
あなたの物語を世界へ ― TPCi公式キャスター Ethan Hegyiインタビュー|それぞれのYOKOHAMA vol.5
ポケモンカードゲーム世界一が決まる、ポケモンの祭典 Pokémon World Championships が2023年8月、横浜で開催されます。日本発のゲームであるポケモンカードですが、その世界大会が日本で開かれるのは史上初めてのこと。「それぞれのYOKOHAMA」はこの記念すべき大会に対する想いを聞く連続インタビュー企画です。第5回はキャスターとしてWCS 2023への参加を目指す、Ethan Hegyiさんです。
数か月に一度開かれる大型の公式大会。もしあなたが抽選に通って参加できれば、きっと楽しい経験が待っているに違いない。見慣れないデッキ、新しい相手との対戦、それらは間違いなくワクワクする瞬間だろう。けれどもそれは、全ての人が味わえるわけではない。抽選に通らないこともある。会場が遠すぎて行けないこともある。予定が合わないこともある。
そんなとき私たちは、動画サイトを開き、その大会の生配信を覗いてみる。
誰が勝っているのか。どんなデッキが活躍しているのか。次のプレイは何か。何を引けば勝てるのか。私たちは配信卓の両側に映るプレイヤーのアクションに目を奪われる。
そしてそれを、時には冷静に、時には熱く盛り上げる役割の人たちがいる。対戦の実況と解説だ。いま何が起きているのか、これから何が起きるのか、視聴者に必要な情報を的確に届けるのが、彼ら彼女らの役割だ。
今回のインタビューでは、そんな、ポケモンカードの配信席に座る側の人に話を聞いた。ただし、日本の、ではない。The Pokemon Company International、つまりは海外公式大会の配信キャスターを現在進行形で務め、かつ日本を拠点に活動している、HegsterことEthan Hegyi氏である。
[注:The Pokemon Company Internationalは、以降はTPCiと略記]

ポケカとの出会い、そして日本へ
「出身はアメリカのニュージャージーです。直近6年間ポケカをしていますが、初めてポケカをプレイしたのは7歳のとき、マンガを扱う本屋に立ち寄ったのがきっかけでした。そこでたまたまポケカに出会い、それ以来、やったりやめたりですが、ポケカをするようになりました。
それから2016年、ナショナルチャンピオンシップに初めて参加したとき、私はポケカに対して恋に落ちました。そこからずっとポケカにどっぷり浸かっています」
インタビューの冒頭で自己紹介をお願いすると、言い淀むことなく経歴を述べてくれたあと、「恋に落ちた」という語で自身のポケカ熱を表現してくれた。当時Ethanが通っていたのは、毎週末になると年齢層もバラバラの人たちが集まるような、地元の小さなショップだったという。
読者のために付記すれば、Ethanは現在20歳。配信チームの中でも最年少だ。十代の頃は様々な趣味に心惹かれるものだと思うが、なぜポケモンカードを選んだのだろうか。
「ポケカは、知れば知るほど、その奥行きや複雑さが見えてきます。ポケカは単純なゲームでは決してなく、そこには戦略があり、デッキ選択があります。大会に臨むのであれば、それ相応の準備が必要です。おそらく私が惹かれたのは、たとえばカジノでトランプをプレイするときのような運の要素と、チェスをプレイするときに求められるようなスキルの要素、その組み合わせなのだと思います」
カジノでのトランプやチェス。その比喩からも、ポケモンカードの競技性に強く心惹かれていることが伺える。海外のポケカといえばバリバリの競技志向、というのは、多くの人がイメージするところだろう。
ではなぜ、Ethanはいま日本にいるのだろうか。
「実際、留学はしてみたいとずっと思っていました。ただ高校を卒業するときも、卒業後に何がしたいのかはあやふやなままでした。いくつか選択肢もありましたが、そのとき考えていたのは、何がしたいかよりも、それをどこでしたいかの方が重要なはずだ、ということでした。
ポケカに触れてきたことで、私の中では日本が選択肢のトップになっていました。自分に合いそうな留学プログラムも、うまく見つけることができました。これで、ポケカでやりたいことを追い続けながら、自分の将来のためにもなる、と思いました」
高校生のころただ何となく生きていただけの筆者には、大変に耳が痛い話だ。日本への留学はずっと以前から計画していたのだろうか。
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