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上町しぜんの国保育園 園内勉強会アーカイブ05


上町しぜんの国保育園の阿部です。
いつもアーカイブを読んでいただき、ありがとうございます。

第5回園内勉強会では、ハンズオン埼玉の西川正さんをゲストにお招きして、
「サービスを超えてコミュニケーションへ~どうしたらみんなで暮らせるの?」というテーマで話しました。

冒頭では、青山(上町職員)より西川さんをゲストにお招きした背景が語られました。
・直接契約の幼稚園と異なる保育園に戸惑った。
 地域のなかでたまたま出会ったところから始まる関係性のなかでどうしよう。
 そんな時に出会った西川さんは何をしていても楽しそう。

そこにはなにか勘所があるのでは?ということを聞いてみよう。
・「サービス」というのは人が集まるところには向かないのではないだろうか。
 世の中に匿名性が高くなっている(たとえば公園のクレームとか)
 このことについてはどう考えるのだろうか。

◎西川正さん
・埼玉にあるNPO法人ハンズオン埼玉で活動しつつ、同時に岡山県の真庭市の図書館の館長をしている。
・図書館のイメージというと真面目、静かにしなければならない場所ではないか。本が好きな人にとっては面白いけれど、本を読まない人にとってはつまらないところに見えている。
・多くの人にここは何ができる場所だという愛着を持ってほしい。愛着は、私がなにかしたということに比例するのではないか。
 例)図書館の建物にリボンをかけた、図書館のガラスに「アート」という名で絵を描いた。
・遊んでいい場所ということがわかると子どもたちが自然と集まってくる。問題もおこるが、張り紙を貼ってルールを守れ、というようなやり方はしていない。まめに声をかけてまわりのことを考えるように促す。それはとても面倒くさい。
・しかし、ルールを決めてしまえばルールを守る人と守らない人ということになり、それはみんな、公共(public)の問題を個人の問題にしてしますということなのだと思う。
・関係者が増えれば増える程、ルールが必要になるという現実もあるが、なるべく、その場にいる人で折り合いをつけていけるようにしたい。それが自治であり自由だと思う。

○青山から
・「何かあったときのためにやめておこう」という姿勢をどうほぐしていくのか。

○西川さん
価値とリスクについて対話することだと思う。
・まず価値を共有する。
「なぜそれをやりたいか」「それをやったらどうなるのか」
 例)学童でキャンプに行こう
キャンプの価値がわかっているベテランと入学したばかりの保護者のすれ違いがしばしば起こっていた。そこで、キャンプの写真を動画にして、見せた。価値を示すには「子どもの表情」を見てもらうのが一番伝わりやすかったから。
・リスクを明確にする。
 何かあったらとよく言われるが、その「何か」とは何か?を可能なかぎり具体的にしていく。不安な保護者には、何が不安であるか丁寧に話を聞く。その上で、リスクに対する自分たちの対策を示し、許容してほしい範囲までを説明する。

○青山から
その説明をしたとしても「万が一」という人には?
「万が一」と言うけれど、確率論で語ってくる。
前例があるとそれが一分の一になってしまう。

○西川さん
・前例を持ち出されるのであれば、その前例を検証する。
それ以上言っても共有してもらえないとしたら、それはたぶん別の理由がある。
その人のそれまでの人生での経験に由来してたりするのだと思う。

○青山から
・子どもたちには明示されるルールはあるけれど、その理由は伝えられない。

○西川さん
・直接言ってくる人は仲良くなれる可能性があるけれど、いきなり役所などに電話されちゃうと合意は難しい。
・対話というのは違う思いを持っているから成立する。しかしその対話を成立させるためには、それを支える基盤が必要なのではないか。それが一緒に食べ、遊び、働くということ。立場の前に人なのだと思えることが対話の前提には必要だと思う。

・焚火をしてヤキイモを焼いて食べませんかと呼びかけたのはそれゆえ。
1999年に子どもが近所の公立保育園に入園した。90年代は、保護者も保育者も自由にやっていたのに、2000年代になるとさまざまなことが禁止になっていった。夏祭りでの花火や焼きそばなどができなくなった。するとこれまで参加していた保護者がお客さんへと一気に変わっていった。「不要不急」がなくなり、サービスとしては確立していく一方で人と出会わなくなった。すると保護者同士が個人になりバラバラになっていく。そうして孤立した保護者は何かあった時には役所に電話をするようになる。

・そこで「焚火を囲む」ということを企画した。
 立場の前に人として出会うことがだいじだと思う。「それ違うんじゃない?」「私は保育ってわからないんだけど」ということを直接話せるようになったり、言い方が変わっていったりする。

・どうやったらその人の人柄がにじみ出てしまうのかということを考えている。
・焼きそばが禁止になって、かわりに思いついたのが、夕涼み会での「人力遊園地」。フェンス際で「難民」となっているパパを「救出」した。仕事を頼んだ。声をかけてみたら、いい表情で保護者が返してくれた。こういう機会を求めている人がいるのだなと実感した。その後、運動会の大きなカブの即興劇をやったりして、その後保護者として長く保育園で遊んだ。

○青山から
「人力遊園地」「焚火」などをデザインをするときに何をきっかけにしているのか。何をポイントにしている?

○西川さん
・気が抜けるということを意識している。
 ふっと笑っちゃう、爆笑ではなくてクスっと笑えるくらい。
 緊張がゆるむ。安心する。そこで初めて表現出てくる。
・「応え」があれば人は安心する。
・ゆるみをもって、一番簡単なことは「一緒に食べる」ということ

○青山から
西川さんがしていることは、その場所の設定の仕方に無理がない。
みんなが盛り上がっているから盛り上がらないと…という場の作り方ではない。
その場の設計の仕方はどうやってデザインしている?

