見出し画像

カミナシの現在地点、マルチプロダクト化を進めてみての学び

少し遅いですが、あけまして、おめでとうございます!新しい年が始まりましたね!皆さんは昨年はどんな年でしたか?

カミナシは苦しいことも、嬉しいことも、色々とありました。ただ、最後には、会社として第二四半期の事業目標達成&セールスチームも新規受注のギネスを更新して、素晴らしい年の締めくくりとなりました。

そんな2024年という年は、会社にとっては1つの「分岐点」だったと思います。1つだったプロダクトを5つに増やす決断をして、会社はカオス状態に突入した年でした。創業以来、役員からメンバーまで最も忙しい日々を過ごしていたと思います。

カミナシのプロダクト群

このnoteではカミナシの、この1年間の振り返りや、現状、マルチプロダクトへの挑戦、様々な意思決定の背景などを記します。

(最後に、これからプロダクトを複数出そうと考えている方向けに、僕らの失敗も載せているので、よかったら最後まで読んでください)。


何を目指している会社なの?

オフィス以外で働いているノンデスクワーカーの働き方を、デジタルの力で変えようとしている会社です。

皆さんが普段目にすることは少ないけど、日本を支える現場の最前線に対してサービスを提供しています。工場の生産現場や、物流倉庫、ビルのお掃除や、厨房の裏側などの、ある意味、「日本で最もデジタル化が進んでいない領域」に対してSaaSを提供しています。

カミナシの導入企業の一部:業界も多種多様です

カミナシが「最初に導入する、唯一のSaaS」というお客様も多く、デジタル活用の一歩目の挑戦をご一緒させていただくことが多いです。one of themではなく、Only oneだからこその愛憎がそこにはあり、日々、喧々諤々しつつ、事業を推進しています。

以下より本題です。


1.誤算

カミナシはピボット後、1プロダクトで一定のPMFを手に入れ、順調に成長してきました。少なくとも、そう見えていました。

私たちが見誤ったのが、"需要の顕在化スピード"です。

市場はとても大きい。競合環境も激しくない。当初は、とても良い市場だと考えていました。しかし、その大部分の需要は未だ表面に現れているものではなく、氷山の一角であることが分かってきました。

請求書クラウド市場やHRtech市場のように、既にニーズに溢れ、市場が完全に完成し、その中で雌雄を決するような状態ではありませんでした。時間軸が全く違ったのです。

私たちの最大の敵は競合他社ではなく、”無消費”でした。自らの手で、"潜在需要"を掘り起こしながら、市場を形成していくゲームだったのです。私たちは、2023年時点で考え方を改める必要に迫られ、戦略を大きく転換することを決めました。

2.戦略転換

具体的には、単一プロダクトで戦っている状態から、急速にマルチプロダクト化を推進。1つだった製品を一気に5つまで増やすことを宣言しました。帳票デジタル化の製品だけでは大きな需要を顕在化させることは難しいと感じたためです。

マルチプロダクトで多様なデジタル化ニーズを拾い、複数製品をバンドルで販売することで、訴求力を高めることが狙いでした。

この時に議論になったことがあります。
それは、「複数のサービス間連携は必要か?」という点です。

プロダクトを複数展開する際の定石として、一緒に使うことでプロダクト上で大きな価値を提供するというものがあります。しかし、24年の自分たちにはサービス連携のための開発をする時間も、リソースも足りませんでした。

そこで、私たちは、「一旦、プロダクト間の連携は一切せずに、素早く複数製品をリリースする」という意思決定をしました。それでもお客さんは買ってくれると考えました。

  • 1つの企業から買えて、1サービスで様々な課題を解決できる

  • 複数製品のバンドル販売により高いコストパフォーマンスを実現

  • セキュリティチェックが一度で済む

  • 稟議を上げる際の説明コストも(新しい会社から買うより)低い

こうしたビジネス上の価値だけでも十分競合へのアドバンテージになり、顧客の購買意欲を高められるという仮説を立てました。

IT導入の経験も少ない現場では、特に「同じ会社から複数のプロダクトをまとめて買う」というコンセプトが刺さり、お客様からの反応はとても良い状況です。明確に成長スピードが加速しました。

