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日経平均、4万円は見えてきたか。


3万円台回復の理由は、高水準の輸出とコロナ禍からの正常化

2022年10月26日付の神山解説 『vol.33 日経平均4万円が見えるには』 では、リーマン・ショック前を超える輸出量が続いていることの重要性を述べて、その上国内経済はコロナ禍から正常化するのだから、日本経済は「過剰(余り)」から「不足」の時代へ大きな転換点となる可能性があると書きました。この間、日経平均株価は27,431.84円(2022年10月26日 終値)から31,233.54円(2023年5月29日 終値)に上昇しました。

まず、輸出量を見ると輸出業者はフル稼働していると思われます。もちろん商品によってさまざまな状態にはあるのですが、これまでにないほど稼働率が上がり、人が足りなくなり、ロボット導入や新規生産ラインへの設備投資が増大し、お金も借りたくなるはずです。これがヒト・モノ・カネの過剰から不足への転換の姿というわけです。

外食、旅行、ホテル、旅客輸送などが急回復しており、コロナ禍という特殊要因とはいえ、ヒト・モノ・カネの過剰から不足への転換となっています。ホテルなどは人手不足で全ての客室を開けないうちに満室としなければならないなど供給不足が問題ですが、だんだん解決すればコロナ禍前に戻るでしょう。

生産拠点の日本への回帰の知らせも具体化しており、5月19日付の日本経済新聞は「半導体 対日投資2兆円超」「米韓台大手が事業拡大」と報じており、人手がさらに必要です。

また、給与水準の増加のみならず、新しいスキル需要に応える教育拡大と成長分野への人の移動も期待できそうです。さらにコロナ禍からの正常化が急激な人手不足につながりそうです。

株価上昇の勢いは続くのだろうか?

日経平均は2022年頃は26,000円から28,000円のレンジで推移してきたのですが、それ以前の2021年頃は28,000円から30,000円でした。

簡単にいうと、2022年のレンジは、日本の内需が行動制限などで弱かった時であり、それ以前は内需も外需もまあまあだった時だと思います。日本の内需がコロナ禍から正常化し、外需が横ばいで(米国の深刻な景気後退はないと想定して)進めば、2021年のレンジへの回復はわかりやすい説明と言えるでしょう。

言い換えると、この説明は、3万円を超える日経平均を説明できないですから、目先は調整して28,000円程度までの調整があり得るということになります。短期的には、このところの外国人の積極的な日本株買い付けは「カントリー・アロケーションの変更」つまりアメリカや欧州よりも出遅れた国である「日本のコロナ禍からの正常化に魅力がある」という理由から来ている可能性が高く、一巡すれば落ち着いてしまうかもしれません。

また、深刻な景気後退は避けられてもアメリカの実質GDP成長率が2四半期程度のマイナスにより失業者が増える可能性はあります。その場合、市場心理が悪化して一時的に「カントリー・アロケーション」はそのままでも、「アセット・アロケーション」が変わり、株式を売って債券に資金を振り向ける投資家が増える可能性があります。

その時にはインフレが落ち着いているでしょうから、債券が買いやすいと思われるかもしれません。日本株も世界の趨勢から一時的に売り越しとなる恐れは可能性としてあります。


日本株、今から投資した方がいい?

さて、「今から」どうするかを考えるのは投資ではなくて投機です。長期投資であれば、タイミングを気にすることなく、日本を含む世界にバランスよく投資することが好ましいです。

もし現時点でなんらかの理由で日本株の保有をゼロにするなど日本を避けている人ならば、ここは日本株に投資した方がいいでしょう。日本の万年割安が修正される可能性はこれまでになく高まっています。

もちろん絶対にそうなるということではなく、その可能性が高まったという趣旨です。理由は、日本がヒト・モノ・カネの過剰から不足への転換に至っているという過去に見られなかった変革期だからです。実際に変革が起こり未来を変えるのかに100%自信があるのではないのですが、高水準の輸出と内需の急回復で、変革の確率がこれまで見たこともないほど高まったと思います。

コロナ禍からの内需の回復は構造的な変化ではなく一種の景気サイクルなのですが、ヒト・モノ・カネの過剰から不足への転換の大きな助けになると見ています。さらにこの状況から、日本の経営者のアニマルスピリット(野心的な意欲)が改善し、リスクを取らないほど成功したリーマン・ショック後の日本から脱却できます。そして、リスクテイクが望ましい日本になれば、(vol.33で述べたようなマイナカードではなくとも)イノベーションが進み、積極投資、賃金の戦略的な上昇などが続き、良い日本への期待が高まり、日経平均はこれから数年のうちに4万円を目指すポテンシャルがあります。

これまで日本を意識的に避ける投資をしてきた投資家は、このような日本のデフレ体質から脱却する可能性を考慮に入れてみてください。ただし、投資の中心はくれぐれも世界の株式、REIT、債券に、個人の投資目的に応じてバランスよく投資されていることが前提ではあります。


日興アセットマネジメント 神山解説

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