○西川さん
・正しさよりも面白さ
正しさオーラが出ないことを意識する。
「私がやりたくてやっているのだ」ということから離れないように。
・PTAなど「みんなでやることになっているもの」というのが厄介
・自分の時は全員参加の保護者会だった。
全員参加も出会いのきっかけとしてはとても意味があると思ってきた。
それぞれ家庭の事情が違う中で「なにができそう?」と相談できる関係であれば、
=配慮ができる組織であれば、そのことをきっかけにして話をし、相手を知る機会になる。
しかしその相談が出来ない組織だと、それは「我慢の連鎖」になる。
すると保護者間の関係を深めるという組織の本来の目的と反対になってしまう。

○青山から
・西川さんのセンス
・言語化をすることの必要性はある。
言語化する側の悔いはあるが、言語化されていることでとっかかりなどになる。

○西川さん
・図書館でやることを考える時にも一人で考えるのではなくてみんなで「ああかな?」「こうかな?」といことを考えるようにしている。
・そのやりとりが遊びであり、その先に失敗があったとしても次につながっていることだってある。
・いろんなアイデアを持って行って一緒に遊ぼうねという気持ち。

○青山から
・遊べる気持ちの余裕つくりってどうしている?

○西川さん
・一緒に面白がってくれる仲間がいるかどうかが大きい。
 友だちがいれば道具がなくても遊べるというのは、子どもが遊ぶのと同じ。
 関係性が熟していけば出来ていくことである。

◎著書紹介
『あそびの生まれる時』西川正(2023) 出版社ころから

◎会場から
〇感想1
・西川さんの話を受けて、会場からは様々な感想や質問が出ました。
・西川さんの面白さのセンスにひかれてくる人がいるからより面白くなるのだな。
・保護者と職員の間にある「サービス」がなかなか取っ払えない。
 また、出来上がってしまっている保護者同士の関係に悩んでいる。
・楽しいに惹かれてではなくたまたま居てしまった人にはどうする?
・佐渡には地域のコミュニティがあるが、保育園となるとサービスになる。


〇青山から
・ちゃんとしなくちゃいけないという雰囲気?
 園や学校側が「ちゃんとした親でなければならない」という雰囲気を作っている?
・真庭図書館のなかにも遊ぶ場所がある一方で静かにいたい場所もある。

〇西川さんから
・保育園って保護者が自分のことを、話していい場所のはず。
・毎月の懇談会で「私はこう考えている」ということを一人ひとりが話すという園もある。

〇感想2
・勤めている私立幼稚園は、これまでがちがちに子どもを動かしていた保育をしていた園を変えている。
 子どもは教えて育つという考えの保育者との話し合い。
 やらなきゃいけないこと、こうあるべき、それらを一回捨てる。
 「学校」というプライドがある。


〇西川さん
・人が何かをしてみようと思う時には必ず安心がある。安心のなかから「やってみる」が生まれる。
・自分の子どもが学童に通っているときに、子どもがやらかしたことを、そのままに面白がってくれる保育者がいた。それをお迎えのときに伝えてくれたのがうれしかった。自分の子どもの今を肯定してくれている気がした。何ができたとか、ではなく、今日のあなたの子どもはおもしろかったと。そういう保育者の視点が親に伝わると、子どもへの目線がやさしくなったり、子どもと暮らすおもしろさが味わえるようになっていくのだと思う。
・大人になるための「今」ではなくて、子どもは今を生きているということをだいじにしたい。

〇質問1
・勤務先の公立保育園での運動会では、保護者が参加する時間が短くなった。
 すると保護者からはクレームが出てくるようになった。
・行政からくる通達は冷たくやってくる。
 保育現場も苦しい方向に向かう中、現場で出来る一歩とは何か。
・「みんな参加の苦しさ」
 うちの子がやっていないという保護者がいたら?という声がある。


〇西川さん
・図書館は預かりがないので縛りがない反面、「不要不急」の存在と思われている。それゆえ司書が自分の仕事の価値は何かと考えるのは、なかなかに難しい。
・学校司書の会議に出た時に、学校図書室ってどんな場所?というワークショップをした。すると出てきたワードから、教育ではない文脈、ケアの場所としての図書室の価値を再認識することができた。
・上尾の学童NPO法人で保育の指針を職員と作った。学童の価値をどう考えようか。育てたい方向を考えて、保護者と共有することを目指す。
 例)学童における宿題
・doingとbeing
大人が目指したいのはbeing(well-being)。大人の期待することができたかどうか(doing)ばかりに気をとられてきたのはないか。

最後に青山よりまとめとして、
「サービス」という言葉にくっついているのが「質」
 質というのは他者から基準を当てはめられてしまうが、西川さんが語ったのは「価値」
なぜ行政からの文書が苦しいのは、それは自分たちのwell-beingに合わないから。
そして関係性のなかで話していけることが大切なのではないか。
という話で第5回園内勉強会はおひらきとなりました。

◎最後に
 私が今回印象的だった西川さんの言葉は「私がやりたくてやっているのだということを忘れないようにする」ということです。誰かのためでもなく自分がいかに目の前のことを面白がっているだろうかということの魅力を改めて考えると共に、子どもと過ごすというのはその幸せは面白いが一番溢れているのではないかと思いました。

◎次回予告
次回の第6回園内勉強会は繁延あずささんをゲストにお迎えして開催します!ぜひお楽しみに!

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