“髪 を伸ばす =我慢 ”はもうやめよう! 編集部がゆく★伸ばしかけ イメチェン1年レポート (Vol.10 U-REALM 高木裕介 )
小社 アラサー編集が、体を髪をはって“伸ばしかけ イメチェン ”していく連載、ついに最終回です。校則、就活、結婚式などに備えて「髪を伸ばしている」女子、そしてそんなお客さまに心当たりのある美容師さんの 「それでも イメチェン したい!」に応えるべくチャレンジしてまいりました。ラストの イメチェン の結果はいかに?
この連載のルール
1 「長さを変えないで イメチェン させてください」とオーダーする
2 来店周期は1カ月半に1回がめやす
3 毎回 カット はマスト、カラー& パーマ は自由
髪型 の要素にはレングス(長さ)のほかに
● フォルム(形)
● 質感
が、変えられるポイント。この2つは、髪 の重なりや量感を繊細に調整する技術が求められるので大胆なレングスチェンジをしなくても微差で変えられる人は、カット がうまい美容師さんといえます。
この連載では、編集Nが過去に数々の カット 企画でお仕事した美容師さんのうち「腕に覚えがありまくりそう」なみなさまを独断でリストアップ。
毎回少しずつ変化を加えていただきながら 髪 を伸ばしていく様子を通して、 美容師 さんには「伸ばしている 」オーダーでも踏み込んで提案する勇気を、一般女性には「髪 を 伸ばす=我慢 」じゃない! というワクワクをお届けしてきました。
今回は10回目、いよいよ最終回です!
“誰でもかわいくなれる”
ロング ヘアのエキスパート!
1年前の8月にはショートカットだった髪も、すっかり伸びて ロング ヘアと呼べる長さになりました。
連載最終回の今回は、 ロング になったらずっと切ってもらいたいと思っていた人… U-REALM 高木裕介 さんです!
高木さんは表参道を始め、銀座・新宿・渋谷など都内を中心に11店舗を展開するU-REALMグループの代表。そんな経営者として手腕を発揮する高木さんですが、スタイリスト時代は雑誌の表紙やタレントのヘアメイクとして活躍しながらも、サロンワークでは1日約40人入客し、9割がリピートするというヘアデザイナーだったのです。
どれだけマルチなんですか。そんな人の カット やサロンワーク、ぜひ体感したい!と思いお願いしました★
ではまず、Beforeから
前回から1カ月半強が経過。すっかりロングですよね! 前髪を薄く取り、自然に短くしてもらったので、伸びてはきましたが自然にサイドパートでスタイリングできました。
また、個人的にはヘアカラーの褪色の仕方を褒められることが多かったです。黄色く褪色していくタイプの髪質なのですが、ほんのり赤みが残った自然なベージュで、肌色も比較的明るく見せてくれました。
そして! 最終回ということで、比べてみました… 左は連載第1回の仕上がり、右は今回です。えり足の伸びた長さを測ってみましたら、17cm伸びていました。
表面は段が入って短いのですが、それでも1年前よりは長いですよね。
「切りながらでも、11カ月でこれだけ伸びるんだ!」と、自分で始めたことながら改めてビックリでした◎
気持ちよく伸ばしていける
メンテナンス カット
高木 よろしくお願いします! 今回が最後なんですよね。どんな感じがいいとか、ありますか?
編集 そうです! 今後も伸ばしていくつもりではあるんですけど…。あ、そうだ。取材の中でうかがった“整形 カット ”、どんな似合わせをされるのか知りたいです
実は高木さん、弊社髪書房から『100万 レイヤー +60万の仕組み』という美容室向けの教育と技術に関する書籍を出版しまして、その中で“誰でも必ずかわいくなる カット 理論”について解説しているんです。私事ですが、その担当をさせてもらっていまして、実際にどうやって似合わせやカウンセリングをするんだろうと思い、最終回にお願いしたい!と思ったのでした。
高木 じゃあ、ちょっと髪の状態見させてもらいますね
高木 だいぶ段が入ってますね。上と下、前と後ろは結構大胆につながっていないんですね
編集 みなさんに毎回 イメチェン お願いするもんだから、どんどんデザインが激しくなっていくんですよね(笑)
高木 なるほど(笑)。今回は最後だし、これからも伸ばしていくということなので、つながっていないところをつなげて再現性を重視してデザインしていきましょう。整形カットというよりは、形状記憶メンテナンス カット って感じで!
編集 お願いします!
