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秋田旅行記
秋田か鳥取か栃木だった。
そもそもは青森を訪れて以来だけど、行ったことのない都道府県を旅したい、という欲求がふつふつと湧き続けている。その土地のものを食べ、その土地のものを見る、というシンプルな目標だけを立てて、ひとりでふらっとでかける。夜行バスを使うか、新幹線を使うかは、疲労の具合で決める。気になった横道に入ってみたり、一駅、二駅分を歩いてみる。朝からお酒を飲んでもいい。普段はあまり知らない人と交流することはないけれど、旅先にはぼくを知っている人間もいないから、自然、自然的、にぼくは話すことができる。
そういうわけで秋田だった。
日程が十一月の上旬になりそうだったのが、秋田になったことの一因だ。もう少しあとになると雪に覆われて移動が叶わなくなってしまう。栃木は、まあいつでも行けるので秋田か鳥取。雪か砂漠。その二択になったら、ぼくはおそらく雪を選び続ける。いぶりがっこも大好きだし。
【1日目】
バスタ新宿から、夜行バスで横手まで向かうことにする。結局睡眠薬で眠るとはいえ、年々夜行バスがきつくなってきているので、今回ははじめて三列独立シートを予約してみた。夜行バスが苦痛な理由の七割は隣人ギャンブルに由来するからだ。実際乗ってみると、かなり快適だ。乗っていて思い出したのは、数年前に仙台に行ったときもこのタイプのバスに乗っていたことで、夜行バスに対してたぶん移動する箱、以外のなんの思い入れもなかったので忘れていたのだと思う。Spotifyがいくらでも通信制限なく聴けるプランに入ったおかげで音楽を聴きながら眠れるから、Geordie Greepの『The New Sound』をリピートさせながら眠った。ジャケットの印象が強いのだけど、ソウルとかジャズとかごちゃまぜになった変なアルバムだ。
朝の7時半くらいに横手駅につく。いきなり秋田市に向かわずに横手に降りたのは、ひとつは漫画美術館に行きたかったからで、もうひとつは南の方から北上して秋田をぐるっと見ていきたかったからだ。降り立つと東京とはまったく違った寒さの質が肌を覆う。身に覚えがある。これは冬の長野に似た、刺すような寒さだ。東京の寒さは、いつも夜のような湿気を含んでいる。この乾いた寒さは、きっと目の前に広がる風景にも由来している。建物が何もなく、ただ風が吹いている。秋田へ来た、という実感はまだなく、どこか懐かしいような感傷がくる。
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まずは十文字駅へ向かおう、と思ったのだけど、時刻表を見てみると次の電車は9時23分で、二時間ほど待つ必要があった。のちに、この縛りのおかげでちょっとしたかなしみに遭遇するのだけど、旅に行くときはすべてをふわっと調べるくらいに留めておいて、偶然性に半分くらいは身を委ねることにしている。寒く、荷物もあったので横手駅付近を散策してみることにした。
駅を出ると、木々が冬囲いされている。まだしまっている定食屋の軒先には干し柿も吊るされている。
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ああ、雪国だ。ここでもやはり、実家に吊られていた柿のことを思い出す。実家には渋柿の木も栗の木も桃の木もあった。時期になると足の裏で毬栗を剥いたり、桃の産毛でぞわぞわとしたりしていた。いま、祖父母も亡くなり、それらの木は伐採されてしまった。もう、あれらの木は過去形でしか語ることができなくなっている。手袋をもってきていなかったので、あたたまるためにコンビニでお酒を買った。にごり酒ぬぐだ丸。たぶん、あたたまる、というような方言だろう。旅先のコンビニに入ると、地域限定のカップ酒が売られているのがうれしく、つい買ってしまう。有名な出羽鶴のお酒のようだ。暖房の効いた待合室があったので、電車までそこで待つことにする。
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横手出身の高橋優の写真がそこここに貼ってあったり、B級グルメ横手やきそばの地図や食べ方が貼ってあったり、無料の絵葉書が置いてあったり、ローカルゆえの居心地のよさがある。
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テレビでは「カップル補助金」なるものの政策が紹介されている。男女の交際費を市が負担してくれるらしい。カップルの基準は、という大きな疑問が沸くけれど、でもこういう大胆な政策が実施されているところに、秋田の、少なくとも横手の苦悩を感じとれる。若者が消え、自殺率が高い。
