法テラスについて考える(その3)
法テラスについて2回にわたって書きました。
1回目は法テラスの概要。
2回目は特措法案の問題点。
新型コロナで影響を受けた方に法的支援をすること自体は賛成です。ですので、特措法案の対案という形で、意見をまとめたいと思います。
対案の方向性①~法律相談と代理援助をセットにしない
まず、法律相談とその後の費用の立替(代理援助)はセットにしなければならないのか、について検討してみます。
結局のところ、法案では対象が広くなりすぎて不公平が生じてしまうところに問題意識があります。
ただ、そもそも法的なアドバイスが必要なのか、可能なのかといった入口は広く取った方が、利用しやすく救済につながるように思います。
そこで、
入口である無料法律相談は広く認める
その後の費用の立替は、不公平が出ないように段階的にする
という方向が良いのではないかと思います。法律相談と費用立替をセットにする必要はないのではないか、というものです。
これは、対象者がとてつもなく広がってしまった場合に、予算を限定的にするという意味もあります。
対案の方向性②~立替の不公平感をなくす
次に、「100万円→50万円」の人は法テラス利用OK、「50万円→40万円」は法テラス利用不可というのをどうするか、という点です。
これは、援助にグラデーションを出すことで不公平感をなくす方向が良いと思います。
「法テラスについて考える(その1)」で挙げたモデルケースでは
法テラス利用:着手金・実費20万円、報酬20万円
法テラス利用しない:着手金24万円、報酬32万円
でした。であれば、
①通常の扶助基準まで収入が下がった場合
通常どおり法テラスを利用する(着手金20万、報酬20万)
②通常の扶助基準まではいかないが収入が下がった場合
通常の法テラス基準「まで」を立て替えることにし、残りは自己負担とする(着手金の残り4万円は利用者が用意し、報酬の差12万円も用意する)。
こうすることで、減収後の収入が本当に減った①はそのまま救済でき、多少減った②は相応に救済できることになります。
対案の方向性③~免除を広く認める
そして、減収があるのなら償還猶予・免除を積極的に認める(減収の度合いなどを考慮して免除されやすくする)とすれば、本当に苦しい方の救済になると思います。
東日本大震災のときでも、扶助の対象は広げても免除を広げなかったため、結果的に事件終了時でも生活が苦しい方には大きな負担となりました。
このような事態も踏まえ、免除を広く認めることで、直接的な救済につながると考えます。
まとめ
以上をまとめると、
①法律相談は広く活用できるようにする
②全額費用立替にすると不公平が生じるので、弁護士費用の一部を立て替える制度にする
③結局償還が必要ならば苦しいのは変わらなくなってしまうので、償還免除を広く認めることにする
といった方策がよいと考えます。
特措法案と比べ①②は必要となる予算が増えることはなく、他方事件終了後の③によって予算が必要になるけれど、それはダイレクトに利用者の救済に当てられることになります。
法案は、扶助業務の入口(①②)にばかりフォーカスしていますが、本当に大事なのは出口(③)ではないでしょうか。