適度な重さとやわらかさが出る
高木さん独特の レイヤー カット
高木 こんな風に大胆につながらない ウルフ もデザイン性は高いんですけど、再現性や持ちの部分で扱いにくくなっていくと思うんです。なので、今つながっていない部分の長短をなじませるように レイヤー を入れていきます
1.バックを自然に落ちる位置で カット 。ハサミを縦に入れ、チョップ カット でラインが出すぎないように切っていくのがポイント。
2.サイドは前方に引いて、同じくチョップ カット で レイヤー を入れる。極端に短くなっている顔周りと1.できったバックサイドをつなげる。
3.トップを放射状に引いてカドを取るように レイヤー を入れる。
編集 耳前がだいぶハイ レイヤー になりましたね! これはこれで新鮮。
高木 全体の構成が ウルフ であることには変わりないので、 レイヤー 感は楽しめますよ。極端な長短をなじませることで、大人な ウルフ に仕上げていきます
5. 4.で切った表面と裾をガイドに、ミドルセクション(中間)に レイヤー を入れる。
高木さんのカットの場合、この レイヤー の切り方がとても独特です。指で挟んで引き出した髪をまっすぐ切るのではなく、指で扇状に広げてチョップ カット で丸く切っていきます。
ベーシックな切り方の場合、まっすぐ切って切り口に厚みを持たせたまま重ね、そこから量や質感を調整していくことが多いのですが、この切り方だと最初から隙間をつくって裾をなじませていくことができるのだそう。
高木 この レイヤー だと収まりもよいですし、切り口に隙間があるので動かしやすいんですよ。日本人の硬い髪質には合っている切り方だと思います
編集Nは硬毛直毛なので(博多ラーメンみたいと言われたことアリ)、やわらかくなじむロング、憧れなので楽しみです…♡
セニングで
重なりを調整していきます
セニングシザーズに持ち替えて、量感を調整していきます。
6.セニングシザーズで前髪を カット 。サイドとの間を間引いてなじませる
7.表面は毛先を中心にセニングを入れる
8.バックミドルは7.より深めの中間付近からセニングし、しっかり量を取る
編集 高木さんの カット って、セニングが規則的なんですよね
高木 レイヤー の段階でなじませているので、本当に要らないところだけを取るためのセニングで十分なんです。なんとなくではなくて、溜まりやすいところ、動かしたいところを正確にカットします。
たとえば、表面がペタッとしやすい前髪も、こんな風に…(セニング レイヤー を入れる)ちょっと長短をつくると、ふんわりが持続しますよね
編集 ほんとですね! ちょっとの手間で、持ちと扱いやすさが変わりますね
このセニングの理論は、スタイリスト時代に先生のカットしたウイッグを分析して研究して法則に落とし込んでいったそう。この、レイヤー ~ウエットセニングまでの理論・法則はU-REALMの「肩下の カット ベーシック」として、全員が共有して練習しています。
毛流れを見ながら
ドライセニングで仕上げ
編集 ドライ カッ トのときは、どんなところを見ていますか?
高木 ウエットとドライの違いは本来のクセが出てくることです。いろんな方向に髪を流しながら乾かした後、重なりや透け感、顔周りのニュアンスを見ながら最終調整します
9.バックミドルは、クセの強い部分を見極めながら深めにセニングを入れる
10.~11.5.で入れた レイヤー の切り口を調整。クセが出て厚みが不均一になっている部分を間引くようにセニングを入れる
編集 ドライセニングで耳周りの重さが取れてやわらかい透け感になりました!
高木 全体の質感がなじんでいるので、乾かすだけでこのニュアンスが再現できますよ
編集 質感まで形状記憶なんですね!
それでは、切り上がり★
やわらかいニュアンスの大人な ウルフ に仕上がりました! パーマが残っているとはいえ、博多ラーメン毛(硬毛直毛)とは思えないやわらかさと透け感に感動です。一番短いところと長いところをつなげたハイ レイヤー にも関わらず、適度な重さが残っているのも大人かわいく仕上がったポイントです。
また、ヘアカラーもトリートメントもしていないのに、ツヤが復活しているのに注目してほしい! 傷んでいるところをすべて切ったわけではなくて、自然につながるように切ってもらったことで、やわらかく収まっているのでダメージレスに見えるのです。
高木 今は切りっぱなしや重めが流行っていますけど、2019年からはこういう ウルフ が来るんじゃないかと思っています(^^)
理由は割愛しますが、書籍の担当編集として断言します。高木さんのこういったトレンド予測、2億パーセント当たります。そのあたりのヒミツも、書籍に公開してもらっているので、ぜひご覧いただきたいです…!
