たてまえ

上棟式。
子供の頃、私の住んでいた土地では「たてまえ」と呼ばれていた。
上棟式に神事が行われ(たような気がする)、餅や菓子や五円玉が屋根から投げられる。

昭和40〜50年代。
ある日、同級生の家で、たてまえがあり行った。
私と幼い弟も嬉々として当該の家の周りに群がる人々と一緒に屋根を見上げ、天から降ってくるお菓子を楽しみにしていた。

さて、いよいよ開始。
棟梁か家主が人々目掛けて菓子などを投げる。
節分の時に寺社で行われる節分の豆まきのように。

しばらく経って棟梁か家主が気を利かせて幼い弟目掛けて大きな丸餅投げてくれた。
そしたら大の大人、しかも中年くらいの男性達が我先にその餅目掛けて複数人突っ込んでくる。
当然、幼い弟は巻き込まれたと言うか、弾き飛ばされたと言うか、その餅をキャッチ出来ず。

場が騒然とした。

その場には多分私の親は一緒に居なかったと思う。だから泣きじゃくる弟を連れて帰宅した時に母に事の顛末を話した記憶がある。
恐らく私も怖くなってしまったのと、怪我をしたものの歩いて自宅まで行けたとはいえ心に傷を負った弟をどうしたら良いのかわからなかったのだろう。

濃く苦い思い出。

その時のことを後年大人になってから両親と弟に話したが、確か三人とも記憶になかったと言われた気がする。
幼い時に負った傷は実はそばにいた私が負っていたという話。

東京FMのスナックラジオ という番組を聴いていて、思い出した。

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