石川達三の『私ひとりの私』を持ってきていたのでそれを読み始めると、
生れた所は秋田県横手町ということだけ聞いているが、たしかにそこで生れたという証拠は、私には無い。
という一文が目に飛び込んでくる。こういう体験を繰り返していくと、やがて現在と過去、散文と身体、が溶け合い、いまここを生きられない人間が完成していく。身体消失の気持ちよさ。十文字駅に移動しようと改札を通ろうとしたら、デジタルサイネージの奥羽本線の院内-新庄駅間が大雨の影響で不通になっている、という表示が目に映る。7月の災害が、いまでも影響を及ぼしている。のちになって知ったけれど、この区間を非電化の電車で復旧させよう、という動きがあるらしい。いま、この区間に住んでいる人はどのように生活しているのだろう。廃線になることなく、新たな形で復活するのは、東北では珍しいことのようだ。
駅を降りるとがっかりすることがある。
同じような思想によって設計された、ペデストリアンデッキ。似たようなチェーン店に、似たような駅ビル。旅行に出て、そういう駅前の風景に出会うと、ああ、そうか、と思ってしまう。秋田は一度もそうならなかった。
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十文字駅は時間帯の問題もあるだろうけれど、ほぼ人がいなかった。まんが美術館の最寄り、というのと、ちょっと気になるお店があったので、そのために十文字へ来た。朝の六時から営業している、「味一番」だ。評判は高いものも低いものもあるけれど、一貫しているのは店主が物凄く喋りかけてくる、ということと、内装の癖が強い、ということだ。確かに店内写真を見る限り「電解還元水」のような怪しげな表記や、三島由紀夫の小説くらい所狭しと貼られたポスターの類がやや怖くもある。ただ、朝から空いているのに加えて、ぼくはかなり面白そうだと感じた。キャリーケースを転がしながら、十数分を歩く。途中、閉校した小学校を見つける。
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人口の減少が強く印象づけられる。なんの縁もない小学校だけど、泣きそうになってしまう。風のようなデザイン。太いフォント。でも、そこには誰もいない。子供の楽しそうな声だけが、校舎の残る限り永遠に響く。
味一番、入ると暗くやっているか不安になったけれど、声をかけると「やってますよ~!」と店主が電気をつけてくれる。写真で見た通りの店内、予想通りの店主。奥の方には座敷もあって、宴会にも利用できるのだろう。ビールと横手やきそばを頼んで飲んでいると、サービスといってキムチや柿をくれた。店主は、銀座で寿司屋の修行をし、こちらに帰ってきてから中華料理屋をはじめたらしい。なんで? トイレの入口に旧硬貨が飾られていたので、その話もすると、専用の冊子をもってきて見せてくれた。何枚かは盗まれてしまい、空きになっているようだけど、ほとんどがコレクションされている。とにかく、変な人だな、と思う。でも、変であるまま生きているのは、とてつもなく光だ。朝からお酒を飲むのが好き、というと「それがストレスを貯めない秘訣!」と豪胆に笑う。
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お暇して駅前に戻り、まんが美術館まで歩こうかな、と一瞬思ったのだけど、ちょっと遠そうだったのでタクシーに乗ることにする。一度踏切を渡ってしまうと、なかなか反対側に戻れない。これは田舎あるあるだと思う。
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途中にマタギ料理の店があった。これは秋田らしい。ジビエではなく、マタギ料理。熊谷達也の『邂逅の森』や吉村昭の『羆嵐』のことを思い出す。熊と退治したときの緊張、雪山の凍えるような寒さ。
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タクシーでまんが美術館に向かうと、まさかの閉館であった。しっかりと情報を見てからいけばこんなことにはならなかったのだけど、運転手の人も「閉まっているのを見たことがない」と言っていた。ここでしばらく時間を潰す予定だったので、大幅に予定を変更することになった。
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まあ、それはそれでいいのだけど、ただタクシーで二千円を払う人間になってしまったので、せめても、ということで秋田の話をたくさん聴いておいた。飲むべき日本酒、飲むべきではない日本酒、青森と秋田の気質。十文字ラーメンも食べてみたかったのだけど、先ほど焼きそばを食べたばかりだったので、大曲へ行くことにする。