バックとサイドは前回取った厚みを、逆に今回は戻しました。トップの長さが伸びた分だけウエイトが下がりながらも、的確にスライド カット して量を調節してくれているので、キレイなシルエットがキープできています。
“カワイイ”理由が的確・明瞭
お客さまファーストのリーダーシップ
経営者としてお店の舵取りをしながら後進を育てるため、サロンワークの時間を制限している高木さん。どんなサロンワークをされるんだろう?と、実際に体験してみて感じたのは、その会話が「徹底的に相手目線」ということです。
今、この髪を切ったのはなぜか?
このように乾かすとどうなるのか?
1つひとつの技術の理由を、要所要所でわかるように説明してくれるのです。冒頭で触れた「整形カット」とは、顔型や髪質のコンプレックスを カット で解消するというもの。それにも、すべてなぜかわいく見えるのか、根拠を提示して説明するのだそう。
高木 一般誌のヘア企画を通して、「ココを切ったらこう見える」「こう見せたいからココを残す」と説明を求められる機会をたくさん経験しました。理論をガチガチに勉強しろというのではなく、かわいいものを見極めるセンスがまず大切。
ですが、お客さまに納得してもらい、さらにスタッフにも落とし込んでいくには、自分の技術の理由を説明するスキルはとても大切だと思っています
売れっ子ヘアメイクを経て11店舗の敏腕経営者なんて、なんてマルチなの! と、冒頭で申しましたが、美容師力も経営力も同じ“本質”のようなものが、根底に必要なのだなと感じました。
1人のお客さま、1人のスタッフに本気で向き合い続ける誠実さと粘り強さが、高木さんの大きな魅力です。
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1年に渡ってお付き合いただいた 伸ばしかけヘアチェンジ、いかがでしたでしょうか?
最後まで写真に撮られ慣れず…(笑)、大変見苦しかったかと思いますが、その分リアルで“髪”に注目できたのでは? と自負しております。
ぜひ、すべての女子と美容師さんが、ヘアチェンジを楽しめる提案が増えますように★
高木さん、ありがとうございました!(著書を持ってパチリ★)
そしてご協力いただいた10サロンすべてのみなさま、本当にありがとうございました♡
Profile
高木裕介 Yusuke Takagi
1977年8月15日、北海道生まれ。山野美容専門学校卒業。2005年東京・表参道にU-REALMオープン。雑誌や広告、タレントのヘアメイクとして活躍しながら、経営者としてスタートを切る。2店舗目まで出店した2010年頃、経営の伸び悩みを実感し、労務改善や女性美容師育成などの経営改革に着手。徹底したブランド戦略と教育の見直しを行い、青山・原宿系デザインサロンとしての強みも残しながら、銀座や渋谷など激戦区を中心に11店舗まで成長。美容室経営のほか、飲食店など他業種の経営でも手腕を発揮。パブリック、プロフェッショナル問わず美容商材の製品開発にも携わる。
SALON DATA
U-REALM(東京・表参道 ほか)
ADRESS東京都渋谷区神宮前5-6-13 ヴァイス表参道2F/TEL. 03-5778-0529
11店舗、スタッフ数100名の美容室としては大所帯のサロンながら、高い技術力と感度の高いデザイン提案で20~30代と幅広く支持される。代表の高木さんが得意とするフェミニンでかわいいロングヘアを有力な主軸商品としてブランディングが展開され、ヘアカラー、トリートメント、アレンジなど、女子の「キレイになりたい」気持ちをくすぐる提案が得意な、頼もしいサロンさんです!(担当編集より)
(これまでのVol.1 LILI 三好真二さんの記事はコチラ/Vol.2 蔦tuta 黒須光雄さんの記事はコチラ/Vol.3 broocH 柳亜矢子さんの記事はコチラ/Vol.4 Rougy 沼端ちはるさんの記事はコチラから/Vol.5 HOULe 柏木ゆたかさんの記事はコチラから/Vol.6 otope 浦さやかさんの記事はコチラから/Vol.7 VeLO 赤松美和さんの記事はコチラから/Vol.8 THE REMMY 上田竜二さんの記事はコチラから/Vol.9 GARDEN 津田恵さんの記事はコチラから)
【発売即重版御礼★高木さんの新刊書籍はコチラ↓】
『100万 レイヤー +60万の仕組み』 高木裕介(U-REALM)
B5判/176ページ 本体価格 3,900円+税
美容師さん向けに、カット・カラー・パーマ・トリートメントの基礎&最新技術と経営情報を発信! 『月刊BOB』『月刊NEXTLEADER』を発行する、美容専門出版社です。