58 日め 岩城は歌がうまい
「はね駒」「エール」「純情きらり」
全部が再放送ってやっぱり非日常だなあと思う58日目(日曜は入っていません)。
そんな生活ももうあと少し。あと8日(日曜は入っていません)で「エール」再開です。結局、全然、「朝ドラが止まった日」を更新できなかったのですが、残り8日、カウントダウンでもしますか。再開ウォームアップも兼ねて。
最近、なぜか目覚ましがならなくても8時に目が覚めるのです。この3ヶ月、9時くらいまで目が覚めなかったのに。
12週・スピンオフ週に突入で、副音声は恵(仲里依紗)。はじまったばかりのときは視覚障碍者の方へのガイドに使用されていた副音声のチャンネル(っていうのかな)を再放送だけ特別に登場人物の解説にしたからか、みなさん、視覚障碍者の方向けのガイドのトーンでやっていて、キャラクターと合わなくて戸惑っている印象でしたが、じょじょに内容もしゃべり方も砕けていきました。
最初に自由にやったのは、保(野間口徹)だったかな。梅(森七菜)も良かった。そして恵は「古本屋の恋」は自分たちのターンだからハマっていた。余白の感情みたいなものを恵が補完しているみたいで、副音声の理想形がようやくできたんじゃないだろうかってところでもう終わりで、いまとなっては少し残念である。
さて、スピンオフは三部作で、一部は、亡くなった安隆(光石研)が幽霊になって妻と娘のもとに現れるお話。
梅と光子(薬師丸ひろ子)が馬具職人の岩城(吉原光夫)が「歌がうまい」というおしゃべりをしていた回を再放送した、その日、東京芸術劇場にミュージカル俳優としての吉原光夫さんを観たのは偶然以外の何者でもありません。
ミュージカル「VIOlET」は、蜷川幸雄さんに育てられた気鋭の演出家・藤田俊太郎さん(”NINAGAWA STUDIOの人々”WEBの初期スタッフのひとりで主に撮影担当でした)がロンドンで初演したもので、外国の方々とつくったものを、日本人でもやる企画。傷ついた少女が救いを求めてバスに乗って旅に出て、乗り合わせた人たちと交流していく。吉原さんは少女と心を不器用ながら通わせていく軍人役です。
劇団四季出身で「レ・ミゼラブル」のジャン・バルジャン役もやるくらいだから、「歌うまい」に決まっている吉原さんです。プロに「うまい」は失礼ですらあります。
歌い始めた途端、客席中に声がきれいにまわって。なんていうか、客席を鍋とすれな華麗に溶き卵を回し入れるみたいな感じとでもいいましょうか(なにそのたとえ)。とにかくホンモノ感がありました。もちろん音響の力もあるとは思いますが、客席に背中を向けていても歌詞が明瞭。
腹筋を伝わった声は、見てる私のお腹にチョクに響いてくる。まさに楽器。私はこどものとき、太鼓の響きにカラダが共鳴してあまりにそれがすごくて具合悪くなることがよくあったのですが、それは悪いことではなくてそれだけ凄くて、まだ幼かったから受け止めきれなかったんだと思うのです。それが今回、久々に強く響いて、カラダの内側が揺さぶられたのは、久しぶりに本格的な歌を聞いたからだと思います。
コロナ禍で再開した演劇でわたしが見たものは歌のあるものばかり(というほどまだ見てないが)なんですが、これだけガツン!と歌を聞いたのは久しぶりだったからカラダが驚いてしまったんじゃないかな。
ダンサーが1日も休まずレッスンしないといけないように、観劇するカラダも休むと幼い経験の少ないカラダになってしまうんじゃないか。でもそれは逆にいい。
純粋な歓びを体験できたのだから。
コロナ禍はいやなことが多いけれど、改めて大切なものについて考える機会をくれたとは思います。
「VIOLET」の詳細は、4日〜6日までが本番なのでまだ書かないでおきます。
ちょっとだけTweetしておきました
『エール』は吉原さんのみならず、山崎育三郎さん、古川雄大さん等々、ミュージカル俳優がたくさん出ているんですが、主人公・裕一のモデル・古関裕而さんが、
「オリンピックマーチ」を作る前に、東宝のミュージカルにたくさん関わっているんですよね。ドラマのクライマックスは1964年東京オリンピックなのは、第一話でわかっているんですが、その前のミュージカルや演劇(「放浪記」の音楽も!)のエピソードをやってほしいなあと期待しているのですが、はたしてやってくれるでしょうか。菊田一夫さんは出てくるでしょうか。