「G」の恐怖
(2019/09/04記)
どんなにチェックしようと誤植はけしてなくなることがない。だから編集においてクロスチェックはとりわけ重要な作業である。
誤植は怖ろしい。黒くてツルツルしているわけではないが、一匹居たら一〇匹居ると思え、とは先人たちの至言である。略すと「G」なのもどこか因縁めいている。
何度見ても、何人で見ても、その目をコッソリ掻い潜ろうとする輩は必ずいる。こちらも経験則や体力の限りを尽くして怪しいところをチェックするから、ありがちなエラーはそれなりに潰すことが出来る
しかし、時々、堂々と正面から出ていこうとする奴がいて、あまりにも堂々としているから、あぁ、そんなもんだっけ、などと油断して後ろ姿を見送って、思い切り足下をすくわれたりするので侮れない。
などと、すっかり前置きが長くなったが、本日、著者、編集者、デザイナー、印刷営業のチェックを二往復した挙げ句、まんまとすり抜けそうになった犯人を検挙した。
カバーの著者名のローマ字表記という、ずっとそこにあったデータが入れ違っていたのだが、何故、色校まで誰も気づかなかったのか本当にわからない。
見た瞬間、アラームがフルボリュームで鳴り響いたが、チェックしたのが朝の4時だったため、何がどう間違っているか、私は一瞬見失ってしまった。ゲシュタルト崩壊みたいな感覚とでも言おうか。
その結果、まず自分が寝ぼけたかと思い、次いで老眼を疑って目をこすり、とうとう観念して見落としを認めるという三段階認証が必要だった。
それでも印刷に掛かっていなかっただけまだましで、仮に刷り始めていたら大ダメージは必至だった。
ひとまずデザイナーが一時間で修正したデータを造って、印刷所が三時間でカラープルーフを出すという荒技で事態を乗り切った。
誰もが一度以上目を通したはずの原稿・ゲラであり、みんな少しずつ後ろめたいところがあったのだろう。極めて迅速にリカバーは進んだ(苦笑)。
それにしても正直久々の冷や汗だった。来週には別の本の責了がある。いよいよ気を引き締めて臨まないといけないと反省中である。