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「BAILEY BOOKS」に立ち寄るだけの予定だったけれど、時間ができたのでゆっくり大曲を見て回ることにした。アルバイト先に青森出身の学生がいて、「秋田って行ったことある?」と聞いてみたら、大曲の花火大会には行ったことがある、という返答だった。大曲の花火大会。いいですね。駅を降りると、花火玉が迎え入れてくれる。「BAILEY BOOKS」はすぐ駅前にあった。おしゃれな店内に、見慣れた本が売られているのを見ると安心する。たぶん海外旅行でマクドナルドを見つける、みたいなことだと思う。せっかくなので、何か秋田に関する本を、と店内を見ていると「秋田魁新報社」という出版社の本が見つかる。十文字の駅前に、秋田魁新報の新聞が売られていて記憶していた文字列だった。工藤一紘の『露月と子規』を手にし、大曲を歩き回ることにした。
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NEWDAYSで買ったかむかむホワイトソーダを食べていたのだけど、さすがにお腹が減ってきたので何かを食べることにする。歩いていると鴨だし中華そばの文字が見えたので、「中華そば今野」で昼食をとることにした。町田にあった「鴨 to 葱」が好きだったのに新宿駅に移転してしまってから、鴨だしを求めていたところだった。中には作業着やオフィスカジュアルに身を包んだ人が数組いて、地元の人の通うお店なんだな、と思った。とても、とてもおいしかったです。鴨だしが好き。
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漫然と花火資料館に向かっていると、急にお腹がいたくなり、丸子川に差し掛かったあたりでもう駄目か、と思ったのだけど、なんとか資料館にたどり着いて事なきを得た。この丸子川も、しだれやなぎが土手に撓垂れ、遠くには山も見え、秋の高い空と相まってひどく散歩日和のロケーションだった。花火資料館は職員以外誰もひとがいなくて、大曲の、花火それ自体の歴史に関する展示をゆっくりと見ることができた。蓮の花のような機械に色のついた玉をはめ込むことで、オリジナルの花火を作れるエリアもあって、花火を飛ばしてみた。もちろんバーチャルだけど。制限時間が決まっていて、そのわりには台座が大きいからたぶんひとり用ではないのだろう。
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花火大会らしい花火大会に行ったのはもう何年も前のことだ。米津玄師の『Bremen』が出た頃だったから、もう9年前になる。絶対に混むから嫌なのだけど、来年は行ってみるのもいいかもしれない。電車まではしばらくあったので、あたりを歩いてみる。花火会館のドアには雀蜂が挟まって死んでいる。丸子川には白い鳥が足を洗っている。福祉会館、という場所でよくイベントが行われているようなので歩いてみたら、なんでもないような広場だった。氷屋や燃料屋など、雪国でしかみないようなお店があるのも嬉しい。
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いまから思い出話をします。
ぼくは吹奏楽部だった。長野県の冬は寒く、練習室には暖房はなく、ストーブだけしかなかった。学校の開いている日なら灯油場から灯油をもらってくればいいのだけど、休日の練習となると寒くて凍えてしまう。どうしようもないときは旧寮からこたつを持ってきて、それをひっくり返して暖をとっていた。その寮も空いていない日があった。みんな凍えていたのだけど、ひとりの学生が機転をきかせて近くのガソリンスタンドに灯油を買いに行った。ガソリンスタンドは車に給油するだけでなく、灯油自体を売ってもいるのか、という新鮮な驚きがそのときはあった。
まんが美術館に行かなかった分余裕ができていたので、当初の予定にはなかった角館に立ち寄ることにする。出発まではまだ時間があるから、駅前の「三日月珈琲店」で小休止。
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ほとんどの喫茶店がしまっていたのは時間のせいなのか平日のせいなのかはわからないけれど、とにかく静かで落ち着ける町だった。石川達三を引き続き読む。読んでいると、石川達三の母親の出身地として角館が出てくる。まるで石川達三の小説を追うような旅になっている。待ち時間も、電車に乗っている時間もたっぷりとあるから、好きなように本が読める。これもひとりで旅行をすることの効用だろう。大曲はSuicaの対象エリア外だから、現金で切符を買う。切符を買うのも久しぶりだ。
