【物理的枕営業】
※表紙を毎回画像で作るのが面倒になってきました……!
【800字ショートショート】
・ほぼ800字
・シーンを切り取ったもの、一応終わっているもの、特に気にせず書いています。
・定期的に書けるといいなぁ。
・前から一度、形にしてみたかったものです。
↓以降内容。
人気アイドル・理紗は今、シャワーを浴びている。彼女が出てくるのを、男はダブルベッドの端で待っていた。
男は広告代理店の代表。新CMのイメージガールを探していた。そんなとき、理紗が営業――枕営業を、かけてきたのだ。
理紗は小柄だったが、スタイルが良い。世の男の何人が、彼女の服の下を想像しているか。男もそんな世の男達の一人だった。
そんな理紗が自分の物になる。その興奮と同時に、脳裏にある噂がよぎった。
「理紗の枕営業には、応じてはいけない」
なぜ応じてはいけないのか。そんな疑問も、ずっと聞こえていた水音が消えたことで吹き飛ぶ。人が動く気配がして、心臓が高鳴った。
「――お待たせしました」
声と同時に振り返る。そこには、バスローブ姿の理紗が立っていた。
だが不思議なことに、シャワー上がりだというのに、なぜかその手には――枕がある。
「それでは始めましょうか――枕営業を」
瞬間――男の顔に、枕がぶつかった。
「なっ――ぶっ」
男の顔から枕が落ちる。枕が飛んでくる。今度は枕を払いのける。枕が飛んでくる。また顔にぶつかる。枕が飛んでくる。枕が飛んでくる。枕が飛んでくる。枕が――
「ま、待って……」
その言葉が搾り出された瞬間、枕の砲弾は発射が止まった。
男の上で山積みになった枕。隙間から、男はかろうじて顔を出した。
「――これが私の、枕営業なのですよ」
女神の微笑み。優しげで、穏やかな表情。
だが、その微笑は――枕によって隠された。
その後、理紗はCMが四本決まった。男はその仕事を彼女に与えざるを得なかったのだ。
理紗のCMが決まるまで、男は毎日枕に襲われる夢を見ることになったから。
(終)