内部留保と部門間補填について考えてみた
還元率競争から生じた疑問
高還元SESと称する某社が還元率競争やめました発言が物議を醸していますが・・・売上に対する賃金や福利厚生の割合が主な話題ですが、別の部分を取り上げてみます。
売上(SESエンジニアの稼働単価)に対してどのような対象に支出をしているのかを表している円グラフが掲載されていたのですが、新規事業(SaaS?)に対しての出費があったり、営業利益が含まれていることでした。
利益はどこまで残すべきか?(内部留保の話)
部門間での損益補填の是非(部門間補填の話)
Xのポストでの順序と逆になるのはご容赦ください。
内部留保の考え方
「内部留保」経理や決算などに関わらないと聞き慣れない言葉かもしれませんが、ここではざっくりと「会社に蓄積されている利益の残高」と定義します。「必ずしも現金の形をとるというわけではない」、「マイナスの値を取ることもある」ことも補足します。
売上や利益から内部留保に至るまでの流れは以下のような感じです。
売上高から売上原価や販管費を引いたものが営業利益
営業利益から受取、支払利息などを合算したのが経常利益
経常利益から臨時の補助金、固定資産の処分などを合算したのが税引前純利益
税引前純利益から法人税の課税額を引いたのが純利益
純利益から配当などを引いた残りが内部留保です
例のnote記事の内容に戻すと、売上高に対する営業利益の割合が減ってきたので、エンジニアの給与など(≒売上原価)の割合を抑制します。という主旨でした。
内部留保はどんな形をしているかも大事
その内部留保ですが、バランスシート上では右下の株主資本の部分で利益剰余金などの名目で記載されます。が、むしろ左側(資産部分)がどんなふうになっているかの方が大事です。
資産側では、支払い遅延やそれによるトラブルを避けるために、現金および預金などのすぐに支払いできるもので所有しているほうが望ましいと言われます。
一方、より多くの売上や利益を求めて、設備投資や商品の仕入れを増やす(製造、商社など)とか、自社サービスはじめるんだ!とアプリ開発してソフトウェア資産を積み上げる(情報通信)などのケースもあります。
それともなければ、投資その他資産部分を増やし資産運用で生きていく!という考え方もあります。
営業利益の適正値は?時と場合による
売上高に対する営業利益の割合ですが、SES事業の場合売上高の5〜10%程度を目安とする記事がありました。基本的にはこのくらいの水準が無難なんだろうと思います。※基本的には薄利多売型のビジネスモデルです。
一方、ギリギリまで営業利益を圧縮して法人税を抑える。足りない分は増資や役員借入金などで補うという方法もあります。
なので、適正値はないけどSES事業で恒常的に赤字になるのだけは避けたいです。
部門間での補填について
Xのポストのとおり、私はこのケースでは新規事業の方が課題であり、現状ではSESの売上から資金を補填しているように見えます。
例の記事では直接言及されておらず、売上高に対しての割合ではそれほど高くありませんが、粗利(売上から還元率を引いたもの)に占める割合はそれなりに大きいです。
還元率を前に出していたから余計に不満が大きくなりがち?
赤字部門に対して、黒字事業から補填していたりすると、後者部門の従業員からすると「俺たちの給料抑えて何やってるんだ!」という意見も出てくるかもしれません。
ましてや、還元率≒個々人の売上に対する従業員への分配割合を全面に押し立てていたから不満が出やすかったのでしょう。
ただSES事業の場合、契約単価は個々のエンジニアの能力とはほとんど関係ない案件の状況商流や参画時期などによる影響もあるのでややこしいですが。
多少の補填は許容すべきという意見
程度問題ではありますが、部署間などでの損益の補填は(1)給与や賞与の抑制が許容できる範囲であり、(2)勝算がある のであればやむを得ないと思います。
(1)については、昨今のインフレを鑑みると痛い。がその分一人当たりの単価が上がれば吸収できるよねという印象。
(2)については、だいたい3〜5年くらいで投資が回収できるフェーズに入る見込みがあるなら「勝算あり」という感じです。なお、SaaSは損益分岐点高いけど、そこを超えると利益が伸びやすいです。
まとめ
結局言いたいのは
SES事業はローリスク・ローリターンですがだらだらと赤字を出すようなことは絶対に避けるべき。
社員を雇うなら「会社の一員」という意識を持っていることが大事。
(注)何から何までイエスマンになれというわけではないです。
運次第というのもあるし、エンジニア側から見た社員雇用のメリットは失注リスクを減らすことがデカい。