角館は秋田の名所のひとつだけど、当初の予定になかったのは武家屋敷にそれほど興味がそそられなかったからだ。でも、あえてそういう場所へ行くべきであったな、とあとになって思う。予定調和な場所で得られる快よりも、思わぬ体験による快のほうが大きいからだ。調べてみると新潮社記念文学館があるようだったので、歩いてみる。お土産屋さんには乾燥した稲庭うどんが売られている。ぼくは杉のブックカバーを買った。青森では太宰治のブックカバーを買ったから、津々浦々のブックカバーを集めるのもいいかもな、と微かに思った。途中、ブティックの脇に柴犬よりも一回り大きな犬が眠っていた。気だるそうな表情のその犬が、どうやら秋田犬らしかった。
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結局、ぼくはここでしか秋田犬を見なかったので、もしも角館に降りていなかったら秋田犬には出会っていなかったことになる。撫でたい、と後ろ髪をひかれつつも更に武家屋敷の方へ進む。新潮社文学記念館には、石造りの『雪国』のモニュメントがあり、Yondaの彫刻があり、完全に新潮社だった。
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どうして新潮社の記念館が秋田にあるかといえば、創業者・佐藤義亮の出身が角館だからだ。当時文学界をほとんど支配していた硯友社に真正面から喧嘩を売ったのが佐藤だ。田山花袋、国木田独歩、明治の文壇が生き生きと蘇る。面白かったのは、新潮社の世界文学全集が新聞におけるはじめての見開き広告であった、ということ、角館出身の歌人・平福百穂が岩波文庫のカバー裏、蔓草模様のデザイナーである、ということだ。もっとも、正倉院に納められた古鏡の紋様の模写ではあるらしい。
付近の文学関係地図、というのを見てみると石川達三の母・うんの生家という表示があって、声を上げそうになる。ちょうどいま、小説は母親への愛、父親への憎しみというエディプス・コンプレックスを達三が率直に回想する部分に差し掛かっている。これは行かないと、とその地図の辺りを歩いてみるのだけど、何の手がかりもない。第一回芥川賞作家であっても、その母親のことはインターネットにも書いていない。そういうわけでだいたいこの辺りだろうか、と当たりをつけた場所をうろうろとし、父を憎みながら暮らした幼い頃の石川達三に思いを馳せる。小田原の文学館あたりも似たような雰囲気だった。木々から差し込む光。
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このあとは宿泊地である水沢温泉にいくため、田沢湖駅へ向かう。こんな近距離で新幹線に乗るのがはじめてで、自由席で問題がないのに間違えて指定席を買ってしまう。たった10分程度しか乗らないのに……。バスの時間にあまり余裕がなくて、本来は田沢湖駅のスーパーで食材を買って、温泉宿の調理スペースで調理しようと思っていたのに、それを断念せざるを得なくなった。そういうわけで、またもNEWDAYSで「ぼだっこ(塩味の強い鮭)」のおにぎりとバター餅だけいざというときのために買っておく。新幹線の停車する駅とは思えない幅のホームには、もちろん自殺防止柵もついていない。あまりに危険すぎて、かえって笑ってしまう。隣には秋田内陸縦貫鉄道の駅もあり、何人かはそちらの写真も撮っていた。
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田沢湖駅からはバスに乗って水沢温泉に移動する。バスの中は暖房ががんがんに効いていて、だんだん体調が悪くなってくる。外は真っ暗で、この日は田沢湖駅は見えなかった。降ろされたところは街灯もなく、完全に真っ暗な山の中で、一瞬遭難、という言葉が、ついで熊害、という言葉が脳裏をよぎる。昼間にマタギの文字を見たからだし、昨今のアーバンベアの問題もある。とにかく光を、と思いスマホのライトをつけると、遠くのほうに明かりが見える。どうやら、それが水沢温泉のようだった。安心した。明るいタイミングでバスに乗ることをおすすめする。
水沢温泉で部屋に案内されると頭痛がひどくなり、なんとか風邪薬を飲み、おにぎりを食べ、おさまるのを待つ。二万歩は歩いたので、足も疲れている。やや治まってきたので、入口近くの自動販売機を見るともつ煮とババヘラアイスのシュークリームが売られていたので、それを晩御飯にし、時間ぎりぎりに温泉へ入る。完全に貸切であった。銭湯に入ると何もかもが解決する。温いお湯と熱いお湯が選べるのが嬉しかった。銭湯は好きだけど熱いお湯は苦手なので。
