【金色のつばさ】
※何かオススメの表紙のつけ方ありませんか←
【800字ショートショート】
・ほぼ800字。今回もちょっとズル。文字カウントでは786文字、でも400字詰め換算で3いっているからな……そこだけ妥協。
・シーンを切り取ったもの、一応終わっているもの、特に気にせず書いています。
・定期的に書けるといいなぁ。
・「きんいろ」ではなく「こんじき」と読みます。なんとなく。
・これに関しては、いつか長編の下地にしたいなぁとか思っています。
↓以下内容
「この動物達、動き出しそうな感じですね」
そう口にして、七海はハッとした。
七海の目の前には、猫、鳥、イルカ、ペンギンと色々な動物が――金属によって形作られた、ピアス、ネックレス、ブレスレットなどのアクセサリーがあった。
自分は何を言っているんだ。そう思うのに、七海は口に出した言葉を撤回できなかった。
そんな七海に、店員は笑顔で答える。
「ええ、動きますよ」
あまりにあっさり言うので、七海は「え?」と返すことしかできなかった。
「動くと『感じる』人が持てば、動きますよ。だからきっと、お客様の手に渡れば、彼らは動き出しますよ」
何を言っているんだろう、この人は。七海の中の冷静な自分は確かにそう言う。だがもう一人の自分は、それを受け入れていた。
普通ならありえない。そんなことはわかっている。それでも七海は、店員の言葉を笑い飛ばすことができなかった。
結局七海は、リングを買って家に戻った。
木をイメージした幅の広い輪に、穴を空けた鳥が留まっている。そんなリングだった。
右の細い中指にそのリングを通す。最初は金属の冷たさを感じたが、すぐに消える。
七海が眺めていると、鳥の顔がくるり、と彼女を見つめ返した。
すると顔が動き、羽が動き、そして――金属の樹木から飛び立った。
金属でできた鳥は部屋を飛び回る。数分そうした後、鳥は七海の肩に降り立った。
鳥は、七海を見上げていた。声はなく、当然喋るわけでもないが、七海にはわかった。
――これからよろしくね、ご主人。
黒い瞳が、そう訴えかけていたことを。
七海がそれを自覚した瞬間、再び鳥は飛び立ち、七海の指の樹木に降りた。すると何事もなかったように、元の動かない鳥に戻る。
そんな金属の鳥を、七海は静かに撫でた。
「……こちらこそ、よろしく」
それが、七海の不思議な日々の始まりだった。だが今の彼女には、不思議な出来事に酔いしれるだけで精一杯だった。
(終)