『ハウアーユー?』を読んで
六代目神田伯山さんのマネージメントをする取締役の古舘さんの話は、伯山さんがラジオでよく話題にされている。ふたりは夫婦だ。とても聡明で芯の強さが伺える話ばかりで、私は彼女のエピソードに共感して、子について誰かに話すときは、性別を断定しない「こども」と言う様にしている。最近では古舘さんがメディアに執筆されることも増えていてうれしい。長く編集に携わっていたという文章はとても読みやすい。最近「ELLE」のウェブサイトで公開されていたfeminist bookcover challengeでフェミニズムを感じる書籍を紹介していたなかで、神田伯山の妻と自己紹介する必要性への疑問や、仕事でも奥様と呼ばれることが書かれていたのが印象的だった。
漫画『ハウアーユー?』で、夫が突然失踪して消えたとき「奥さん」は「だれの奥さんになるんだろう?」と問いかけるページに手が止まった。気にし始めると、付属を表す言葉って存在自体が不思議に感じる。けど溢れてる。フェミニズムについてをフェミニズムだと意識して考えたことはこれまで少なかったけれど、この先フェミニズムの本と言われれば『ハウアーユー?』を真っ先に思い浮かべそうだ。
最近知った『ハウアーユー?』の作者・山本美希さんの漫画は、とにかく上手い。表情も、力の抜き差しも。画材の魅力を引き出す点でも画力がピカイチ。読むと絵が描きたくなる。語り手や視点が移るのに、違和感を感じさせない流れもすごいのです。映画みたいなスムーズさだなぁと読んでいたら、巻末についた解説で映画に触れられていた。先に映像を撮ってそれを漫画に描き直したような滑らかさは、映画のカメラ割りみたいにテイクで考えているのだろうか。絵や映画をどうしても作り手目線で見てしまうから、作者のこういう解説はたのしい。
眠る前に少しだけ読むつもりが、一気に最後まで読んでしまった。ハウアーユー。欠落の無い日なんてあるのだろうか。だれかやなにかにぶら下がりしがみ付くことについて、昨今は否定的でいなきゃならない気がして、胸がきゅっとなる。それでも幸せになれることはあるかもしれないと、『ハウアーユー?』を読んで今は思うのだけれど。
(夏に書いて下書きのままになっていたもの)