現在は新規受注のバンドル販売率が、70%を超えています。複数製品が束ねられているから買うという意思決定をされている顧客がほとんどです。

新規契約の内訳

上記の通り、一旦はプロダクト間の連携は一切行わずに進めましたが、現在は各製品同士がシームレスに連携をしていく機能開発を進めており、顧客からの評価も上々です。

連携してからリリースではなく、実際に出してから繋ぐという順序で良かったなと感じています。

3.カミナシID

このシナリオを語る時の1つの鍵が、「カミナシID」の存在です。CTOの原トリを中心に、かなり早い段階から「認証認可基盤の構築」に取り組んできました。これにより、カミナシID・パスワード1つあれば、あらゆるプロダクトにログインすることが出来ます。

カミナシIDの管理画面

『5つのサービスをバラバラに契約すると、5つのID/Passが必要になりますが、カミナシなら1つで済みますよ』

これをシステム的に訴求できることは、1サービスにまとめることの説得力を増しています。特に、現場DX系のサービスのほとんどには、Google認証のような仕組みがありません(そもそも、私たちが当たり前に使っているGoogle WorkspaceのIDをほとんどの方は持っていないので当然です)。

今後は、外部サービスへのログインも可能な、連携機能の開発も検討しています。オフィスワーカーには当たり前の、認証基盤を持っていないノンデスクワーカーに対しても、カミナシを窓口としてインターネット世界と繋がっていける機構を提供していきたいと考えています。

2025年からは、こうした各プロダクトが共通で利用可能なミドルウェアへも積極的に投資していく予定です。先にアプリケーションを出したことで、必要な共通機能がはっきり見えており、"現場ならではのユニークなミドルウェア"になると思います!

また、カミナシのサービスが拡充されたことで、このIDの中に、現場の「作業」「人」「機械設備」という3つのコアなデータが蓄積されるようになりました。25年以降は、これらのデータを用いて更に価値提供していく予定です。

現場の3つの基幹領域にフォーカス

(また続報します!お楽しみに)

4.マルチプロダクトを実際にやってみて

このnoteで皆さんに最もgive出来るパートになります。

マルチプロダクトを進めてきたカミナシですが、その道程は全く簡単ではありませんでした。とにかく失敗の連続でした。誰かの参考になると思い、社内で起きたことをメモとして記載しておきます。

CXO3人でマルチプロダクトをやろと話した時のSlack

1.新規事業は危機感から生まれる

  • 【失敗】
    目の前にそれなりに上手く行っている既存事業があると、新しいものを生み出す切迫感が出てこない。今ある事業をどう伸ばすか?ということをやり続けてしまう。半年〜1年くらい遅れた感覚がある。

  • 【次は】
    達成が出来ていても、『このまま行くと目標自体が上がり続けるので、達成難易度も加速度的に高くなっていく』と、上手くいき始めたと思った瞬間から、自らを追い込むべきだった。

    「やらないと死ぬ!」という危機感からの方が事業が立ち上がった。上手く行っている時に危機感持つというのは難しいですが、それこそが視座の高さの正体なのだと理解できました。アンディ・グローブの『パラノイア(病的なまでの心配症)だけが生き残る』という名言にも通じます。

2.「何をやるか」よりも、「誰がやるか」が大事

  • 【失敗】
    22年頃に、新規事業の種探してのため、諸岡が設備保全領域のヒアリングや課題探索をやり、『結論、この領域は見込みが薄いと!』と結論付けた。しかし、COOの河内が年初から検証した結果、社内の結論は『有望で、やるべき』に変わった。

  • 【次は】
    結局、全ては個人のモチベーションの差だった。
    自分がそこまで興味を深く持てないものを、河内は喜々として、とにかく楽しそうにやっていた。

    「この事業はやった方が良い」と頭で理解している優秀な人材をアサインしがちだが、「心からそれをやりたい」と思っている人間をアサインすべき。そういう人材がいる事業から立ち上げる(ALL STAR SAAS FUNDのカンファレンスでRipplingのCOOも言っていた)。社内にいないのであれば立ち上がらない。今年も4,5個の新規事業を新しく検討していますが、必ず提案者に「それは心からやりたいこと?」と聞いています。

3.ビジョンから逆算しすぎて失敗

  • 【失敗】
    カミナシはMVVが強い会社だと自認していて、常に事業や戦略もビジョンにどう紐づくのか?を徹底して考え続けてきた。しかし、これが相当に難しく、理念と新規事業の整合性が取れなかったり、理念的な話も多く議論が大変だった。

    ある時、上場SaaS企業の役員の方から『もっとシンプルに考えて、クロスセル出来るかどうかで考えれば良い。プロダクト連携とかも考えすぎないでいい』というアドバイスをもらい、吹っ切れた。

