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信山社の倒産

(2016/11/29記)

 今日は朝イチ、晶文社の島田孝久さんがFBに衝撃のニュースを書き込んで、暗澹たる一日を送りました。

 深い事情はわかりません。でも、本の街・神保町の一等地に店を構え、名にし負う岩波のブックセンターを看板に、長らく唸るような棚作りをしてきた書店が、代表取締役が亡くなって一月ちょっとで破産宣告ってどういうことなんでしょう。そんなことあっていいんですかね。

(この数カ月は満足な補充もなく、棚はガタガタだった、とあとから聞きました…)

 岩波ブックセンター信山社の代表・柴田信さんと初めてご挨拶したのは二〇〇七年の年末、「神保町を元気にする会」が立ち上がったのを機に、鷲尾賢也さんが柴田さんをムダの会のゲストに呼んだのがきっかけでした。上海ガニと紹興酒を片手にイタロ・カルビーノで盛り上がったのは覚えているのですが、話の脈絡はもう忘れました…。

 元気にする会が発行する「神保町が好きだ!」も今となっては、著名作家が執筆する凄い冊子になっていますが、創刊当初は手弁当も良いところで、鷲尾さんや柴田さんから電話がかかってきて「明後日までに一二〇〇字!」とか言われることがありました(笑)。下っ端働きが妙に愉しかった頃のお話。

 あいにく創業以来、京橋に居を構える千倉書房は神保町とはやや縁が薄いのですが、私個人は学生時代以来、まぁはっきり言ってもの凄い金額をあの界隈に投じてきた訳です。信山社でもそこそこ買い物させていただいた自信があります。

 私のようなしち面倒くさい本読みをして、あそこへ行けば必ず何かあるという確信を抱かせ、その期待に間違いなく応える書店というのは、よほどのスペースか工夫・脈絡がなければ難しいわけで、三木さん、神矢さんの紀伊國屋新宿南店とか、吉田さんの紀伊國屋新宿本店とか、徳永さんの丸善福岡とか、古田さんのちくさ正文館とか…、今泉さんのリブロまで遡っても、そんなにたくさんはないわけです。それだけでも凄いこととしか言い様がありません。

 先日伺った柴田さんのお別れ会の会場が、まさか鷲尾さんを偲ぶ会と同じ会場とは思わず、正直、如水会館の階段を上がりながら全身から力が抜ける思いがしました。鷲尾さんの会の時、会場で流したムービーは私が編集したんですよ。柴田さんのムービーもやらせてほしかったなぁ…。

 そろそろ二本目のワインが空くのでやめます。全然本を読まない編集者とか、自分の好みだけで本を並べる書店員とか、読者を置き去りにする著者とか、いろいろなことが頭をめぐって泣きそうです。

 最近、「趣味は読書」というヒトが信用できません。ビックリするくらい大勢いて疑いのまなざしを向けてしまいます。そんなに趣味が読書の人がいるなら、信山社がこんなことになっているわけないじゃないですか。

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