【動画】<無邪気な肯定でも粗雑な否定でもなくーー葛藤しながらアイドルを捉える>香月孝史×中村香住×上岡磨奈

香月孝史さんの『乃木坂46のドラマトゥルギー 演じる身体/フィクション/静かな成熟』(青弓社)が2020年4月23日に発売されました。その刊行記念として香月さん、社会学研究者の中村香住さん、そして上岡磨奈で鼎談の機会を持ちました。(2020年6月5日収録)

アイドルという文化実践についての研究や議論は未だ途上にあり、アイドルとはそもそも何か、アイドルが成立することを可能にしている前提は何なのか、といった問題の背景になかなか辿り着かないということも課題としてあります。

同書では、香月さんの前著『「アイドル」の読み方   混乱する「語り」を問う』(青弓社、2014)でも問われてきたアイドルを議論する上での枠組みについてさらに子細な検討がなされています。
本鼎談では乃木坂46以外のアイドル、また同ジャンルに連なる他分野として声優、メイドカフェなどにも話題を広げながら、アイドルの職能について、またアイドルを現状のアイドルたらしめている規範や価値観について議論しました。
限られた時間の中で話題提供にとどまっている部分もありますが、なんとなく「アイドル」として受け入れてしまっている諸々を肯定しすぎるでも全否定するでもなく、香月さんの言葉を借りれば「両者を架橋する」ための話ができていればと思います(ツイートは鼎談についてのコメントではありません)。

約90分の内容を以下、3つに分けてどこからでも見始められる内容になっております。キーワードをご参照いただき、ご関心に沿ってご覧ください。

『乃木坂46のドラマトゥルギー 演じる身体/フィクション/静かな成熟』刊行記念①「アイドルという『プロフェッショナル』―アイコンとパーソナリティーの上演」
キーワード:ジャンル越境、パーソナリティー消費、模索期間、専門性の捉えにくさ、アイドルのキャリア、スターシステム、観客の視線

『乃木坂46のドラマトゥルギー 演じる身体/フィクション/静かな成熟』刊行記念②「アイドルという『スティグマ』―卒業、加齢、恋愛禁止?
キーワード:パーソナリティーの見せ方についてのべき論、アイドルではない時間、キャリアの移り変わり、エイジズム、パートナーの存在、異性愛

『乃木坂46のドラマトゥルギー 演じる身体/フィクション/静かな成熟』刊行記念③「アイドルという『当たり前』―競争的価値観への違和感ー」
キーワード:競争的価値観、ヒエラルキー、単一の基準、見られることを意識した人格、SNS、オンとオフ、今後必要とされる議論

香月 孝史(かつき・たかし)
1980年生まれ。東京大学大学院学際情報学府博士課程単位取得退学。ポピュラー文化を中心にライティング・批評を手がける。著書に『「アイドル」の読み方――混乱する「語り」を問う』(青弓社)、共著に『社会学用語図鑑――人物と用語でたどる社会学の全体像』(プレジデント社)。2019年に催された企画展「乃木坂46 Artworks だいたいぜんぶ展」(ソニーミュージック六本木ミュージアム)では解説文の作成や展示内容の選定に携わる。乃木坂46のメンバーへのインタビューやライブ評・舞台評の執筆なども多数。
中村香住(なかむら・かすみ) 通称レロ
慶應義塾大学大学院社会学研究科後期博士課程在籍、NPO法人秋葉原で社会貢献を行う市民の会リコリタスタッフ。専門はジェンダーとセクシュアリティの社会学。現在は第三波フェミニズムの観点から、メイドカフェにおける女性の労働経験について研究している。レズビアン当事者としても活動を続けており、特に“恋愛至上主義にノれないセクシュアルマイノリティ”の居場所づくりに取り組んでいる。女性声優とテーマパークと百合のオタク。共著に『私たちの「戦う姫、働く少女」』(堀之内出版、2019年)、『ふれる社会学』(北樹出版、2019年)、『「百合映画」完全ガイド』(星海社、2020年)など。『ユリイカ』2020年9月号 特集=女オタクの現在に鼎談と論考が掲載される。
Twitter: https://twitter.com/rero70
Researchmap: https://researchmap.jp/kasuminakamura/
上岡磨奈(かみおか・まな)
慶應義塾大学大学院社会学研究科後期博士課程所属。俳優、宗教系メディア記者、アイドル、作詞家などを経て、2015年青山学院大学総合文化政策学研究科でアイドルとアイドルファンを対象とした研究を開始。パフォーマー、スタッフ、ファン、そして研究者としての視点からアイドル文化を紐解いていく。現在の関心はアイドルの生活、キャリアまた海外のアイドルシーンとそのファンダムでインドネシア、台湾、北米地域などをフィールドとして観察および調査を行う。

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