぎ)、ちくしょう、超旨ぇ…。「こんな美味しい食べ物があったの!?」と二度見するぐらい旨かったのです…。そして5月30日、また食卓にうなぎが出て。食べてみたら、これまたふっくらしていて驚くほど美味しかった。もうね、これからの我が家ではうなぎが普通に出てくるし、僕もスムースに食べちゃうんでしょうな…美味しいし。
もうラジオショッピングを責められないし、責める資格もない(まぁ、僕は心の中でしか責めてなかったけど)。一応、「ねとらぼ」の記事によると「どちらともいえない」みたいではありますし、「PRESIDENT Online」の記事によれば「適切に扱っているところ」から買うのは問題ないみたいですが、とはいえ、絶滅危惧種であることには変わらないんですよ、美味しいけど。そして、ヤクザの資金源云々の可能性を考えると、今だって気まずさは拭えないのです、美味しいけど。
でも、やはり、一番大事なのは側にいる人たちなのだから…。君が笑ってくれるなら、僕は悪にでもなる。そんな気持ちで、これからもお義母さんと一緒に暮らす限りはうなぎを食べるし、もし未来人から「お前らのせいでうなぎが絶滅した!」と責められることになったら、泣きながら土下座して謝るつもりでございます。おしまい。
(※1) 暴力団専門ライターとして知られる鈴木智彦さんの著書は(僕が読んだ限りでは)どれも面白いんですが、「サカナとヤクザ 暴力団の巨大資金源「密漁ビジネス」を追う」はマジでタメになるので是非チェックしてみて!
(※2) 僕は奥さんに「にいにい」と呼ばれていて(機嫌が良い時は「にいにいちゃん」になる)、僕は奥さんを「○○ちゃん」と呼んでおります。