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頭痛も治まってきたし、布団を端っこに敷いて眠る。WiFiが通じていなかったのと、ややカバーが汚かったのが気にならないでもなかったけれど。
【2日目】
予感がした。カーテンをあけると、舞う、よりは降る、に近いといってもいい雪が降っていた。今冬はじめての雪だ。
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予報で期待はしていたのだけど、実際に目にするとうれしい。用意をしてバス停へ向かうと、もうほとんど止んでいた。昨日はあんなに戦々恐々としたバス停も、明けてみると拍子抜けするほど近くにあった。夜は人を狂わせる。朝だと田沢湖もよく見えた。体の感覚では昨日の夜と同じところを通っているはずで、こんなに大きな湖が夜になると全く見えなくなるのって怖くて、だから好きだな、と思う。夜の海や夜の湖が好き。そこに入ったら絶対に死ぬことがわかるから。絶対に死ぬ、何かが近くにあることの安心感。
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二日目は秋田市内を留まるつもりで、また新幹線に乗って秋田市まで向かう。田沢湖駅の構内に黒倉遺跡の展示があったので、出発まで眺める。近距離で新幹線に乗るの、ちょっと背徳感があってうれしい。といっても、一時間くらいはかかるので仮眠をとりつつ、石川達三の『私ひとりの私』を読み終える。
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秋田駅に着くと、なにかカラカラとした音が聞こえて不思議に思いながら窓を見ると、霰が降っていた。霰、とても好きな自然現象のひとつだ。疲れたとき、よくYouTubeで異常気象の動画を見ていた。サイクロン、雷雨。でも霰、しかもバレーボールのような粒の降ってくる動画が好きだった。降るものは神聖だ。こころが跳ね上がるような心地で駅から出てみると、すでに止んでいた。雪も霰も、窓という額縁に飾られてみるものなのかもしれない。急に思い出したのだけど、今回の旅行には普段使っているシャンプーとコンディショナーを百均のボトルに詰めてもってきた。たいてい安い宿に泊まるので、安価なリンスインシャンプーで髪の毛がごわごわになるのがいつも嫌だった。脱色もしたことだし、ヘアオイルも持っていこう、と塗ってみたらつやつやになりすぎて、少しだけ萎えていた。どうしてこんなことを話しているかというと、この日の秋田が雨がちで嫌でも髪の毛を意識する一日だったからだ。前髪一ミリずれて彼とは一生お別れ、髪の毛がなんか嫌で学校を休んだことのある人、それはすべてぼくです。友人と合流。
秋田市千秋美術館ではダリ展が開催されていた。
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『エモーショナルきりん大全』にはダリの歌があって、あれは広島だったと思うのだけどそのときに見た『ヴィーナスの夢』に着想を得た。ダリの歌だけでなく、連作「エモーショナルきりん大全」自体がダリの、ヒエロニムス・ボスの影響を受けている。シュールレアリスム展には行ったけれど、ダリ単体での展示は久しぶりだ。そうして、この企画展にも『ヴィーナスの夢』がある。やっぱりダリは好きだ。今回はロブスターのイメージが印象的だった。ヨルゴス・ランディモスの『ロブスター』のイメージも、もしかしたらダリから来ているのかも、とふと思った。長く生きる、孤独な甲殻類。ロブスターの子宮は珊瑚色らしい。そんなに美しい動物だったなんて。
美術館のすぐ近くには千秋公園があり、散歩する。堀には無数の蓮の葉が乱立している。蓮の葉は怖い。怪物のお墓みたいだ。
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雨も落ち着き、高い木からはときどき露が降ってくる。マスクの内側がびしょびしょになる。久保田城は佐竹氏の入城したところらしい。日本の城には詳しくないのだけど、秋の終わりかけている広い公園は魅力的だ。名前もわからない赤紫色の木の実が落ちている。踏んだらたぶん汁が出る。高い場所にあるから、町を眼下に見渡せる。噴水があり、休憩所があり、蓮の池がある。晴れていたらもっと気持ちいいだろう。広い公園が近くにあるのは、何にも変え難い町の美点だ。たまに顔に樹雨が触れる。雪国の冬は気持ちがいい。
