#1ウミノタイシよペンギンをいだけ
あらすじ
出会いは千葉県銚子市の犬吠埼。主人公の海野大志は千葉県内陸部在住で将来IT業界で働きたいと思っていた高校生だが、最近パソコンやスマホを見続けると頭痛がするようになったことに悩み、自暴自棄な生活を送っていた。ある日犬吠埼にひとり海を見に来ていた。すると、海に一筋の波が立ち、水のかたまりが目の前に落ちてきた。かたまりの正体はアデリーペンギンだった。そのペンギンはなぜか流暢な日本語を話し、大志に向かって言った。「日本ではカワイイとバズると聞いた。私はバズれる。バズってコウテイペンギンが絶滅するのを防ぐ力を得たいのだ」大志とペンギンが様々な困難に立ち向かうギャグマンガ。
第一話「犬吠埼にて」
犬吠埼の砂浜で体育座りをするブレザー姿の高校生。
大志「あぁ…海は広いな……」
心理ネーム「僕は海野大志。高校一年生。将来、父親のようなプログラマーになりたくてプログラミングの勉強をしてきたが、数か月前からパソコンやスマホを眺めていると頭痛がして寝込むようになってしまった。」
回想_大志がパソコンやスマホを操作し、頭痛がしてくる回想シーン。パソコンを叩いこうとしてやめたり、スマホを布団に投げつける。プログラミング教本などをやぶる。
心理ネーム「何でこんなことになっちゃったんだろう。今日もどうせ頭痛がすると思ってスマホ持ってこないで駅の時刻表見て銚子電鉄乗ったし…」
心理ネーム「将来はお父さんの会社で僕が働くと思ってお父さんもすごく期待してくれてるのに…パソコンもスマホも使えないやつなんかいらないよな…お父さんに、言えないよ…」
背景_父親らしきシルエットと≪IT企業経営≫の文字
心理ネーム「今日は電車で2時間かけて、チーバ君の頬のあたりから海を見に来た」
心理ネーム「苗字は海野だけど、2~3回しか海に来たことがない」
心理ネーム「人は悩んだら海に行くって、何かの映画で見た」
大志が海を見ていると何かに気づく。
大志のいる方に向かって一筋の大きな波がたつ。
大志「!?なに、サメ!?」
波は勢いよく真上に細く高く伸び、その先端から何かのかたまりが高速回転して大志の前に落ちてきた。
大志「なになになになになになに!!!!!!」
大志の前にはかっこよく着地ポーズを決めた一羽のペンギンが立っていた。
ペンギン「お、人間。良いネクタイしてるじゃないか。会社員か?」
大志「…こ…高校生…です……」
ペンギン「何を言う葉緑体もないくせに。」
大志「…光合成じゃなくて…高校生です…」
ペンギン「よくわからんがまぁ良い。ちょっと助けてくれ。これから大事な会議をしたいから君のネクタイを貸してくれ」
大志「ペンギン…?じゃないの?ロボット…?」
ペンギン「失礼な。ナマのペンギンだ。」
大志「なんかあれかな…AIとスピーカーが組み込まれてるのかな…」
ペンギン「私は私の意志で話している。もう一度言うがネクタイを貸してくれ」
大志は顔面蒼白になりながらブレザーのネクタイを外しペンギンにつける。
ペンギン「ありがとう助かった。これで私もラッシュでツウキンになるわけだ!」
大志「通勤ラッシュはなるんじゃなくて乗るものです…」
ペンギン「…どうやら君は人間について非常に詳しいようだ。失礼、人間社会ではまず自己紹介をするんだったな。私は名前は無い。南極から来たペンギンだ。君の名前は?」
大志「海野…大志…」
ペンギンは驚いて後ろにのけぞり倒れる。
ペンギン「ううううううううみの!海の!海の!海を名前に選んだのか。とても素敵じゃないか!海が好きか!」
大志「あ、いや名前は自分で選ぶんじゃないから…」
ペンギン「なんだ、誰が選ぶのか?」
大志「下の名前は親がつけてくれましたけど…」
ペンギン「シタノ名前?まったく意味がわからんが親御さんがつけてくれたのか!素敵な選択だな。ぜひご挨拶したい!よし、初めての会議は君の親御さんと行おう!海に非常に詳しいと見た!家はどこか?」
大志「いやいやいやいやいや!僕いま普通に話してますけど!まったく今の状況に納得していないので!」
ペンギン、大志に詰め寄り顔スレスレまで近寄る。大志はしりもちをつき後ろに手をつく。
ペンギン「ウミノタイシ…巣でご飯を待つヒナのため、魚を得るため意を決して海に飛び込まねばならない。しかしそこにはシャチが待ち受けている可能性があり死の可能性がある。しかし飛び込まねば親もヒナも飢える。その海を目の前に『状況に納得していない!』などと言うペンギンがいると思うか?」
