上川町をもっと面白い町へ。楽しみながら挑戦し続けるー絹張蝦夷丸さん
上川町でカフェを経営する傍ら、会社を立ち上げ、町づくりに取り組むEarth Friends Camp代表の絹張蝦夷丸さん。上川町には外から人が頻繁に視察に訪れるほど、その取り組みが注目を集めていますが、絹張さんは上川町を面白い町にする仕掛け人の1人です。
上川町に移住してから町づくりに取り組みはじめた経緯、そしてこれからの上川町に対する想いをインタビューしました。
コーヒー焙煎が趣味ではじめたカフェ
ーー町の人がほっと一息つける場所として人気のKINUBARI COFFEE。上川町でカフェをオープンしようと思ったきっかけは何でしたか?
札幌でゲストハウスに勤務していたときに、より美味しいコーヒーを求めて趣味のように焙煎をはじめたのがそもそものはじまりです。
1人では飲みきれないので友人にコーヒーを配っているうちに、買いたいと言ってくれる人がでてきて、そこからイベントに出店したり、コーヒーを売ったりしはじめました。
いつか自分のお店を持ちたいなと考えているときに、上川町でカフェを開業したい人向けの協力隊事業があることを知り、参加したのが上川町にきたきっかけです。
上川町にきてすぐにKINUBARI COFFEEをオープンしたわけではなく、初めはヌクモ(上川町の公共施設)のカフェの立ち上げに携わりました。
まだ内装もできていなくて、ゼロからメニューやオペレーションを決めて、いきなり店長になるみたいな状態でした(笑)
ーー趣味の焙煎がスタートだったんですね!そこから協力隊として札幌から上川町に。絹張さんといえば、PORTO(上川町の交流&コワーキングスペース)の立ち上げにも関わっていらっしゃったとか?
そうですね。2021年にEarth Friends Camp(以下EFC)という会社を立ち上げたタイミングで、役場の方からお声がけをいただいてPORTOをつくることになりました。
PORTOをつくったり、シェアハウスをつくったりと、気づいたら色々な建物の改修をすることに(笑)
そのあとKINUBARI COFFEEの建物の工事をはじめて、ちょうど今から1年前くらいに(取材は2023年12月)、ようやくKINUBARI COFFEEをオープンすることができました。
そしてグランドオープンのパーティーで、来年はANSHINDOで宿をつくります!と宣言をして、今プロジェクトを進めているような状況ですね。
町を照らす灯台となる複合施設「ANSHINDO」をつくる挑戦
ーーカフェの立ち上げメンバーとしてのお仕事から交流スペースとカフェをつくり、次は宿まで!幅広く取り組まれている印象ですが、もともと上川町に来たときから構想していたことだったんですか?
全く考えていなかったです(笑)
協力隊として応募した企画書には、建物のリノベーションのことは全く書いていなくて。
でも暮らしと自然と観光を繋げる事業をやりたかったので、交流スペース、カフェ、アウトドアショップみたいなものを作って、そこで自然体験や飲食、町の人たちもワークショップができるような場所にしたいという企画書を書いていたんですよね。
結果的に建物をつくって、一つ一つ実現できていますね!
ーー結果的にやりたかったことを実現されているんですね!ANSHINDOの宿はどんな場所にしたいと考えていますか?
ANSHINDOは、観光客を積極的に呼び込むための宿というよりは、暮らしを体験してもらうような宿をめざしています。
部屋のつくりも、生活に近い滞在のしかたができるように、仕事ができるデスクを置いたり、共用キッチンを設けたり工夫しています。
観光地やリゾートではなく町のなかにあるからこそ、ここでしか会えない人や味わえないローカルなお店、そこで生まれる出会いなどが魅力。
町に暮らしている人の空気のなかに、来た人自身も入り込んでもらうような体験が提供できたらいいなと思っています。
いずれは、分散型ホテルとしてANSHINDOを中心に小さな一棟貸しの宿を増やしていきたいですね。
もともとゲストハウスという宿泊の場を提供してきた経験があるのが、EFCの強みでもあります。
外から来る人と上川町の中の人をつなぐ役割を僕らが担い、来た人たちを楽しませるお店は町の人と一緒に作っていけたらいいなと思っています。
仲間とともに上川町をもっと面白い町へ
ーーANSHINDOを中心に人がつながっていくのがとても楽しみですね。もともとカフェをオープンしたいという想いから、ここまで町づくりに熱量を持つようになったのはなぜですか?