  • 【次は】
    現場で本当に課題があって、クロスセル出来るものであれば、事業的にもビジョン的にも、整合性が取れた。

    むしろ、事業側から新しい要素が足されることで、世界観も広がった。自分たちで「何故やるのか?」という枷をはめ過ぎない。極論、お客さんが喜ぶし、売れるからやるでも良い。あまり難しく考えすぎない。

4.船頭多くして失敗

  • 【失敗】
    「カミナシ従業員」
    というサービスを立ち上げるのに、構想からローンチまで1.5年も掛かってしまった。この時、このPJにはCEO、CTO、PM部長の3名が関わっていて、お恥ずかしながら責任の所在が曖昧に。「ローンチタイミングをコミットする責任者って誰」という状態になってしまうなど、"責任者"が多すぎた。

  • 【次は】
    3つ目、4つ目のプロダクトはそれぞれ、"責任者1人に全ての権限と知見を集中させる"ということ徹底した。意思決定や事業が前に進むスピードが見違えた。一人全権を持って、原則兼務せずにそれだけに専念してもらうのが良い。

なんだよ、当たり前なことばっかりじゃん、と思われた項目もあるかもしれませんが、これから取り組む皆さんの参考になるものがあれば幸いです。

5."Go multi-product early!!!"

最後に、自分たちの背中を押した言葉について、書いて終わりたいと思います。

社内でマルチプロダクトの流れが加速したのは、アメリカで開催された2023年9月のSaaStrがきっかけでした。この時のテーマはマルチプロダクト一色

とにかく早く、マルチプロダクトをやれ!というメッセージ。『1つ目の製品が初期PMFした後、エンジニア7名のうち5名を新規製品の開発に回した。ガラスを噛むような苦しい想いで実行した両面作戦だった』という自身の経験を語るCEOもいました。

最も自分の心を揺さぶったのが、この言葉。

If you feel ready, you probably waited too long
(もし準備が出来たと感じるなら、それって待ち過ぎじゃないの?)

SamsaraのCPO講演より

見た瞬間に、心を揺さぶられました。自分たちより遥かに経験も資金力もあるシリアルアントレプレナーが、こんな気持ちでチャレンジしているのに自分はこのままでいいのか?と思いました。

結局、人の成功なんて、本気で思って行動できるかどうかで、彼らは1つ目の製品が最初のPMFをしたことを感じた瞬間、すぐに次の製品を作り始めた。「自分たちも連続的に製品を立ち上げよう!」と誓いました。

多分、この言葉を見るまでは、「いつかやりたい」「今は1つ目のプロダクトを仕上げなければならない」「下手に手を広げると中途半端になる」こんなことを無意識に考えていた気がします。

If you feel ready, you probably waited too long

この言葉と、『左ききのエレン』にでてくる神谷の言葉が、めちゃくちゃシンクロしました。万全な状態なら良いものが作れると誰もが思っているが、そんな"万全"来ないと。

※著者のかっぴーさんは、『ブログ等で左ききのエレンの画像を使うのはOKです!』と仰ってくれているので、引用しています。

ここに書くことで、自分自身、2025年もこの意識でやっていこうと思います。最後まで読んでいただき、ありがとうございました!

6.切実に人が足りていません!助けてください!

ということで、昨年、自分や会社、全社員、創業以来一番チャレンジした年でした。

本日、『カミナシ教育』という新規サービスを正式にリリースしました。4月までに、ここから更に2つのサービスを発表予定です。

現在、私たちは、5つの製品を同時並行で開発・提供しています(正式リリース前のものも含め)。どれも骨太な、それ単体で1社スタートアップが立ち上がるレベルの製品たちです。そして、PMFの手応えを持っています。

今、創業以来一番人が足りない、欲しいという切実な思いを抱いています。いつも言ってますが、今が一番です。きっとこの先も言う可能性がありますが、常に一番足りません。

毎月、毎週のように営業資料が更新され、プライシングリストが変わり、訴求価値も変化していっています。

現場のための武器を作る、その武器で市場を切り開く、盤面が切り替わる瞬間は最も人が成長するタイミングの一つです。

成長を求め、且つ、そんなカオスを一緒に楽しんでもらえる方、一緒にやりましょう!ということで、一つ一つのプロダクトの状況や構想について、詳しく聞きたい方は是非、気軽にお話聞きに来てください!お待ちしています!


いいなと思ったら応援しよう!