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出版社の利益というファンタジー

(2022/09/03記)

 本体価格2000円の本を作るとしますね。

 現在、消費税率は10%なので、読者は2200円でその本を手にすることになります。

 本は、他の商材における「問屋」に相当する「取次」を通じて市場(書店)に流通します。

 出版社は、それぞれ契約している掛け率で日販、トーハンといった取次に商材(本)を卸します。

 掛け率の数字は取次・出版各社ごとにまちまちなのですが、おおよそ60%くらいが相場ではないでしょうか。

 つまり本体価格2000円の本は1200円で取次に卸されるということになります。

 取次のマージンは8~10%と言われています。書店の取り分は各チェーン・店舗によって異なるものの19~27%あたりだと思われます。

 したがって、本体価格2000円の本が1冊市場で売れることで、取次には160~200円、書店には380~540円の利益が落ちると考えればよいでしょう。

 利益を出すために出版社が製作にかけられる原価は35%が限界だと言われているのですが、じつはこの数字は私が業界に入って30年近く、あまり変わっていない気がします。

 ここには著者印税も含まれます。かつては10%が一般的とされていましたが、長引く出版不況のうちに低減されることも増えました。

 いずれにせよ原価率が、印税10%+直接原価25%を合わせた35%を超えてしまうと、本来の利益部分を食い潰してしまい、売っても収益が上がらないということになってしまうわけです。

 本体価格2000円の本は制作費700円以下、もし著者に印税を10%(200円)払うのであれば500円以下で作らなければなりません。

 2000円の本を売って出版社が手にするのは1200円。そのうち700円は制作費なので残るは500円。

 ここから宣伝広告費、およそ10%内外を引くと残りは300円。

 これが本体価格2000円の本を1冊売ったときの出版社の利益ということになります。

 会社の家賃も通信費も光熱費も、私のお給料もここから出ていると思うと「本は高い」といわれるたび感じる寂寥感を少しは理解してもらえるでしょうか(苦笑)。

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