人口3200人弱の町でこれから少子高齢化がさらに進むと、カフェだけやっていても続かないことを実際に来て実感しました。
この場所に住み続けたいなら、店を続けていける状態にしなくてはいけないし、そのためには町づくりが必要だと気づいたんですよね。
実際にはじめてみると、まだまだやれることがたくさんあるなという感じ。お店はあるけれどまだ限られた数なので、色々なことに挑戦できる余地があります。
大変なこともあるけど、それよりもこれから作っていけることのワクワク感の方が大きいですね。
同じような想いをもっていたり、この町面白いじゃんって思ったりする仲間が増えていったらいいなと思い、ANSHINDOのような町の暮らしに触れられる場所や機会を作ろうと決めました。
それが自分たちの事業を続けていくためにも必要なことだと思っています。
すでに協力隊を卒業して上川町に暮らし続けている人や面白いと思って移住して来てくれる人など、少しずつ仲間が増えてきているので、それがもっと広がっていけばもっと楽しい町になりそうだなと、これからがすごく楽しみですね。
ーー絹張さんを中心にEFCのみなさんの活動で、町にも大きな変化が生まれたと思うんですが、町の人の反応や変化みたいなものは感じますか?
ここ1年ぐらいでお店も増えてきていて、コロナが明けてからお客さんの数もまた戻ってきている実感があります。
あとは市街地ならではの体験や魅力がちゃんと外に伝わっていけば、層雲峡にくる客層とはまた違う人たちが上川町に来るようになると思います。
今は層雲峡を中心として町の魅力が語られがちなんですが、上川町の市街地に来る層が増えて、「町の方も面白いよね」と言われるようになったら、上川町全体としての価値がさらに上がるんじゃないかと思っていて。
多くの町は観光として良い町、もしくは住んで良い町のどちらかに分かれていますよね。
上川町は層雲峡と少し離れているからこそ、住んでもいいし観光してもいいという両方を実現できるポテンシャルがあると思っています。
住んでも観光してもいい町として認識してもらえたら、唯一無二の強みをもった町になるんじゃないかなと期待していますね。
ーー人口が減っていくことはどの町でも課題としてあがっていてネガティブに捉えられることが多いと思うのですが、上川町のみなさんはポジティブに捉えて前向きに町づくりに取り組んでいる印象があります。
そうですね。僕たちも正解がわかっているわけではないので、本当にやれるのかなとか不安になるときもあります。
でも何かやれることがあるうちは楽しみたいと思って取り組んでいます。
町の人たちにとっても、今までやってみたいと思っていたことがやれるようになってきたという実感があるのが嬉しいし、やりがいを感じている部分ですね。
例えば、趣味で写真を撮り続けていたおじいちゃんが、ずっとみんなに見て欲しいと思っていたけど機会がなくて眠ったままになっていた、上川大雪酒造で初めてお酒を仕込んだときの記録を、PORTOで初めての写真展という形で実現したんです。
それからそのおじいちゃんは、PORTOによく通ってくれるようになりました。
他にも、みんなが本当にやりたいと思ってたけどできてなかったことが、PORTOという場所を通じて少しずつ形になっていくような例が増えていて、そういう小さな積み重ねによって上川町は自分がやりたいことを実現できる場所なんだという考え方が浸透していったらいいなと思っています。
ーーたしかに、小さな成功体験を積み重ねることで、一歩を踏み出すハードルも下がっていくのでやりたいことに挑戦しやすくなりますね。
そうなんです。
あとは、これから何かに挑戦したいと思う人がもっと踏み出しやすくなるように、率先して色んなことに挑戦し続ける人たちがやっぱり必要だと思っています。
それが上手くいくかどうかというよりも、何か新しいことを始めている人がたくさんいるという状況をつくることが大切だと思うんですね。
そうすれば「あ、私にもできるかも」と思う人が自然と出てくるので、僕らはそのために今頑張って色々なことに挑戦して、どんどん仲間を増やして上川町をもっと面白い場所にしていきたいと思います!
上川町はやりたいことを実現できる場所。そのことを先頭に立って体現されている絹張さんの熱い想いと覚悟を感じました。
絹張さんが語るこれからの上川町の展望に、私自身もワクワクする時間でした。さらに面白い町へと進化し続ける上川町のこれからが楽しみです。
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