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かみさま30|山歩きで出会う神々:水脈の守護神、裂口神(れっこうしん)
その大きな口を開け、山々を見渡す姿。裂口神(れっこうしん)は、雲取山の奥深く、多摩川の源流を見守る存在であった。その口を広げると、まるで体が半分に裂かれたかのように見え、人々は彼を「裂口神」と呼んで畏れ敬った。
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水が豊かな時、彼は何事もないかのように水底にひっそりと佇み、皮膚で流れを感じながら深く静かに息をしていた。しかし、川が痩せ細り始め、水が枯渇の兆しを見せると、裂口神の体には変化が現れる。ふいに長い舌を地面に伸ばし、大地に耳を澄ませるようにじっと動かず、土地の奥深くに流れる水の鼓動を探るのだ。地の底に宿る水の神と語らいながら、彼はどこに水が潜んでいるかを感じ取り、その水を川へ導く道筋を整える。
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とある年、乾きが厳しく、裂口神はその舌で大地の隅々まで探りを入れた。水の神と連携し、小さな地下の泉から少しずつ水を引き寄せ、多摩川の流れを再び生き返らせた。その時、かすかな湧き水が石を打つ音に、裂口神は満足そうに微笑んだ。
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※この物語はフィクションです。実在する人物や宗教団体とは関係ありません。