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お腹が空いてきたので、駅前の稲庭うどん「無限堂」で比内地鶏のうどんを食べる。鶏の出汁の旨味が染みていて、空腹の胃を脂が駆け巡る。夢くらい駆け巡る。思えば、秋田らしい食べものをはじめて口にしたかもしれない。
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雨が降ったり止んだりしている。秋田県立美術館ではロートレック展をしていたので、こちらにも行くことにする。ロートレックがとりわけ好き、というわけではないのだけど、ベル・エポックという時代に興味がある。秋田県立美術館の建築が面白くて、売店が広いひとつづきの窓になっていて、水鏡が設置されている。ソファーに座って、水面をうつ冬の雨を眺めているだけでも、よい時間が流れていく。
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藤田嗣治の大きな作品が展示されていたのが印象的で、企画展のなかではエルネスト・ローランの「10月の夕べ」という小さな作品がよかった。雨を避けつつ近くの施設に入ると、また秋田魁新報の、なんと『蒼氓』が売られていたので思わず買ってしまう。いつかは読んでみたかった、第一回芥川賞受賞作を、ここ、このタイミングで手に入れられたのは僥倖だ。帯に菊池寛の「芥川賞の石川君は、先ず無難だと思っている。」という言葉が書かれている。無難、なんだ。そのあとは秋田駅内のお土産屋で土産を買ったりする。金沢のときに学んだこととして、帰りの荷物を最小限にする必要がある。疲れている上に、一度は東京駅という人間の坩堝を経由しなくてはいけないので、両手に荷物で歩くと人間の抱きうるもっとも醜悪な感情に覆い尽くされそうになるから。そういうわけで、買ったもののほとんどをダンボールに詰めて郵送する。いぶりがっこは好きなので四種類くらい買った。
夜、予約しておいた居酒屋の時間までしばらくあったので、駅近くの「kissaten」という喫茶店で時間を潰す。
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最終回のような店名。内装も可愛く拘られていて、テーブルにはブーゲンビリア。窓には水滴がついていて、夜景を歪める。もともと輪郭があるわけでもない光が、さらに崩壊してもはや色としか呼べないような状態まで還元されていく。シューゲイザー。
「永楽食堂」は地域の有名店らしく、平日の夜、一週間前に予約したのにぱんぱんだった。所狭しと貼り付けられた日本酒メニュー、仕事終わりのサラリーマンや学生の熱気。今回の秋田旅行の目的地がここだった。
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食べたものはどれも美味しかったけれど、メヒカリの天ぷらが頭ひとつ抜けていた。ぼくが魚を好き、という勾配もある。カスベも面白かった。小型のエイのことらしく、一般的にはあまり食べられていないようだ。肝心の日本酒は、以下のものを飲んだ。抜けもあるかもしれない。
○龍蟠 特別純米酒
○刈穂 山廃純米
○天の戸 純米大吟醸
○雪の茅舎 美酒の設計
○一白水成 特別純米酒
○花邑 純米大吟醸
○刈穂 生原酒
○新政 NO.6 X
○新政 エクリュ
○新政 卯兵衛
○新政 亜麻猫スパーク
○新政 陽乃鳥
○新政 ヴィリジアン
○飛良泉 雛 山廃純米吟醸
○ゆきの美人 純米吟醸
○春霞 純米吟醸
○阿櫻 袋吊り
○阿櫻 裏
○阿櫻 特別純米酒 中取り
○稲とアガベ アルケミストマリカ
○稲とアガベ アルケミスト ヴァンクリフ
○ cry for the moon 特別純米酒
これはわれながらよく飲んだな、と思う。もちろん友人と分け合いながらではあったけれど。新政がまずの目標だったけれど、雪の茅舎の美酒の設計もたまらなく美味しかった。以前、普通の雪の茅舎、山廃のものを飲んだときはちょっと苦手かもしれない、と思ったのだけど、数ヶ月のうちに味覚が変わったのか、あるいは山廃の“意味”がわかったのか、これもまた秋田に来たことのひとつの意義だ。女将さんがとても優しい方で、最後に一杯気に入った日本酒を奢ってくれることになった。本人は姿を見せない。なんて粋な人だろう。
