飲食と会話とマスク装着について思うこと
昼下がりのカフェ。
そばにダミ声老婆ふたり。
話に花が咲く。
マスクはふたりともしていない。
危険を感じ、距離を取るために席の移動をした瞬間、並々とカップに注がれたばかりの一口も飲んでいない珈琲と自分の荷物がぶつかる。
トレイは珈琲の海。少し動くだけで漣が打ち寄せる。
私は店員に詫びて珈琲を浴びた椅子の座面を拭いてもらい、自分は服や帽子に出来たシミを必死にグラスの水と手拭いを使ってぼかす。
椅子は座面だけ濡れており、素材がビニールだったので拭くだけで済んだ。
お店の人が珈琲の替えをくださるという。
2割ほど零しただけなので、丸ごと替えてくださるとは思わず、またここを使おうと思うと同時に、私が頻繁にここを利用する理由が分かった気がした。
一連の流れを俯瞰で観察している冷静な自分も居たけれど、変な汗もかいていた。
そんな私に先の老婆の一人が除菌シートを使ってと差し出してきた。
コップの水だけで何とかなりそうなので折角の申し出だけど笑顔で断る。
彼女達から離れるためにとった行為だけど、慈悲のある行いを受けた。
さっきは「話をする時はマスクを装着してください」と喉元まで出かかったけど、言わなくて良かったのだろう。
いや、それは違うかな。マスクはして欲しい。
どこのカフェへ行っても人が2人以上集まるとマスク外して喋りまくってる人達を、今週は沢山見てきた。
だから少し何とかして欲しいという思いが積み重ねられていた。
世直し人の如くマスク警察になりそうだった。
あと2回くらいそんな人達を見かけたらポイントカードが満杯になってマスク警察四級受験資格取れそうな勢い。
老婆ふたりはもしかしたらワクチン接種2回目も終えて、ワクワクチンチン組か?
ワクチン接種2回済めば鬼に金棒と思ってるのか?
いや、ワクチン接種しようがしまいがマスクを碌にせずに話しまくるタイプの人達なんだろう。
あれから随分時間が経った。
お店を後にしようと外を見たら雨が降り出してきた。
除菌シートを差し出してきた方の老婆Aが外していたマスクを装着してたのに気付く。
もう片方の老婆Bは相変わらず未装着のまま。
老婆Aが除菌シートを差し出してきて私が断っていた時、ギロリとした眼差しで舐めるように私の事を見ていたあの画が脳裏に刻まれてしまった。
空が明るくなってきた。
雨が上がったようで老婆ふたりがマスク装着して店を後にした。
私もこの短時間で起きたことはこうして文にして昇華させて気持ち切り替えて行こう。