ファーストペンギンの回想シーンのような背景とともにペンギンが大志に迫る。
大志「……い、いないです…」
ペンギン「そうだろう。どんな不条理も目の前で起きていることは一回飲み込むのだ。まずは状況に対応するのだ。」
ペンギンが座り込む大志をあとに、駅に向かって歩き出す。
回想_大志がパソコンやスマホが使えなくなったことに悲しんだり悩むシーン「なんで…」「どうして僕が…」「パソコンもスマホも大好きなのに…」と悩む。ベッドで寝込んだり頭を抱えるシーン。。
ペンギン「よし、まずはウミノタイシの親御さんに会いに行こう。お土産は銚子電鉄の濡れせんべいが良いか?私が食べたい!」
大志「ちょちょちょ、待ってください、ネクタイ返して!」大志、ペタペタと砂浜を歩くペンギンのあとを慌てて追う。
ペンギン「ハハハ!砂浜と言うのは歩きづらいな!足が沈む!」
小さくなっていく大志とペンギンの後ろ姿。
シーン変更_貸し切り状態の銚子電鉄内の車両内。大志とペンギンが隣同士で座っている。
ペンギン「地面が氷じゃなくて滑れないからこういうものを作ったのか?」
ペンギンが珍しそうに車内を見回す。
大志「いえ…氷じゃないからとかの理由じゃないと思いますけど、まぁ移動を便利にするためですかね…」
ペンギン「ふむ…やはり人間はこういうものを作るのが得意だな。自分が早く走るのはなくこういうものを作ったのか。おもしろいな。」
ペンギン「人間は大きな船で南極に来ているしな。」
大志、ペンギンのセリフを聞いて笑顔になる。
大志「そう、モノを作って便利にするのっておもしろいんです!この電車なら荷物とかも大量に運べるんですよ!例えば海で獲れた魚を内陸にたくさん早く運べるし!」
ペンギン、ふっと笑う。
ペンギン「ウミノタイシ、しゃべるペンギンになじんで来たじゃないか。」大志「しゃべるペンギンが変だっていう自覚はあったんですね…」
ペンギン「君が助けくれれば良い会議が出来そうだ。」
大志「さっきも言ってましたけど、何の会議ですか?」
ペンギン「相手も内容も未定だ。ウミノタイシの親御さんと話をしてから決める」
大志「未定なんだ…。なんで日本語話せるのかとか、どうやって南極から来たのかとか、そもそも本当にペンギンなのかとかも気になりますけど…」
ペンギン「私に興味が出てきて疑問がつきないようだな。説明すると長くなるが―――」
ペンギン「日本へは、バズりにきたのだ」
ペンギンのキメ顔のアップ。
万バズするSNSの背景と衝撃を受けた大志のアップ。
大志「いやけっこうバズるの大変ですけど…たぶんしゃべるペンギンさんの動画UPしてもよくある動物アテレコっぽくなりそうだし…」
ペンギン「日本人のカワイイ好きをなめるなよウミノタイシ。私はカワイイペンギンだ。私はバズれる。」
大志「ペンギンさんなんか偽物っぽいんですよね…あと何か僕の想像するペンギンじゃないんだよな…カワイさの種類がなんか…」
大志、コウテイペンギンのヒナの可愛さを回想する。
ペンギン「コウテイペンギンの赤ちゃんがとてつもなく可愛いのは理解している。」
大志「あ、本当に種類が違うんだ。」
大志「何でバズりたいんですか?有名になりたいんですか?」
ペンギン「いや、バズってコウテイペンギンの絶滅を防ぐ力を得たいのだ。」
なんてことは無い顔で言うペンギン。体と表情が硬直する大志。
背景でSNSやyoutubeでバズり成功を収めた人たちの回想をする大志。
大志「た、確かにバズってすごく有名になってやりたいことができるようになった人もいるとは思うけど…」
ペンギン「まず知り合えたのがウミノタイシのような若い人間で良かった。SNSはZ世代のドクダンジョウと聞いた。高校生というのは若い人間が多いのだろう?調べたぞ」
大志「(この短時間で何でどうやって調べたんだ…)」
大志、ㇵッとしてパソコンやスマホで頭痛がする自分を思い出す。
大志「いや、あの、僕SNSはあんまり…」
ペンギン「親御さんは海への関心が強そうだし、期待したい」
パソコン、スマホが使えないことを言い出せず拳をにぎる大志。
ペンギン「細かいことは大志の家についたら話そう。泳ぎ疲れたから少し寝るよ。」
大志「あ……おやすみ…」
大志の膝枕で眠るペンギン。電車はガタンガタンと進んでいく。
#2へ続く
https://note.com/kamiaow_japan/n/nfd91ed7bddae
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