締めのラーメンはどうだろう、という提案で、歩いていくことにした。締めのラーメン、というのは京都にいたころはたいてい木屋町の「みよし」だった。振り返ってみると、高校生のころは「狼煙」だった。仕事をしていたときは「ちゃんぽん亭」。みなさんには伝わらないと思うのですが、いま、ここに、書くことでそれぞれの時代のぼくには居場所があったことを、もうそれらが取り返しのつかない過去へ去ってしまったいま気がついた。狼煙でにんにくを山ほど入れたことも、先輩に連れて行ってもらったちゃんぽん亭で、一度だけぼくが奢ったことも、もうこうして書かなければ存在しなかったことになってしまう記憶だった。
寒い夜道を、コンビニで買った「高清水」のカップ酒片手に歩く。
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クロノスタシスではないけれど。高清水はあまりにもメジャーなので避けていたのだけど、ここがそのタイミングだった。
「そば処 紀文」は旭川を越えた小さな歓楽街のなかにある、遅くまで営業しているラーメン屋さんだ。千秋麺が有名で、遅いのに仕事終わりのサラリーマンが溢れかえっていて、活気がある。活気に惹かれて、つい飛良泉の純米酒も頼んでしまう。肝臓が強くてよかった。お酒を飲む人はわかると思うのですが、酒を飲み続けた内臓に突然やってくる塩味って、光なんですよ。それもベタ塗りの光。大きな声が出てしまいました。
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友達と別れて、ホテルまでたどり着く。もうへろへろだったから、すぐに眠った。朝食バイキングつきにしたので、嫌でもちょっと早く起きなくてはいけない。幸福の子供としてねむる。
【3日目】
ホテルの朝ビュッフェ好き。小さい鮭と、ハムと、ポテトサラダと、ご飯と味噌汁。稲庭うどんもついていたけれど、昨日食べたから食べなかった。飲み物はオレンジジュース。いつも牛乳と迷ってこちらにしてしまう。食後には一杯の珈琲。素泊まりプランにすることがほとんどなので、たまにこういうことができるとうれしい。ホテルの入口には凍ってしまったフロントガラスを溶かす用のペットボトルが常備されている。
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これも雪国専用。金沢のときは、新幹線のチケットがとれなくてたいへんな目に会ったから、予め帰りの新幹線をとっておく。友人が車を出してくれる予定になっていたので合流をして、男鹿半島へ向かう。秋田港の道の駅の道すがら、SF的というのか、西洋的というのかも形容のし難い建築が急に現れる。
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渡辺豊和という建築家の手による、体育館らしい。体育館にしてはちょっとコロッセオすぎるというのか、中まで入ることはなかったけれど、ちょっと異常な建物だった。地方に行くと、変な建築が目に留まる。諏訪の島木赤彦資料館とかも、そうとう変だ。参考ページはこちら。
http://izumisumcd.blogspot.com/2015/04/blog-post_20.html?m=1
道の駅で「HOPDOG BREWING」のDDH IPAを買い、沿岸部の風景眺めながら飲む。風力発電と、火力発電と、釣り人。長野県では見られない光景だ。道には風車が立ち並ぶ。青森のときにも興奮したのがこの風車で、大きな人工物というのは無条件に興奮する。ミュシャの一般的な絵はあんまり、と思うのに、スラヴ叙事詩はすごかった。天井まで届くくらいに大きかったからだ。
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男鹿に入ると、そこここになまはげが見えてくる。そういえばなまはげも秋田だったな、といまさらわかってくる。
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なまはげ資料館も気になったけれど、今回は見送ることにした。ドライブしながら、音楽を聴くのが最高だ。路傍の石やいむ電波などを流してもらいながら、高低差の大きな国道59号を進んでいく。それにしても道の駅、っていうのは嬉しい概念だ。18歳で京都に引っ越してから、すっかり車の文化とは決別してしまったのだけど、それがゆえにサービスエリアや道の駅のような施設を観光客的に、全身で楽しめる。男鹿の道の駅は「オガーレ」という大きめな建物となっていて、お土産もたくさん売られている。昨日買ったのに、また買ってしまう。昼食は「東洋一の海岸線にある男鹿のレストラン」で男鹿定食を食べる。魚介のたくさん入った味噌汁を主食に、あきたこまちをかきこむ。店内で醤油ソフト「もろそふ」(Morozoffのパロディ?)もいただく。大王わさび農場のわさびソフトみたいな主張をすることのない、美味しいソフトクリームだった。
