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【クリミナル・マインド 9】帰郷 – あらすじ
「許しても過去は変わらない。しかし、未来が広がる」
ポール・バーザ
【感情のトリガー↓】
【ー】称される闇
【晴】沈黙の天誅
【ー】犯行の引金
【哀】父への拒絶
【哀・悦】報わない死・孫と初対面
【ー】称される闇
九〇分前にオハイオ州——クリーブランドで大量殺人が発生した。被害者数は四名、そのうち、三名は十代のギャングたちだったといわれる。
犯人は閑静な緑りのおおいい公園で、老人に絡んでいた二人のギャングを撃ち殺したあと、逃げたもう一人の男を追いかけて、一キロ半以上はなれた給油所のあたりで殺害した。さらに、その一キロ以内のバス停で四人目の男が射殺されていた。
四人目の被害者に関しては、粗雑な強盗でなんども逮捕されていた悪ガキで、財布には他人のカードが入っていたという。
この犯人は悪党どもを処刑しているつもりなのか?
住民は怯えるどころか、殺人犯に感謝すらしている。
目撃者の証言によると、年齢は四十から五十代の相貌をしており、しわしわの服を着ていて、アルコール臭がただよっていたと述べていた。
本日は連絡のつかない戦友が心配だということで、ロッシは休暇をとっている。行動分析課は、残りのメンバーで現地へ向かうのであった。
【晴】沈黙の天誅
街路樹の多いみどりの生いしげる閑静な町ち。
交差点で車を停めていると、一メートルを越す垣根から小さな女の子がかばんを背負って目の前のスクール・バスに乗りこんでゆく。母親に見送られながら、そのバスは走り去っていった。
すると、その母親のいる垣根のところに、元亭主があらぶる勢いで現れた。接近禁止命令で家族に近づくことは許されていないのに。
怯えて抵抗する元妻を垣根の死角に連れていき、会社で恥をかかされたことにひどく憤怒した元夫は、ちから強く首を押さえつけた。が、そこに一人の見知らぬ男がやってくる。
俺れたちに構うな、と小銭を投げつけた元暴力亭主は殺された。三発の弾を放った男は、そのまま停めてた車に引き返したのだった。
悲壮をただよわせているその男は、次に貧相なアパートのなかに入っていく。たどりついた部屋は、扉が閉まっていても大音量のBGMが漏れていた。その部屋から出てきたのは、覚醒剤の売買を行っているタトゥーだらけの常習犯。
今もその白い粉末状のものを袋に詰めている仲間たちがいるなか、男は “このときを待っていた” と言って、いきなし、発砲しはじめた。
なかにいた他の連中ともども、
帰るべきところへ送りかえしてやったのだった。
【ー】犯行の引金
この犯人は捕まることを恐れない危険なスプリー・キラーと位置づけられている。防犯カメラに気づきながらも、悠然と立ち去っていく様子が捉えられていたのだ。
名前えはウォルシュ。一〇年前、彼れが夜勤している間、自宅に強盗が押し入ったことで息子と妻を失っていた。その強盗殺人犯はつかまり、実刑判決が下ったのだが、とても納得のいくようなものではなかった。
犯人は一八歳の少年——クラーク。当時、覚醒剤で酩酊状態だったことを理由に、二人の命を奪っておきながら、わずか一〇年という刑期のみじかさで済んでいたのだ。その男は三ヶ月後に釈放される——はずだった。
ところが、囚人同士のケンカでクラークは死亡していたことが判明する。その日を切望していた犯人にとって——一〇年ためこんでいた怨憎——の復讐機会が失ってしまったのだ。
そんな時に老人へ絡むギャングや、弱者からひったくりをする若い青年、女性に暴力をあげる男があらわれた。
奴らもクラークとおなじ、社会のクソやろう——。
愛するものを奪っていく、がん細胞のかたまり——。
この世界に終わりを決めていた犯人にとって、まさに天からの啓示を受けたと感じたことであろう。彼れらはそのウォーミングアップにすぎなかったのだ……。
【哀】父への拒絶
ロッシの元戦友——ハリソン・スコットは、入居していた退役軍人施設をとびだし、別れのあいさつのような手紙を送って消えていた。休暇をもらって見つけ出したロッシは、彼れのために人肌ぬごうと、スコットの息子——トーマスの自宅へ押しかけたのだった。
息子のトーマスとは一九年間も疎遠になっていたのだが、孫の顔がみたいということで、スコットは有り金をはたいて息子の家の近くに移っていた。が、長年のアルコール依存症の父に辟易していた息子は、とうとう見限ってしまい、二度と連絡をしてくるなと言っていた。
親子のもつれを解消させてあげたかったロッシは、もう一度、父にチャンスを与えてやってほしいと懇願した。
しかし、その頼みもむなしく、頑なにトーマスはそれを断るのだった。
外で待機しているスコットを車に残したまま……。
【哀・悦】報わない死・孫と初対面
妻を殺した憎きクラークはすでに死んでいる。だからといって、復讐相手がすべていなくなったわけではない。
クラークの親友、クラークの父親の圧力で証拠をもみ消していた検事、そして、ゆいつの生き残り——クラークの母親だ。
クラークの母親はおもわず手を離してしまい、持っていたお盆を床に落としてしまった。自分の家のリビング・ソファに、ウォレスが座っていたのだ。その手には銃を持っている。それを見た母親のヘレンを死を覚悟した。
証言台に立ち、息子のクラークを庇ったことについて咎められ、涙ながらに “あれは薬のせいよ” と母親は言った。だが、ウォレスの妻は、前々からクラークの人格性をうたがっていたのだ。それを真に受け止めなかったウォレスも、自分に対して激しい怒りを持っている。
そこに F B I がやってきた。
殺された被害者たちのなかに罪のなかった人もいたと告げられ、自分の信念に反してしまったウォレスは、その銃口をあご下に向けて引き金をひいた。
実は、一〇年前の事件には共犯者がいた。
どの道、彼れは死ぬつもりだったのだ。
絶望を——みてしまったのだから……。
残念ながら父親のスコットの夢は叶わなかった。
息子の築いた家族に会いたいという夢が。
スコットは、とびだした退役軍人施設までロッシに送ってもらい、また、そこに入居することが許された。無断で欠席していた職場にも無事、復帰することができ、翌朝、その義理堅いやさしさを持つロッシにふかく感謝するのだった。
別れの挨拶をしたロッシは車に乗り、ロサンゼルスを後にしようとした——その時だった。
サイドミラーに映っていたのだ。
施設の入り口前で立っているスコットのほうへ、三人の親子が近づいてくる様子が。
それは、きれいな嫁と元気な孫を連れた——
息子のトーマスだった。
ロッシは、安堵と微笑の顔をにじませながら見送った。
ス コ ッ ト と 孫 が 手 を つ な ぐ 瞬 間 を ——。
【感想】
ということで、今回のテーマは「赦し」でしたね。
赦すことができずに10年間も怨みを抱えていた者。
19年という歳月が経って、赦すことを選択した者。
いっぽうは破滅で、もういっぽうは未来がありました。
面白さには欠けても、伝えたいメッセージの表現の仕方がうますぎるなぁと思いましたね。
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