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歩けるところに、昨日飲んだ「稲とアガベ」の醸造所があるようだったので行ってみる。稲とアガベはクラフトサケで、昨日飲んだシリーズは酒ではなく完全にワインで、これはちょっと、なんというか、途中の味がする、というのが率直な感想だった。クラフトビールほどは流行っていないけれど、クラフトサケも最近よく見るようになってきた。JR男鹿線の果ての駅、男鹿駅もすぐ脇にあり、イベントの出来そうな広い公園に陽が照っている。
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ひとつの路線の、果ての駅って魅力的だ。新宿と小田原。梅田と河原町。わかりやすい、線分AB。稲とアガベでは試飲をした。運転をしてもらっているから、ぼくだけ飲むのもちょっと気が引ける。
○稲とアガベ 花風
○稲とアガベ どぶろく
○稲とアガベ 稲と富士山
花風はホップを感じる酒で、ああ、これならクラフトサケの意味がわかる、と思った。ラーメンにあう日本酒、というコンセプトで作っているお酒もあり、すごく楽しそうに思った。ペアリングの楽しさだ。ジンのような味のするお酒もあり、じゃあジンやワインとどうやって差をつけるのかが難しそうだ。
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男鹿の水族館GAOまでの道のりは、崖、崖、崖だった。車がないとまず来られない、僻地にあるにもかかわらず、人入りもまずまず。何よりもロケーションが凄まじくて目の前に広がる日本海には、マグマの冷え固まった鉾のような岩が切り立っている。大人しい海ではなく、峻厳な、それゆえに光る海がすぐそこにある。海風が寒かったけれど、水族館の外を散策するだけでも飽きないだろう。
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ハタハタで魚醤を作っていたり、海の漂着物を飾っているのも特殊で面白い。くるくると回り続けるシロクマ、干されて眠っているアザラシ、ライブの観客みたいに立ち尽くすペンギン、亀やエイの悠然と泳ぐ大水槽……。
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立地も含めて、すごく魅力的な水族館だ。ゴジラ岩を通り過ぎていた、ということだったので赤神神社に立ち寄りつつ、ゴジラ岩へ。やや日も落ちてきて、理想的な空の色になっていた。秋田の人はここらへんの岩肌で遊んだりするらしい。ちょっと歩いただけでも、奇妙な岩石が山ほどで、寒くなかったらもう少し見て歩いたかもしれない。
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今日の最終目的地は「寒風山」だ。頂上からは八郎潟や秋田市、男鹿が一望できるらしい。ちょうど半島の首根っこに聳える山。日が落ちる前に展望台に登れたら、と思っていると、ちょうど閉まる直前についた。木の一本も生えていないつるつるの山で、絶滅危惧種の植物があたりには生えているようだ。
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すごかったのはここの展望台で、なんとゆっくり回転している。展望台自体が、である。一度とまったらもう修繕できないのではないか、という気すらする。花やしきのジェットコースターみたいな、回転遊具、と思わず書いてしまいそうな、ロストテクノロジーっぽい展望台。ゆっくりと回転しながら男鹿半島をぐるりと見渡せる。日もすっかり落ちて、まさにベストタイミング、旅の終わりに相応しい光景だった。友人のはからいで「きりん亭」という料理屋で夕食をとることにした。「きりたんぽ」と「しょっつる空上げ定食」。空上げについては航空自衛隊加茂駐屯基地の考案らしい。びっくりするくらい安価で大量の唐揚げに、スプレーのしょっつる(はたはたの魚醤)をかけて食べる。今年ははたはたは不漁らしく、次に来る時は食べられたらうれしい。
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旅に来ると、生きてもいいかな、という方向へ自分をずらすことができる。生きてもいいかな。石川達三は『私ひとりの私』をこんな文章からはじめている。
人間は誰しも、他人から完全に理解されるということは有り得ないだろう。誤解されたままで生き、誤解されたままで死んでゆく。結局は孤独なのだ。
ぼくはこの言葉を希望としてとらえる。わたしはいつでもわたしを誤読できる。旅は恣意的なわたしの誤読だ。